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リバウンド

 ―焼け野原―


 アサヒ「んぐ!?一瞬気を失ってたな…」


 俺は大量の瓦礫の下にうつ伏せで倒れていた。大量の瓦礫といっても細かいものばかりだったので何とかどかせた。だが…


 ズキッ!


 アサヒ「痛!」


 左腕に違和感を感じた。


 アサヒ「うわ…」


 左腕からは感覚が無くなっていて大きい瓦礫の下敷きになっていた。何とか大きい瓦礫を少し持ち上げて左腕を出す事が出来たが左腕は肩から千切れそうな程に複雑骨折していた。


 アサヒ「左腕は、駄目か…」


 ガッカリしたけど運が良い方だ。何故なら雷に当たったら助からない事が多いが、俺は運良く助かった。ここまで運が良いのはきっとパパとママが俺を見守っているからだろう。


 アサヒ「そうだと良いな…」


 俺は微かに笑って左腕を右手で掴んで立ち上がった。


 マカナ「ぐあああああああああ!!」


 上空からマカナの悲痛な叫びが響き渡る。時間が来たのだろう。


 アサヒ「マカナは…どこだ?」


 俺が空を見上げてマカナを探していたら一瞬空が光った。


 ドォン!


 雷を纏ったマカナが目の前に現れる。いつもの狂った笑いとは違い、今度は激しい苦痛に苦しむ顔をして膝と両手を地面に落としていた。


 マカナ「何だ…これは!?身体中が死ぬ程痛い!!」


 マカナは鼻水とヨダレを垂らしながら涙を流していた。


 アサヒ「よし…やっと来たな。今だー!!トモエ!!アキナ!!」


 俺は空に向かって力一杯大声でトモエとアキナの名を叫ぶ。そしたら上空からトモエとアキナが同時に落ちて来た。実はトモエとアキナは龍に乗って様子を見ながら神楽の準備をしていたのだ。


 ドォドォン!


 トモエとアキナはマカナの近くに着地した。


 トモエ「これは…どういう状況?」


 アキナ「まさか、マカナちゃんに勝ったの?」


 トモエとアキナは驚いていた。


 アサヒ「いや、勝っていない。マカナが自爆したんだよ。」


 アキナ「自爆?」


 トモエ「それはどういう事なの?」


 アサヒ「旭道のリバウンドだよ」


 トモエ「リバ…ウンド?」


 俺は疲れた声でトモエとアキナに説明した。


 アサヒ「そうだ。旭道は強制的に身体の限界を越えさせる奥義。長時間使い過ぎてピークに達するとリバウンドによる全身の筋断裂の重症と骨の痛みが出る。ちゃんと自分の実力に見合った使い方をしないとそうなるんだ。」


 アキナ「全身の筋断裂の重症と骨の痛み!?」


 マカナは苦痛に耐えながら驚いた顔をして俺に叫んだ。


 マカナ「まさか…さっき逃げ回っていたのは!?」


 アサヒ「ああ…リバウンドが起きるのを待っていたんだ。最初にマカナが俺の前に来た時に紫のオーラが、いつもの俺の旭道初段の時より小さかったから、そろそろ消えてリバウンドが来るかなって思ってな。」


 マカナ「だとしても有り得ない!私は大天狗だぞ!?たかがお前が作った奥義なんぞに!!」


 アサヒ「例え大天狗でもリバウンドのダメージに耐える事は出来ない。さっきも言っただろう、旭道は強制的に身体の限界を越えさせる奥義だと。

 お前はまだ大天狗に不慣れな状態なのに旭道を使用して、長時間大天狗の限界を越えていたんだ。大天狗とはいえ力任せに暴れていたら症状は更に悪化する。旭道初段でも正しく使わないといけないんだよ。」


