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理印の作り方  作者: 機月
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 何度か瞬きながらも、瞳は変わらず動かなかった。

 若葉を思わせる翠玉は潤んでいても、恵みの風も雨も拒むような冷たい硬さを宿していた。

 瞼がゆっくり閉じて開くだけの、それ以外の固着。

 最初に背いたのは、小さな白く尖った鼻に寄った、しわだった。続いて結ばれていた唇が、わずかに綻ぶ。


「くあっ……」


 大きく開かれた口が、喉の奥から天を仰いだ。

 遠慮会釈の欠片も無い大胆な欠伸は、薄く細い身体が思うままに息を吸い、そして小刻みに震わせながら存分に絞り出す。

 俯いた鼻先や口元に、青みの鮮やかな髪がこぼれる。だが首を軽く振るだけでさらりと流れ、眉と耳を隠して薄い肩口に収まる。


「かふ」


 目を拭っていた小さな手が、不意に止まった。

 細い小枝を踏み折ったような、氷柱を打ち合わせたような、小さく軽く、耳に透き通る乾いた音。

 瞳がその先を追い、釣られて口まで丸く開いた。

 息を吸い込んだところで固まると、急にそのまま口を噤んでしまう。

 辺りを見回す顔は心なしか上気して、その眉根はわずかながら下がっていた。


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