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アサヒ道

 マカナ「うぅ…」

 マカナ?「大丈夫か?立てるか?」

 マカナ「ああ…」


 どういう事だ?双子か?

 俺は辺りを見渡すが乱入者が来た痕跡も無かった。天狗が飛んで戻って来たが、天狗も二人になっていた。


 アサヒ「天狗の…能力か…」

 マカナ?「破廉恥な奴め。どうやら相当痛い目にあいたいようだな。」


 マナカ?と天狗?が俺の方に向かってくるが、もう一人のマカナと天狗は武器を構えていた。おそらくマカナ?と天狗?が前衛で攻めて来て、後衛にいるマカナと天狗が援護だろう。


 アサヒ「クソッ」


 マカナ?の斬撃と天狗?の金剛杖を避けるが、もう一人の天狗の突風が当たり吹き飛ばされる。


 ベリベリ


 胸の札が剥がれそうになったから焦って押さえた。その隙にマカナの太刀に斬られそうになり、咄嗟に避ける。反撃しようとしたら、マカナがまた増えて蹴って来た。


 アサヒ「何で増えるんだよ!?天狗に増える能力なんて無いだろ!」

 マカナ「何故私に質問する?能力を敵に話す馬鹿がいるか。」

 マカナ(とはいえ、天狗が分身を使っていなかったら危なかった…)


 マカナがドンドン増えていき、100人になった。


 アサヒ「勝てるわけねぇええだろぉおおおお!!」

 マカナ「なら大人しく負けて和風バニーでも着るんだな、落ちこぼれ。」

 アサヒ「この野郎〜。もうアレしかないな。筋肉痛になるから嫌だったが、仕方がない!」


 更に全身に力を入れる。


 アサヒ「旭道、二段!!」

 体のオーラが紫から青に変わる。紫の状態より更に体中がキツくなった。


 マカナと天狗達が襲いかかる。

 だが一瞬で10人を倒す。


 マカナ「更に速く!?」


 マカナと天狗達が回避行動を取るがもう遅い!


 アサヒ「このまますぐに終わらせてやる!!」


 マカナと天狗達をワンパンで倒していく。アイツらは目で追えていない!


 あと8人!


 マカナ「このままでは全滅だ!!」


 6人!!


 マカナ「はい、残念」


 いつの間にかマカナと天狗が増えていた。しかも今度は300人だ。


 アサヒ「はぁはぁ」


 ゴリ押しでも勝てない。俺が旭道で使えるのは二段までだ。

俺は絶望した…。


 マカナ「ゴリ押しで何とかなる訳ないだろ。だから貴様は落ちこぼれなんだ。神使を持たぬ奴は目障りで気持ち悪い。神術中学は遊びで来るところでは無いんだ。さっさと出て行け。」


 マカナは上空で上から目線で言うが、俺は何も言えなかった。


 マカナ「何だ?何も言い返せないのか?そうだろうな。お前はただ神術士なりたいだけの馬鹿だ。覚悟や信念の無い馬鹿。私はそういう奴が大っ嫌いだ。遊びたければそこら辺の中学へ転校しろ。」


 マカナの言う事は正しい。


 マカナ「私はお前のような空っぽな人間とは違う。私にはやらなければならない事がある。その為ならどんな事だって耐えられる。」

 マカナが強く拳を握り締めていた。何か強い覚悟を感じた。


 アサヒ「くっ!」


 俺は目眩しの為に地面殴りをした。


 マカナ「また目眩しか無駄な事を…」


 マカナは翼で煙を払うが、俺はいない。俺は穴を掘って地面の中に隠れた。穴は瓦礫で隠したが見つかるのも時間の問題だ。この作業が一瞬で出来るのも旭道二段だからだ。だが、マカナの前では役に立たない。俺は旭道を解いた。


