序章 「俺たちはまだ、始まってすらいない」
はじめまして、黒瀬カケルです。
「青春群像劇の皮を被った何か(?)」を書いています。たぶん、変な話です。でも、どこかに響けば嬉しいです。
ちなみにカクヨムでも同時連載中です。
――さて、どう説明したもんか。
この物語はちょっとだけ、青春してる。
で、ちょっとだけ、終わってる。
いや、そんな深刻な顔しなくていいって。青春ってそういうもんでしょ?
……はいはいそこ、戻るボタン押さない。
ここまで来たってことは、少なくとも「ちょっとだけ何かを期待してる」って顔してるよ?
ほら、姿勢正して。背筋伸ばして。深呼吸して。
大丈夫、そんな大層な話じゃない。
えー、じゃあ軽く自己紹介でも。
俺の名前はスズメ。……ま、本名じゃないけど。
「軽そう」「飛びそう」って理由で誰かが言い出して、気づいたら定着してた。
でも、そういう“軽さ”って、意外と大事だったりするんだよ?
空気読んで、話回して、ツッコミもできて。
なんならちょっとだけ、物語の外にも語りかけちゃったりして。
この学苑には、ヒーローみたいな奴がいる。
命を懸けて誰かを守るような奴もいる。
逆に、それを茶化して生きてる奴もいるし、
うっかり“間違ったところ”から来ちゃった子もいる。
俺は、そういう奴らのすぐ近くで、
「おいおいマジかよ」って顔して笑ってるモブみたいなもん。でも、笑いながらちゃんと見てる。
見逃しちゃいけない瞬間ってのが、時々あるから。
この話はね、観月学苑っていう、
どこにでもありそうで、どこにもない学園を舞台にした――
たぶん、“青春群像劇っぽい何か”だったんじゃないかな。
毎朝、チャイムが鳴って。
誰かが遅刻して。
誰かが屋上で叫んで。
誰かが壊れて。
誰かがまた、“元に戻って”。
……いや、なんでもない。今のは聞かなかったことにして。
まぁ、とにかく。
俺が君にこの話をする理由は――うん、なんでだったっけな。
誰かに話しておかないと、って気がしたんだ。
俺一人で抱えるには、ちょっとだけ荷が重くてさ。
安心して。
まだ物語は始まってすらない。
でも、君がページをめくったら、全部が動き出す。
誰かの笑顔も、誰かの叫びも、誰かの選択も。
じゃ、そろそろ始めようか。
チャイムが鳴るまでに……って言いたいけど、間に合わない気がしてきた。
ま、君も遅刻の共犯ってことで。
さよなら、日常。
こんにちは、青春。