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13廃都

馬車はスピードを落として廃都に近づく。

ヴォグリに乗った僕は、周囲を警戒した。


僕らはすぐに森に入る。


森自体は安全なはずだが、昨日はゴーストも来ていたし、緑によると、奥に行ったらかなり危険そう、とのことだ。


ヴォグリの取ってきたイノシシは、馬車の屋根ではジャーキーに、後ろで燻製も作り、塩漬けや骨は豚骨スープになっている。


塩漬け肉は生ハムにするかベーコンにするか、僕は楽しく悩んでいた。





ガイスンは寝坊していたのに、馬車ではまた眠り込んだ。


姉のジーンは心配して額に手を当て熱などをみていたが、別に体調不良では無さそうだ。


森は不気味ではあったが、朝ということもあり、特に危険は無かった。


やがて森を抜けると荒涼とした枯野になり、はるか地平線の果てに大きな建造物が見えた。


「あれが廃都?」


僕が馬車に聞くと、ジーンが、


「そうさ。

ゴーストやオーグでいっぱいの、死人の都さ」


と、なんとなく熱い視線を廃都へ向けていた。


無論、道は廃都には近づかず、やや迂回するように蛇行しながら進んでいく。


「あれ!

人が倒れてるよ!」


枯れ草が茂る野原に、粗末なマントを羽織った人影が倒れ伏していた。


「ダメだよ!」


とカルシンバさんは強く言った。


「あれは罠なんだ。

オーグが、負傷者を装って、ああして人間をおびき寄せているんだよ」


「うわー、知らなきゃ、思わず近づいちゃいますね」


僕は驚いた。


「年に何人も、それで亡くなっているんだ。

人以外にも金貨が落ちてたり、武器があったり、様々に廃都は人を騙すのさ」


「魔物って怖いんだなぁ。

ただ襲ってくるだけじゃなく、常に騙そうとするんだね」


僕は人になりすましたオーガを見た。


まだ倒れたふりをしていたが、僕らは横を過ぎていく。


太陽は高くなってきたが、廃都はまだ地平線上だ。


カルシンバさんは、馬車を止め、しかし道路から出ずに、馬車の中でお昼をする。

煮炊きはできないからパンとニシンだ。


食べるとすぐに馬車を進ませる。


「出来るだけ早く廃都から遠ざかりたいんだけど、今日はかなり近くで野営しないといけないね」


カルシンバさんは言う。


「もっと、とばしたらどうですか?」


僕は聞くが。


「いやいや、廃都付近では何が起こるか分からないし、馬も倒れたら救いようが無いからね。

ゆっくり進むより仕方ないんだ」


「そうか。

ゴーストとかが道に出てくることも、当然、あるんですね?」


僕が聞くと、


「一応、この道路には退魔の呪文が彫られているんだけど、万全という訳にはいかないんだよ」


過去にもオーガやゴーストが現れたことがあったらしい。


また、馬車を破壊しようとする仕掛けも仕込まれるらしく、


「たぶん、廃都に入った冒険者の中には、奴らの手下になってしまう者もいるらしいんだ」


「え、オーガや、ゴーストの下僕になる人間が!」


「お金や強い剣に魅せられた人間の末路は悲惨なんだよ。

最後はオーガに食べられて終わり、ならまだいいが、その後はゴーストになって、この雑草も生えない荒野をさまよい、生きた人間を誘惑するんだ」


怖ー、もしかすると昨日のゴーストもそういう奴なのか?


周りは見渡す限りの枯野で、鳥も虫も寄り付かない。


「あ、確かワームがいるとか聞きましたけど?」


ああ、とカルシンバさん。


「骨のワームと言って、まるで巨大生物の白骨みたいなワームなんだ。

骨だと思って油断すると命は無いよ」


「赤帽子も怖いけど、なんかワームの方が怖い感じですよね……」


僕は言うが、


「力は、確かにワームのほうが強いけど、赤帽子は、狡猾で人を陥れるからね。

ワームは近づかなければ特に被害はないよ」


と、カルシンバさんは教えてくれた。


僕は周りを見回すが、


「特に骨は無いですね?」


「枯野は平坦に見えるけど本当は起伏が凄いんだ。

窪地なんかがワームは大好きなのさ」


へー、と僕が言ったとき!


ガタン!


突然、馬車が傾いた。


前輪が大きな穴に落ちている。

だが。

一瞬前まで、そこに穴など無かった!


僕は、ヴォグリを走らせ、馬車を支えた。


「助かったよヴォグリ!

こういう罠があるから、廃都は怖いんだよ」


見ると、石畳が外され、そこに布のようなものが置かれて誤魔化されていた。


僕は嫌な予感がして、周りに視線を走らせた。


「あの窪みにオーガが隠れてる!」


リアも、


「三、四、五匹のオーガと、たぶん人間が二人、わたしたちを取り囲んでいるわ!」


すっかり罠にはまったのだ。


ヴォグリは本来なら機動性が高いが、今は傾いた馬車を支えている。


僕らは道の真ん中で動けなくなっていた。


オーガや人間が身を乗り出して弓を構えた。


仕方ない!


「炎の蛇!」


僕の背中から真っ赤な大蛇が立ち上がり、唸りながらオーガたちに襲いかかる。


弓を射られたらヤバかったが、オーガたちは炎の蛇にうろたえた。


その瞬間に、周りの敵を、炎の蛇は焼き尽くした。


「す…凄い魔法だね」


カルシンバさんも驚く。


「今のうちに、馬車を持ち上げましょう!」


ジーンと、無理に起こしたガイスンがリアの取り出した棒を梃子に使って馬車を持ち上げ、ヴォグリが馬とともに馬車を引く。


僕は後ろから馬車を押した。


この枯野では、いつまた敵が襲ってくるか分からないから、時間との勝負だ。


僕らは、手際よく馬車を穴から出し、やれやれ、と旅を続けた。


どこに罠があるか分からないから、神経がすり減る。


廃都に近づくのは怖いが、しかしゆっくりとしか進めなかった。


ガイスンは、いつの間にか、また寝てしまっていた。

ガイスンの鼻が無いだけでも、余計にピンチだ。


「もしかすると呪いかもしれないわね」


リアは退魔の呪文をガイスンにかけるが、


「この土地自体が呪いに溢れてるから、廃都を出ないと、効果がないわ」


まず、ガイスンが倒れた。


僕らは、まだ地平線にある廃都に向かって、ゆっくりと進んで行った。


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