 アサヒ「マカナの言う通り、転校した方が良いかもな…」


 だけど、それでも何故か神術士を諦めたくないと思ってしまう。神術士は俺の憧れだから。でも俺は記憶喪失だから、何故憧れたのか分からない。

 マカナが言った事を思い出す。

 マカナ「私はお前のような空っぽな人間とは違う。私にはやらなければならない事がある。その為ならどんな事だって耐えられる。」

 俺にそんな覚悟なんて無い。初めから何も無いんだから。


 アサヒ「ああ、マカナの言う通り俺は落ちこぼれだ。」


 小さな声で独り言を言う。そうだ、落ちこぼれなんだから、どうせ神術士になれっこないよ。

 トモエが言った事も思い出す。

 トモエ「余り無理はしないで。和風バニーを着たくない気持ちは分かるけど、自分の身体を一番に考えないと駄目よ。」

 そうだよ。トモエの言う通りだ。無理はしたくない。旭道の反動とマカナの攻撃で体中痛いし、このまま降伏すればこれ以上痛い思いをせずに済む。和風バニーを着るけど…。でも痛いのよりマシだよ。

 もう逃げよう…







 足が動かない。何でだよ。






 何故かアキナの言う事を思い出す。

 アキナ「そうだよ!どんな人だって諦めずに努力すれば強くなれるんだから!」

 スケベジジィの言う事も思い出す。

 サイモリ「今神術士に必要なのは新しい風だ。邪神達も進化する。いつまでも自分達だけで何とかしようとしてもいずれ限界が来る。ならわしら人も成長して協力し合う事が必要だ!!」





 やっぱり逃げたくない…人の努力を信じるアキナや新しい風と言って期待してくれたスケベジジィの想いに答えたい。


 マカナの言う通り、俺は落ちこぼれだ。だけど…

 ()()()()()()()()()()()!!臆病な奴が神使に認められて神術士になれる訳ないだろ!!マカナに落ちこぼれの意地を見せてやる!!!


 でも奴を倒すにはゴリ押しでは無く、本体を狙うしかない!しかし、俺の五感では奴の本体を見破る事はできな…

 いや、あった。匂いだ!!

 だが、これは賭けだ。マカナが俺の思った通りに動いてくれる事と俺の旭道二段の嗅覚にかかってる。失敗するかもしれない。


 俺は自分の顔を右手でビンタする。


 アサヒ「失敗が何だ。やってみなきゃ分からねぇだろ。」


 覚悟は決めた。今の俺は空っぽじゃない。それを証明してやる!!



 ―管理室―

 アカリ「これはマカナの勝ちね。アサヒの奴、完全に絶望してたし。」

 ミドリ「負けたら和風バニーにしたからでしょうか?」

 シュン「いや、和風バニーは関係無いかと…」

 アキナ「でも今のは言い過ぎなんじゃ…」

 サイモリ「いや、マカナの言う事は正しい。ここで心が折れるようでは邪神には勝てん。」


 ―草原地区―

 マカナ「これは…」


 俺が地面殴りした地点にマカナがいた。


 マカナ「地面に穴を掘って逃げたのか。岩の破片で隠れて分からなかった。穴に入ったら何をして来るか分からないから迂闊に入れないな。」


 マカナが笑う。


 マカナ「しかし…まるでモグラだな。まぁ、モグラのように長く地面の中にいる事は出来ない。息が出来なくなって地上に出た瞬間に総攻撃だ。」


 アサヒ「マ、マカナ!」


 俺は臆病な大声でマカナの名を呼ぶ。俺は草原地区の端っこまで旭道二段を使用して穴を掘って出て来た。ここは破片が少ないので風に当たりやすい筈だ。

 掘って来たせいで両手が痛い。


 アサヒ「か、か、かかっとこぉい。」


 俺は弱々しく挑発をした。


 マカナ「アハハハ!!血迷ったか?そんな馬鹿丸出しな声で挑むのか!だからお前は落ちこぼれなんだよ!!」


 マカナと天狗達が一斉に俺に攻撃をしようとする前に、俺は地面殴りをした。

 今は旭道二段なのでノーマルの時より規模を大きく煙と破片を出す事が出来た。


 マカナ「無駄だ!」


 マカナと天狗達が翼で煙と破片をはらう。


 アサヒ(チャンスだ!!)


 油断したからなのだろうか、ただの風で良かった。突風や突撃して来たら終わってた。マカナと天狗達が発した風で煙が飛んでいく中、俺は嗅覚に集中する。

 当たる破片が痛いが、今は我慢だ。俺の体力的にもチャンスは一回。これに全てを賭ける。

 嗅ぎ分けろ…

 マカナの匂いでは無く、()()()()を見つけるんだ。




 見つけた!!




