桜と屋上。
ひらひらと舞う桜。
初々しい新入生。
まだ少し肌寒いが、俺たちに高校生活二回目の春が訪れた。
「なあ、奈月。あの子可愛くね?」
県立南高校、通称南高の屋上から新入生と思われる女子生徒を指差してそう言ったのは五十嵐蒼。
一言で説明するならアホの子。
「いやいや、蒼ちゃん。そっちの子よりあっちの子でしょ?ね、なっちゃん」
俺の肩に肘をかけて蒼にそう言ったのは宇佐美優聖。
残念なイケメンだ。
「つかなんで二人とも俺にふるんだよ」
そりゃあ新入生の女の子に興味がない訳ではない。
だからといってこいつらみたいにがっつくのはどうかと思う。
「だってなっちゃん、彼女いない歴イコール年齢「うるせえ!」
優聖が余計なことをいうのを途中で遮る。
彼女いない歴=年齢
信じたくないが事実だ。
「奈月がモテないのとか興味ないけど、とりあえず煩い。今日ここ立ち入り禁止なんだからばれたらどうするのよ」
三人の会話をさらに遮ったのは藤凛子。
女子にしては可愛げがない。本当にない。俺たちよりも強いんじゃないかと思う。
「藤の言う通りだ。そもそもなんで新入生がいるくらいでこんなに盛り上がるんだ……」
呆れた声でそう言ったのは若園翔。自分は女子には興味がないかのように振舞っているが、実はむっつりなんじゃないかと俺は思っている。