いきなりの情報過多
あの、佐久間くん宅…
あまりにびっくりしていると、紗奈さんがオレを覗き込んで、
「ねぇ、大丈夫?てか、うち着いたよ」
と、佐久間くん宅の向かいの家を指差した。
えっ⁉︎
「こ、ここ…⁉︎」
「そう」
…
なぜ…なぜにこんなに家が近いんだよ…。
オレが驚いていると紗奈さんが驚いた?って言いながら、家に誘導してくれたんだけど…
もっと驚くことが起きた。
庭からいきなり、カマを持った女性らしき人がこちらに近づいてきたのだ。
オレはとっさに紗奈さんを後ろにかばった。
「危ない‼︎紗奈さんは、オレが守るからね」
と言って。
そしたら、カマを持った女性がサンバイザーを外して、にっこりしながら
「あら、おかえりー」
と、カマをそっと置いた。
…おかえり?
「お母さんから守ってくれてありがとう」
紗奈さんもにっこりした。
えっ⁉︎
お、おかあさん…
「あ、なんか…すみません。」
「いいわよ〜。ごゆっくり〜」
おかあさんは、とても優しそうな雰囲気の方だった。
まずは、ホッとした。
紗奈さんは、二階へと案内してくれて
「お茶とってくるから待っててー」
と、階段をおりた。
ドアが開けっぱなしだったから、紗奈さんとおかあさんの会話が聞こえてきた。
「紗奈ちゃんが、さくちゃん以外の男の子連れてくるなんて珍しいじゃない」
って。
さくちゃんって…まさか佐久間くんなんじゃ…。
…
そんなことを考えながら、部屋をボーッとみていたら、ふと化粧品が多いことに気がついた。
化粧…するのかな?
今は、あまり化粧しているってイメージじゃないっぽいけど…
でも、紗奈さんって一緒に帰ってるとき思ったけど、肌めっちゃ綺麗だし笑顔が…笑顔がなんかとても印象的だったんだよな。
彼女と別れて数分で、別の人に一目惚れとかって…
…
ない…よね?
オレは、どこからが一目惚れで、いつから人を好きになるのか、いまいちわからなくなった。
わかりやすく、恋色メーターみたいなものがカラダに組み込まれていたら、わかりやすいんだけどな。
赤になったから恋ー‼︎とか、パープルだから、もうすぐ好き確ー‼︎とかね…。
黄色なら…一緒にいて楽しい人とか?
てか、そんなメーターあったら…少し怖いな。
あんたと付き合うと、メーターいっつも白くなるんだよね?とか言われたら…ね。
黒とかもイヤかも…
やっぱりメーター推進却下だな…。
そんなくだらない開発、不採案になったと同時に、部屋にとても美しい女性が入ってきた。
え…
こんな美しい人…この世にいるんだ⁇ってくらい美しかった。
その人に見惚れていると、
「紅茶、砂糖入れる?」
って話しかけられた。
「えっ…こ、紅茶…ですね。入れません」
「はーい」
…
なんか、声と雰囲気は紗奈さんに似てる…
親戚の人かな?
「あ、それでね」
と、その人は普通にオレの隣に座って話し出した。
「えっ?」
「ん?」
…
しばらくお互い沈黙した。
そしてジーッと睨めっこ。
⁉︎
えっ⁉︎
「まさか、紗奈さんじゃないよね⁉︎」
オレの言葉に紗奈さんは、
「あー、そういうことか」
と、笑ったあとどこからともなく黒髪を引っ張りだした。
ヒッ‼︎
な、なに⁉︎
オレがびっくりしていたら、紗奈さんが黒髪を持ち上げて、
「カツラ」
と、自分の頭に被せた。
え…カツラ…って…
「なんで?カツラじゃない方が全然いいのに…。あ、でも…きっとなんかしらの理由があるんだよね。ごめんね、軽々しく言っちゃって…。それに、オレ紗奈さんって気づかなくて、ごめん。」
と謝ると紗奈さんは、いきなり
「恋バナしていい?」
と言い出した。
こ、恋バナ…?
よくわからなかったけど、
「うん」
と、聞き入れ体制に入るオレ。
「あのね、わたし…実はおしゃれがすごい好きで、めっちゃおしゃれしてた時期があって。で、かわいいと佐久間がチヤホヤしてくれるの。でも、すぐ他の女のとこ行っちゃって…だから、おしゃれもっと頑張って…でも、しばらくするとまた佐久間が他の女のとこ行っちゃってって繰り返して、そのうち振り回されるのがバカバカしくなっておしゃれやめたの。てか、わたしと佐久間は、幼馴染なの」
と教えてくれた。
…
やっぱりか。
「あー…、だからたくさん化粧品が」
化粧台に目をやると、紗奈さんはとある動画を見せてくれた。
⁉︎
すごっ‼︎
とある動画をみてオレは、驚いた。
だって…紗奈さんのメイクアップ動画が大バズりしていたから。
続く。