表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/17

2レベル1、大いに語る

3人は、苔の山に偽装した穴の中に座り込んだ少年を、唖然と見つめた。


金色の髪を真っすぐに切り落とした、子供子供した少年は、濃い青色の目で困ったように3人を見ていたが、


「えー、始めまして僕は田中、田中慎太郎って言います。

あの、皆さんはどーして、こんな危険な森にいるんです?

まさか人に擬態したモンスターじゃないですよね?」


少年の声は、メデューサの森に似つかわしくないほど明るかった。


「あ、あたしゃジーンだよ。

赤毛のジーン。

こっちは弟のガイスンで、隣のリアだ。


ちゃんとした王都リサドリアの市民さ。

モンスターじゃないよ」


少年は疑惑の眼差しで。


「本当かな?

ここは子供が遊びに来るには、ちょっと刺激が強すぎる森と思うよ?」


ガイスンはムッとしたように。


「子供じゃねーよ。

俺たちゃ冒険者ギルドに所属するC級冒険者だぜ!

お前こそ、どこの人間なんだよ!」


突っ込めば、リアも、


「ここら辺の名前じゃないわね?

タタラ……?」


金髪の少年は微かに顔を赤くして、


「田中慎太郎です!

慎太郎!

なによタタラって!

タタラ製鉄かい!」


3人は目を丸くして、


「なんだよタタラセイテツって?」


少年は、嘆かわしい! と叫んで頭を大げさに振り回し。


「見たところ毛唐の子供のようだけど、日本古来の伝統的な製鉄技術も知らないなんて、一体義務教育とか受けてるんのか、って話だよ!」


「ギムキョ……、なんだ、それ」


少年の剣幕に目を丸くする3人だが、少年の方も目を見開いて。


「え、なに?

義務教育受けてないの?

集団登校拒否?」


あまりに噛み合わない互いの会話に、しばし無言のまま見つめ合った4人だが。


「あー、外国人なんだなお前は……」


と赤毛のジーンは姉貴肌の気性を発揮して、


「ま、ここは危険な森の中だ。

とにかく穴から出て来いよ。

リサドリアまででいいなら、送ってやるよ」


生暖かく話した。


田中慎太郎はフムと考え、


「分かりました。

あの……。

ジロジロ見ないでね……」


何故か赤面して、ゆっくりと穴からよじ登った。


「おまっ!

素っ裸じゃねーか!」


ジーンは叫び、ガイスンは慌ててリアの目を塞ぐ。


「あはは。

なんか白い球の中に裸で入ってたんだよね。

どうしてだろう?」


明るく笑う田中慎太郎。


「蜘蛛に捕まって糸で巻かれてたのかな?」


ジーンも首を傾げるが、ガイスンはリアの手を彼女の目に運び、自分で目隠しをさせて、田中慎太郎が出てきた穴を覗き見る。


「姉貴……。

こりゃ卵だぜ!」


ジーンの顔色が変わり、背中の大剣を引き抜いた。


「おい、何がモンスターじゃないのか、だ。

オメェがモンスターなんじゃないか」


田中慎太郎は飛び上がって手を上げ、


「ち、違いますよ。

僕はれっきとした日本国民、何故か裸だから学生証とか無いですけど大和高校1年3組、出席番号13番、田中慎太郎です!

えーと、なんなら電話番号は!」


と自宅電話の番号を口早に叫ぶが。


「お前、なに判らないこと言ってるんだよ。

その電話番号って、どこかのギルドの番号か?」


ガイスンも短剣を抜いて構えながら、しかし首を傾げる。


「あの、いいかしら?」


とは己の手で目隠しをしたリア。


「なんだリア。

このモンスターを知ってるのか?」


「ええと。

この子は人間よ。

ガイスンなら匂いでも判るでしょう?」


ガイスンは生まれつき鼻が良く、臭いでモンスターの種類も言い当てた。


「……ま、確かに匂いは人間なんだが……」


「そうゆう擬態するモンスターじゃないのかい?」


ジーンはなおも疑いの目を向ける。


「ほら、シャール士大夫の魔術師が呪文を唱えたでしょ。

メデューサの目を封じる魔神を我に遣わし給え、って」


ジーンとガイスンは、へっ?、と顔を見合わせる。


「こいつのどこが、メデューサの目を封じる魔神なんだよ?」


どう見ても、ただの子供だ。

ガイスンより背丈は少し低いくらいだが、そもそもガイスンはチビなのだ。


見た感じと、男の証明を見るに、完全にお子様そのもののようだった。


リアは傀儡の箱から、典型的な子供服を取り出した。

頭から被る貫頭衣とベルト、モカシンブーツだ。


田中慎太郎には見慣れない服だったが、ガイスンに手伝われ、いそいそと服を被ると。


リアは目を開き、ガイスンが卵と言った物を見た。


「やっぱり魔力球よ。

彼はたぶん……」


リアはよろよろブーツを履く少年を見た。


「どこかにメデューサの目を隠している魔人のはずよ」


どひゃー、とジーンとガイスンは飛び退くように身を引いた。


メデューサは蜘蛛の女王であり、またヘビの女王でもあったが、それ以上に恐ろしいのが、その目なのだ。


見つめられれば全てのものを石化させる魔力を秘めた目。


兄弟は慌ててリアの背中に隠れるが、田中慎太郎は何とかブーツを履き終えるとフームと考え。


「そう言えばなんか、オデコに出来物があって、ずっと気になってるんですが」


とストレートの金髪を左右に分ける。

すると……。


明らかに第三の目のようなものが、額に綺麗に瞳を閉じられていた。

長い睫毛は、少年の金髪ではなく、黒々とした女性の睫毛。


言われれば、それは確かにメデューサの目、のようにも見えた。


ぎゃあぁぁぁ!


悲鳴を上げる兄弟だが、リヤは。


「ねえ、凄いわ!

この子がいれば、あたしたち、凄い仕事が出来るわよ!」


ジーンとガイスンは互いを見る。


確かに……。


どんな凶悪なモンスターに襲われたとしても、また、例えドラゴンが財宝を守っていたとしても。


神の系譜に連なるというメデューサの力が我が物ならば、恐れるに足らない。


子供さえ守っていれば、後は勝手に彼の目が敵を蹴散らしてくれるのだ。


「あのぅ、勝手に盛り上がってますが、僕には僕の生活があるんです。

早く練馬に帰らないとママも心配すると思うし……」


そんな田中慎太郎に、リアは優しく諭すように。


「あなたは魔法使いに召喚されたのよ。

しかもメデューサの目を持って。

冒険者としては凄い資質だけど、あなた、うっかり目を開いたら、大好きなママも一瞬で石像よ」


愕然とする田中に、ジーンも。


「それにあたしゃ日本なんて国は聞いたこと無いんだけどね?」


「まーしかしそれは、君達が無教養だから知らないだけで……」


リアは傀儡箱の中から鏡を取り出した。


「この世の全ては鏡に映るわ」


と、言って、リサドリアと鏡に囁いた。


立派な城郭都市が鏡に映る。


「ずいぶん古そうな町ですね?」


田中は言うが、ガイスンが、


「去年で建国三十年だぜ。

リサドリアは最新の築城術で作られた無敵の城塞なんだ。


「この世に存在すれば日本も映るはずよ。

やってみて」


リアは囁く。


やや血の気の引いた顔で、しかし田中慎太郎は、ぐっ、と顎を引くと、囁いた。


「日本……」


しかし鏡に映るのは、田中には見慣れない、金髪の少年だけだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