ラブレター作戦失敗!!
― とある旅館前 ―
アサヒ「暑い…」
バスから出たらもの凄く暑かった。確かニュースでは38°で今年最高気温ってお天気お兄さんが言ってたな。まだ7月なのに今年最高気温とか、8月になったら更に今年最高気温越えるでしょ。余りの暑さに蝉の鳴き声が聞こえなくなったし。蝉の鳴き声、好きだったのになぁ…
アサヒ「はぁ…」
サイモリ「何ボーとしてるだアサヒ。速く旅館に入らんか」
アサヒ「はーい」
スケベジジィに呼ばれて旅館の中へ入る。旅館の中は広くて、着物を着た女性スタッフやスーツに法被を着た男性スタッフが多かった。
サイモリ「わしは手続きしてくるから、お前達は待っていろ」
スケベジジィが1人で受付に行こうとしていたが、そこにはミツハの姿が無かった。俺は不思議に思ってスケベジジィにミツハが何処にいるか聞いた。
アサヒ「あれ?ミツハは?」
サイモリ「周りをよく見ろ。あそこのソファで横たわっているだろ?」
スケベジジィが指を指した先にミツハは汗を大量に流しながらソファの上で寝っ転がっていた。
ミツハ「あつい…」
アカリ「そんな格好してたらそうなるわよ…。速く魔女衣装を脱ぎなさい。さもないと熱中症になるわよ」
アカリがやれやれと呆れていた。根性で魔女衣装を我慢して着てたんだ…平気そうだったからてっきり神術でも使って暑さを遮断していたのかと思ってたわ。こんな暑いのにあんな格好するなんて馬鹿なのかな?
シュン「アサヒ」
シュンが俺の名前を呼んで近づいて来た。
シュン「ラブレターの件だが、ビニール袋に入れてアキナの部屋のドアノブにぶら下げる事にした。ビニール袋を渡しておくぞ」
そう言ってシュンは俺にビニール袋を渡した。はぁ〜、告白する暇があるならスケベジジィと修行したい。
アサヒ「分かったよ」
俺はシュンからビニール袋を受け取る。
サイモリ「お前らー!部屋が決まったから移動するぞ!シュン、皆の荷物を出せ」
シュン「了解。黒兎、頼んだぞ」
シュンが黒兎を召喚して、黒兎が口から俺達のスーツケースを出す。毎回思うんだが口から出すの気持ち悪いな。ちょっとヨダレついてるし。ちなみに旅館のスタッフ達は俺達が神術士である事は知っているので神使を見ても驚かない。でも周りのお客さん達はみんな驚いた顔で俺達を見ていた。
ヒマリ「サイモリせんせーい。ミツハ先生が暑くて動けないようですー。どうすればいいですかー?」
ヒマリがスケベジジィに向けて不安そうな声で手を挙げた。
サイモリ「だから魔女服なんか着るなと言ったんだ。ミネコ、ミツハの身体を冷やしてやれ」
ミネコ「は、はい!分かりました!」
ミネコはミドリから離れて緊張しながらミツハの元へ走って近付いた。
ミネコ「シロニャン出て来て」
ミネコがシロニャンを召喚する。
ミネコ「凍風だよ、シロニャン。ちゃんと弱めてね?」
シロニャン「ニァア」
シロニャンが返事をしてミツハに向けて口から吹雪のような風を吹いた。凍風か…なんか豆腐みたいで美味しそうな技名だな。
サァアアアア…
ミツハ「あ〜〜、涼しいぃい。生き返るぅうう…」
ミツハが横たわりながら幸せそうな顔をしている。
サイモリ「わしの闘牛がミツハを持ち上げて運ぶ。ミネコ、お前の神使にミツハの上に乗ってしばらく風を顔に当たるように指示をしておけ。あと悪いがミツハの具合が良くなるまでは預からせて貰う」
ミネコ「わ、分かりました」
ミネコは相変わらず緊張していた。どうやらスケベジジィが怖いらしいな。