 俺は走り出した。スピードならマカナと天狗より速い。場所は管理室方面に飛んでいるマカナを見つける。マカナは構えた。俺の匂いが強くなる。マカナに焦りを感じた。ビンゴだ!!


 アサヒ「本体はお前だぁあ!!」


 マカナはバレたせいかパニックになって動いていない!チャンスだ!!右手を差し伸ばす。しかし…


 天狗が俺の前で立ち塞がって金剛杖を構えた。おそらく突風では間に合わないから防御体制に入ったのだろう。あり得ない…まさか天狗は俺のスピードに眼が慣れて来たのか?

 どうする?退くか?いや、もうチャンスは今しかない!進め!!


 アサヒ「貫けぇえ!!」


 俺は右腕を突き出し、金剛杖ごと天狗の腹を貫き、マカナの札に触れる。


 マカナ「えっ」


 アサヒ「うおおおお!!」


 マカナの札をベリベリと剥がした。


 アサヒ(マカナの札を剥がした!!やった、勝った…)


 俺は力尽きたから旭道二段が解けた。マカナは負けたショックで天狗と分身達を解いてしまった。


 アサヒ「ぬぉお」


 俺は最後の力を振り絞り、マカナが落下しても無事なように抱いて二人で落ちた…


 



アサヒ「いってぇ…」


どれくらいの間、倒れていたのだろうか?スケベジジィはまだ来ないのかな…


トモエ「アサヒ大丈夫!?」


トモエが突然出て来て、マカナから俺を放した。


アサヒ「俺よりもマカナ…」

トモエ「馬鹿!!あなたが一番重症なのよ!無理をしないでって言ったのに…」


トモエに怒られた。普通自分のクラスの人を心配するだろ。何でこいつは今日初めて会ったばかりなのに俺の事をこんなに心配するんだ?ああ、駄目だ…何も考えられない。


サイモリ「これはやばいな。すぐに病院へ行かんと。」


スケベジジィが出て来た。やっとかよ…。


サイモリ「血が止まらん。わしの神使でアサヒを急いで病院へ運ぶ。ミツハ、後は頼んだ。」

ミツハ「はい!」


ああ…駄目だ死ぬ…


トモエ「アサヒ、目を閉じてはダメよ!!」


トモエが俺の顔を往復ビンタして来た。めっちゃ痛い!!


サイモリ「馬鹿野郎!トドメをさすな!!」

アサヒ「もう痛い、死んじゃう…」

トモエ「アサヒー!!」


その時、ミドリが俺の前に立った。


ミドリ「私の出番ね」


ミドリが神使を召喚した。召喚された神使は…まさかの不死鳥。

ミドリはミニサバイバルナイフを出して自分の右手の人差し指を切り落とした。

そして指先の無い人差し指を俺の口の中に突っ込んできた。


ミドリ「ほら、飲め飲め。」


こいつ平然と自分で指切って人の口の中を掻き回すとか、頭おかしいだろ…。


トモエ「ミドリさん、何を…」

サイモリ「止めるなトモエ。アサヒを見ろ。」


ミドリの血を飲んでいたら傷口が煙と共に消えていって、完治した。ミドリが俺の口から人差し指を出した。切った人差し指は元に戻っていた。


アサヒ「怪我が治った。これって…」

ミドリ「そう、私の神使は不死鳥よ。能力は血で傷を治す事。そして、神使から力を与えて貰ってる間は決して死なない事よ。」


皆驚いていた。まさかミドリの神使が不死鳥だったなんて…。


アサヒ「ヤバすぎだろ。でも助かった。ありがとう。」

ミドリ「照れるわね。さっきの戦い悪く無かったわよ。」


ミドリはクールに笑っていた。


アカリ「マカナ、大丈夫?」

ヒマリ「放心状態だね。」


ミドリがマカナに近付く。ミドリはまた自分の指を切り落として、俺にしたようにマカナにも切り落とした人差し指を突っ込んだ。ただ俺と違って激しくマカナの口の中を掻き回していた。


