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滲む境界  作者: キシ
第二章

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8/15

3

 空を走って隣町に着いた。車で来るよりずっと早い。

 走ったのはかさねで、オレはかさねに運ばれてきた。弱いのは過言じゃないぜ。


 前にこの町に来たことがあるのか覚えてないけど、前と比べなくても変だ。霊気が異常に多くて町中に広がっている。


 しかも霊気には意思が入ってない。

 これが強い幽霊が落としていったのなら、オレは〇〇だ、って主張している意思が入っている。霊術師ならお前を殺してやる、とかかな。

 それが広がっているヤツにはない。だから食べやすそうで、おいしそう。



「おおー。なんか活気があるや。昼間から元気だなー」

 ごちそうにつられて、人間が普通に生活しているのに幽霊やアヤカシが町をうろついている。

「この町の様子……。異常な霊気は組織の罠ではないのかもしれませんね」


 霊術師の組織の目的は人間を守ること、っぽくて、人間が危ない目に遭うようなことはしない。だから町の様子はぽくない。

 バケモノと人間。どっちも自分のことに夢中になって、気づいてないから今は平和だ。  

 もし隣にいる自分とは違う存在に気がついたら、町がどうなるのかオレには想像できない。


 この変な霊気は、組織と違うヤバいヤツらのワナか、偶然に出てきたものか。

 どっちにしたって、何が起きているのかさっぱりだ。


 町中が霊気でいっぱいなので、オレのセンサーはあちこちを指して使い物にならない。けど、かさねにそんなことが起きるはずもなく、怪しい場所を見つけ出した。


「ここが一番霊気の濃度が高いです。もしかしたら異常が起きたのもこの場所かも……なんて」

「さすが、かさね。お見事っ」


 初めて来たとこだけど、ここはゼッタイ学校だ。

 門の所に名前が書いてある。漢字はニガテだから全部は読めないけど、ここが高校だ、ってことはわかる。


 あんまりよく考えずにそのまま門に触れたらチクッとした。

「アズマ君っ。怪我は?」

「ヘーキ。これって結界だよね」

 霊気で手がチクッとした。

「え、ええ。なので高校に集まる幽霊やアヤカシがいないのだと思います」

「なーるほど」

 一番霊気が多いとこって話なのに、静かなわけだ。


 高校をぐるりと囲む結界。そのおかげで町中にある霊気と見分けがつきにくくできている。

「でも天下のかさね様には問題なーし、だよね」

 そんなことに惑わされない。かさねにとってこの結界はシャボン玉みたいなもので、壊すこともお手の物。

 もちろんオレには壊せない。

「天下でもありませんし、問題がないわけでは……。結界内の様子はわからないですもの」

「壊せない。だから……?」

「大人しく侵入することにしましょう」

 

 見えない結界の上を歩くと建物より高い所に着いた。

「中に入ると落下することになるかもしれません。外から見えている通りでしたら、ですけど」

 結界が霊気を見えにくくしているみたいに、外から見えるのと中の様子が違うかもしれない。

 上からのぞいていると誰もいない静かな学校だ。これもおかしいけどもっとおかしな、それこそ悲鳴でいっぱいかもしれない。


「あ、着地はオレ一人でダイジョーブだからね」 

 なんでも任せているといろんなことができなくなりそう。

「わかりました。では」


 傘でつつく。シャボン玉に黒い点ができて、広がっていく。オレらの足元まで黒くなると、次はどんどん狭くなった。

「せーのっ」

 閉じ切る前に点から侵入する。


 結界の中は霊気が多い。中身がひっくり返りかけた。

 アヤカシにとって霊気は食べ物の一つだけど、人間と同じで食べ過ぎると毒になる。


「うはははっ」

 ヒリヒリしても、楽しくなって笑っちゃう。

 霊気は町中に広がっているのと同じ感じがする。そして空気中をフワフワ浮いていられなくて、固まって水みたいになっている。高校はビショビショだ。

 あ、式神がいる。人を運んでいるのかな。霊術師がいるんだ。


 一人で着地ができる。

 そのまま落下して、地面にぶつかって壊れる。それから体を治せばいい。アヤカシだから何とかなる。

「えっ、ちょ。かさねぇ?」

 地面はプールのつもりだったけど、先に着地したかさねに壊された。

「あわっ。ご、ごめんなさい」

 代わりの地面がガレキと水。ついでに黒くてベトベトしたモドキを踏みつけることになった。


 モドキは本能のまま食べ物を追いかけていた。制服を着た男と女。ここの生徒かな。オレらがモドキを踏みつけたからなのか、そこにいてこっちを見ている。

 あの二人は人間と幽霊のどっちだろう。今みたいに霊気が多いと、幽霊は肉体モドキを作るから見分けがつかない。


「見てみて、これモドキだよね。何をもとにしているだろ」

「……」

 まだ形が残っているモドキをつまんでみた。チクチクするのはイヤだけど、スクイーズみたいで結構オモシロい。


 つまんだモドキを水に向かって投げる。

 そうしているうちにモドキはバラバラになったまま逃げようとしだした。霊気がたくさんあるから、どんどん回復してるみたい。


「トドメを刺さなくていいの?」

「……」

「ねえ、これからどうする?」

 さっきから何にも答えない。制服二人が何かをしたわけじゃない。前にも見たことがある。どうしたらいいのかわからなくて、動けないんだ。

「おーい」

 ピョンピョン跳ねて顔の前で手を振って、ようやく動いた。オレの服のえりをつかんで逃げ出す。

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