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14野営

馬車は注意深く進んでいくが、また落とし穴などに落ちたら、さすがに馬車が持たない。


更にヴォグリが二度、落とし穴を見つけ、他にも道にロープが張られていたり、石が置かれていたりした。


「僕も日本で人食いオーガの名前は聞いていたけど、こんなに頭が良いとは思わなかったよ!」


もっと力技な連中かと思っていた。


「赤帽子というリーダーのせいさ。

メデューサに指揮されるとトロールも精密な弓兵に変化するように、赤帽子はオーガやゴーストを手足のように操り、巧妙な罠を仕組むんだ」


と、カルシンバさん。


「えー、全ては赤帽子の指図なの!

怖い奴だね」


僕はおぞけた。


「商人さんも大変なんだね。

カルシンバさん、よく一人でこんな道を通ってきたね」


「いや、今回は特に敵が多いよ。

たぶん人が多いせいだな」


「ん、つまりオーガにしてみれば食べ物が多い、って事ですか?」


「たぶんね。

他はあまり価値のあるものを積んでるわけじゃないんだから」


確かに酢漬けのニシンは美味しいがオーガ好みとは思えない。

パンは貯蔵用の堅パンで、水を混ぜたワインで戻す。


この世界では僕くらいの子供でも、水で薄めたワインは飲んでも良いのだ。


とは言っても、ふやけるだけだし芯が残って美味しいとは言えない。

だけどフワフワパンは無添加の時代、すぐにカビカビになってしまうのだ。


だいたい、薄めるためのワインなんて安酒なので、酢になる一歩手前みたいなものだし、水も貯蔵した水だから、ふやけた部分も美味くは無い。


だがアルコールだから、僕みたいに純粋な日本人は、姿が毛唐としても、酔ってしまう。


よく知られたイギリスのファンタジーでも未成年がアルコールを飲む下りがあるが、これも一般的な毛唐の風習のようだ。


ともかく僕らは罠を恐れて、夕焼けに赤く染まる廃都を、まだ地平線に見るくらいの位置で、二日目の野営になった。


ガイスンは相変わらず食べる以外は寝ていて、食事の量も減っていた。


僕らはいつものニシンに加えて、ジャーキーも食べて、早く寝た。


最初の見張りをしていると、何故か急速に寒くなってくる。

カルシンバさんは馬車内を暖める薪ストーブをつけてくれた。


だが馬車に籠もっていたのでは寝ずの番の意味はないので、凍えない程度にストーブに当たったら、ヴォグリに乗って周りを探る。


石畳の石を外したり、道にロープを張るのは、たぶん魔除けの結界を恐れない人間の仕業に違いなかった。


魂を半ばゴーストに食べられた生ける屍が、昼も見た通り、複数人、廃都にはいるのだ。


だが人間は生物探知の呪文で探ることができる。

問題は魔物だ。


霊を感知する白の魔法はあるが、それはゴーストしか引っかからない。

オーガは人を食うが生きてはいる。

しかし妖怪なので生物探知では引っかからない。

それも探知できる妖力探知という呪文はあるのだが、悲しいかな、僕もリアも、これは使えない。


だって僕のほうがオーガよりずっと強力な妖力を発しているからだ。


なので、本当はカルシンバさんは、別の冒険者を雇うべきだった。

廃都を通るのなら、だ。


「ケケケ、困ってるみだいだな」


え、と道路を見ると、そこに真っ黒い拳ほどの蜘蛛がいた。


「もし、俺と契約するのなら、俺が教えてやってもいいぜ」


「え、判るの?」


「なんせ俺は、メデューサ様の子の一人だからな」


「え、って事はいつかあんな山のような蜘蛛になるの?」


「ならない。

俺の妖力なら、大きさは自由に変えられるからな」


僕は宇賀神様に聞いてみたが、


「まあ、メデューサも悪というわけではない。

力を貸してくれるというのなら、お前の場合は本当だろうし、借りても良いのではないか」


なんか玉虫色の答えが返ってきた。


「メデューサって悪じゃないの?」


「リサドリアにとっては、近くにあんな巨大な妖魔がいることは不都合だったわけだが、妖怪もまた、この世には居るべき存在であり、メデューサはその妖怪の神でもあった。

決して妖魔もまた、この世の理を外れた存在ではないのだ」


「そうそう、さすが蛇神様は分かってるな。

俺は、メデューサの目を持つお前を助けたほうがいい、と思っている蜘蛛なんだよ。

全ての蜘蛛を信用はしない方が良いが、俺は信じて良いんだ」


僕はこのメデューサのお子様、アトラクと契約した。

僕の肩に、ピョン、とアトラクは飛び乗り、


「それじゃ敵意ある存在を感知する魔法を教えよう」


これは人でも妖魔でも神も悪魔も、とにかく敵意あるものを知らせる魔法だ。


反意の鏡、という。


これを使うと、敵意あるものが克明に判る。

ヴォグリに乗って馬車周りを歩くと、不意に左側の土の影に何かを感じたので、空気の矢を放つと、ギャと何か小型の四足獣が悲鳴を上げ、逃げていった。


「赤帽子の手足になってる山猫だな。

他の人間じゃ気づかないだろうから追い払って正解だぜ」


僕は、ガイスンは具合が悪そうなのでジーンに交代し、休むことになった。


僕は爆睡する質なので、ぐっすり寝ていたのだが……。


「シンタロー、シンタロー起きて!」


リアにゆすり起こされた。


「え、何、オシッコ?」


寝ぼけながら僕が問うと。


「ガイスンがどこかに行ってしまったんだ!」


ジーンが苦渋に満ちた声を出していた。





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