ミドリ「あら、そんな面倒な事をしなくても私の血で一発よ?」
ミドリは得意げにミニサバイバルナイフを出した。
ミネコ「だ、駄目だよミドリ!?不死身でも自分の身体を大切にしないと!」
ミネコはミニサバイバルナイフを取り上げてミドリの提案を必死に反対した。
サイモリ「ミネコの言う通りだ。スタッフが神術士が来る事は分かっていてもどんな神術を使うのか分からんのだ。それに他の客だってが見ているんだぞ?いきなり女の子が自分の指を真っ二つに切り始めたら周りがパニックになるだろ?」
スケベジジィはミネコの言う事に頷いていてミドリの提案を反対した。
ミドリ「分かったわよ!ミネコ、速く私のナイフ返しなさい」
ミドリがミネコに向けて手を差し伸べるが、ミネコが疑うような目でミドリを見つめていた。そんな様子を俺は遠回しに見ている。
アサヒ「これは動き出すのが遅くなるな」
シュン「だがチャンスでもある」
ミドリとミネコの様子を見ていた俺の肩をシュンが軽く叩く。
アサヒ「チャンス?」
シュン「そうだ。実はサイモリ先生からアキナの部屋の番号を教えて貰った。今から教えてやるから、さっさとアキナの部屋へ走って行ってドアノブへビニール袋をぶら下げて来い」
アサヒ「分かったよ」
俺はシュンからアキナの部屋を教えて貰ってそこへ向かった。
ちなみにミツハがハーレム合宿と言っていたが、僅かでも神仏合体を出来る確率を上げる為に2人が俺に抱き枕を抱くように密着して寝るらしい。だから俺がそれぞれの部屋へお邪魔して2人の女の子の間に入って寝る事になる。
アサヒ「恥ずかしい…」
俺は走りながら顔を真っ赤にした。せっかく世界を変える覚悟を決めてスケベジジィと厳しい特訓、そしてマカナに教えて貰いながら真面目に勉強して、決意を固めたのに…自信が無くなりそう
アサヒ「まるで変態おっさんみたいじゃないか。スケベジジィでもこんな事しないよ」
俺はアキナの部屋に到着してドアノブにビニール袋を括り付けた。
― ミドリとミネコの部屋 ―
部屋は和風になっていて靴は玄関で脱ぐようになっていた。
ミドリ「それじゃあ頼んだわよ、マカナ」
マカナ「あ、ああ。私の天耳通でアキナとトモエの部屋の会話を聞けば良いんだな?」
アキナの反応を知る為にシュンとミドリがマカナを呼んでミドリとミネコの部屋に連れ込んでいた。
マカナ「よし、神仏合体」
マカナが大天狗に変身して壁に耳を当てた。実は隣の部屋はアキナとトモエの部屋なのだ。
シュン「大天狗までなるとは…」
マカナ「頼まれたからには全力でやるとも。何せお前達は恩人だからな」
ミネコ「ミドリ、何が始まるんの?」
ミドリ「面白いこと」
ミネコが不安そうに聞くがミドリはニヤニヤしていた。
マカナ「ん?なにやらアキナがビニール袋を見つけたようだ。どうやら手紙が入っているみたいで…アキナ宛のようだな。ん?ラブレターだそうだ」
シュン「来た!」
ミドリ「さて、どんな反応をするかしら?」
ミネコ「ら、ラブレター!?」
ミネコは唐突な事に驚いて恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていたが、シュンとミドリはお互い見合ってニヤニヤしながら面白がっていた。
アサヒ「恥ずかしい…」
俺は赤面して顔を両手で覆った。好きですと書いていないとはいえ、やっぱり恥ずかしい!
マカナ「な!?何だと!?」
ミネコ「どうしたの!?」
マカナが驚いた顔で俺達を見る。
マカナ「ラブレターが燃やされた…」
一同「なんだってーーー!!」