ミドリ「目を覚ませー」

マカナ「もがががが」

アカリ「あんたもっと優しくしなさいよ!!」


マカナが咳き込んでいた。


アキナ「大丈夫?マカナちゃん…」

マカナ「何故だ…何故私が本体だと分かった。」

アキナの心配を無視して俺に質問してきた。


アサヒ「匂いでわかった。」

マカナ「匂い?馬鹿な、分身も私と同じ匂いをしている!!」

アサヒ「ああ。でも分身には、俺がお前の胸に顔を擦り付けた匂いがしなかった。」


あの増える能力は分身だったんだ…


マカナ「なに?」

トモエ「どういう事なの?」

アサヒ「えっと、俺説明が下手くそだけど…


天狗の分身は完璧だけど、あくまでもそれは天狗本人だけ。天狗は他の人間を分身させる事なんて本来なら出来ない。だけど天狗はマカナと繋がりがあるからマカナを分身させる事が出来る。

しかし、それには弱点がある。それはマカナを分身する際にはマカナの姿を見て記憶して置かないと駄目だ。

それに気付いたのが


マカナ「うぅ…」

 マカナ?「大丈夫か?立てるか?」

 マカナ「ああ…」


この分身体が本体を心配するシーン。完璧に分身出来たなら、分身マカナも冷静でいられるわけが無い。

おそらく俺がマカナの札を口で取ろうとした時に天狗は倒れたままだったからその状況を見ていなかった。

だから俺の匂いが付着した事は知らなかったんだろうな。

あとマカナが分身出来るなら押さえた時に分身をしていた筈だ。

結果、俺の匂いがしないマカナが量産されてしまった。


サイモリ「なるほど、つまりマカナの胸に顔を突っ込んで擦り擦りしたのは自分の匂いをつける為だったのか。お前キモいの。」


スケベジジィが軽蔑するかのような目で見て来た。


アサヒ「うるせえスケベジジィ!!こっちは勝つ為に必死だったんだよ!あとマカナの胸の件は札を取るために、偶然ああなっただけだ!スケベジジィみたいにセクハラの為に故意にやったわけじゃねぇ!」


俺はスケベジジィに指を差して怒った。


マカナ「天狗の弱点も分かっていたのか…」


マカナが絶望している。


アサヒ「マカナ、お前の言う通りだよ。」

マカナ「え?」


マカナが驚いていた。


アサヒ「俺は落ちこぼれで空っぽの人間だ。何故神術士に憧れたのかも分からない。だけどこんな俺を期待してくれたスケベジジィと人を信じるアキナの言葉のおかげで立ち上がってお前に勝てた。

そのおかげでお前の気持ちが分かった。

マカナにも期待をしてくれて、自分を信じている人がいるんだよな。その人達の為に頑張って天狗に選ばれて神術中学に入ったんだよな…。

なのに…俺みたいな神使に選ばれていない奴が推薦で神術中学にいるなんてずるいよな。」


俺はマカナに近付く。


アサヒ「俺は卑怯者だ。この勝負は俺の負けだよ…。だから…」


俺は俯いた。こんな事を言う資格はないかもしれないけど…でも…

俺は顔を上げた。


アサヒ「今度は俺もマカナみたいに努力して必ず神使達を認めさせて、そんで神術士になってみせる!そしたらまたお前に挑戦して、勝ってみせる!!それが本当の勝利だ!!」


俺はマカナに指を差す。


アサヒ「それまで首洗って待ってろ!!」


マカナはまた放心していた。


マカナ「な、何を言って…」


俺は恥ずかしかったのでマカナの台詞を無視して校舎の方向へと走り出した。



サイモリ「どうだ、マカナ。変な奴だったろ?」

マカナ「アサヒは馬鹿ですよ。神使に選ばれるのは10歳までです。彼はもう手遅れ…どうあがいても神術士になれない。」

サイモリ「そうだな。だがそれでも諦めない。これがアサヒなんだろうな。そういう馬鹿が神術士の、いやこの世界には必要だと、わしは思っている。」

マカナ「新しい風…というやつですか?」

サイモリ「新しい風…。違うな。アサヒは新しい風では無く、もしかしたら神術士の世界の夜明けになるかもしれんな…。それならわしは黄昏だろう。」

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