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滲む境界  作者: キシ
第二章

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6/15

1

 バーンって音がした。

 ボールが顔面に当たったのだ。

 転がって見える空の色は校庭の灰色とおんなじだ。

 ヒリヒリする顔に手を乗せると赤くなった。血が付いた。舐めてみても何の味もしない。腹はふくれない。甘かったりしたらオモシロかったのに。


 オレは取成東とりなし あずまで小学生で人間。の姿をしたアヤカシだ。バケモノとも言える。

 人間の東は死にかけていた。医者を呼んでも間に合わない。医者がいても間に合わない。だからもらった。

 霊術師がいたらどうだっただろう。

 ま、オレには呼べないヤツだから考えても意味ないか。


 今は取成さん家の子どもになって一年ちょっと目のはず。学校生活にも慣れたものだい。

 保健室に来たら書かなきゃいけない紙にスラスラ丸をつけられるようになった。

 漢字を書くのはまだニガテだからズルをしようとしたら、一緒に来たナオトがいない。ハクジョーなヤツだ。


 目の前がグニャグニャしてボーとしてるうちにボールにぶつかった、って言ったらベッドを貸してくれた。横になって目をつむる。


 まぶたを閉じたって、目玉は生きて動いている。これはまぶたのウラをにらめつける時間なのだ。


 まぶたのウラが灰色から黒っぽくなった。目玉を出してみるとベッドのすぐそこにかさねが立っていた。ムラサキ色の着物でいつもの真っ黒傘を持っている。


 オレは布団の中に潜って他の人間に聞こえないようにしてから、かさねに話しかける。

「急にどうしたのさ。いつもはゼッタイ人間がいる所に行かないって言ってるのに」


 かさねもアヤカシ。オレとは協力関係にある。

 オレと違って強いのに(強いから?)人間を、アヤカシを怖がって、だいたいいつもオロオロしている。布団で見えないけど、今も目玉をウロウロさせているに違いない。


 かさねは確か東より五歳ぐらい年上の人間の姿をしている。人間にアヤカシやバケモノって思われなくても、小学校ではゼッタイ不審者だ。 


 いつも何かしらに怯えて人間から隠れているかさねが学校に来るなんて珍しい。何の用で来たのか自分で言わないから聞こうとして、オレのアヤカシとしてのヘニョヘニョなセンサーにビビっときた。


 おいしそう。


「かさねの用はコレだね」

 布団から顔を出して見ると、やっぱり目玉をウロウロさせていて、うなずいた。

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