 マカナ「そんな…私はまたお前の作戦にハマったのか…」


 マカナが酷くショックを受けて顔を下に向いた。


 アサヒ「マカナが旭道初段をずっと使っていたから出来た作戦だ。正直、マカナは神仏合体だけでも俺に圧勝出来たよ。なのに何で旭道なんてものを…」


 マカナ「お前のせいだ!!」


 マカナは頭を片手で抑えながら俺を睨んで叫んだ。


 マカナ「私は幼き当主になる筈だったんだ!!トモエを越える存在だと言われていたんだ!!お母様とお父様から期待されていた!!」


 マカナは俺に訴えかけるように叫ぶ。


 マカナ「鷲宮家は桜山家と天乃家は誰が日本の実権を握るかで争っているんだ!!そんな中で私は鷲宮家の幼き当主となり、御三家の中で才女となる筈だったんだ!!なのにトモエに抜かれた…あんな弱小神使を持つ女に…。私こそが!いや、代々天狗の神術士になって来た鷲宮家こそが!!この神術士の頂点にならなければならないだ!!」


 マカナは立ち上がって浮いている刀を右手に持った。


 マカナ「なのにお前に負けてから鷲宮家は御三家から外される事になって、お父様とお母様が白い目で見られるようになった!!神使を持たない、しかも男子に負けたからだ!!それがお前だ!!」


 マカナは鬼のような顔で泣きながら刀の刃を俺に突き付けた。


 マカナ「お前とトモエがいなければ!全て上手くいったんだ!!お父様とお母様がまた私を賞賛してくれたんだ!なのに…トモエとお前のせいで!!」


 マカナはふらつきながら、まるで家族を奪った仇に復讐するかのような思いで俺とトモエを睨む。何かトモエに嫉妬していたらしい。


 アサヒ「過去にいったい何があったのか分からんが、今は神楽が優先だ!速くトモエ!!」


 トモエ「私の…せい?」


 俺はトモエに呼びかける。しかしトモエは後退りをしながら動揺していた。どうやらトモエはマカナに嫉妬されていたのを今まで気付かなかったようだ。


 マカナ「そうだ!!龍の神術士のくせに皆から慕われて…私は天狗なのに皆に馬鹿にされて!!」


 やばい、怒りの矛先がトモエになってしまった。


 アサヒ「トモエ!?速く!!」


 マカナ「思い出した…お前のせいだトモエ…」


 トモエ「何を言ってるの?私分からないわ…」


 アキナ「ト、トモエさん…」


 アキナがトモエを心配そうな目で見た時、マカナはトモエに刀を刺す為に飛んで行く。


 マカナ「お前ばかり!!」


 アキナ「トモエさん!!」


 ドガァン!!


 マカナ「ぐぁ!?」


 マカナが爆発で吹き飛んで倒れた。


 トモエ「アサヒ!?」


 トモエは俺の方を見て驚いていた。俺は実は光輝粉塵を付着させたメサプのメスを持っていた。それをマカナに投げて爆発させた。


 アサヒ「トモエ!お前は悪くない!全て俺のせいだ!!だから速くマカナを救ってくれ!!」


 アキナは確かマカナは親から才能が無いと言われても諦めないで努力して来たと言っていた。予想だけどそれは親と鷲宮家を守る為だったのだろう。そして自分の努力を認めてもらう事で父と母と仲良くなれる筈だった。その可能性を最後に潰したのは俺だ。

 声高らかにマカナにライバル宣言した俺は愚者だな。


 トモエ「アサヒ…私としたことがごめんなさい。分かったわ!始めましょう!!行くわよアキナちゃん!!」


 アキナ「う、うん!任せて!!」


 トモエは気持ちを切り替えたが…

 くそっ!アキナは笑顔でトモエに応えたが、あれは演技だ!絶対に動揺している!!俺達を安心させる為に平気なフリをしているだけだ!神楽はリスクのある結界神術。今のアキナに行かせるのは危険だ。俺も一緒に行ったほうが良いな。


 アサヒ「トモエ!アキナ!悪いが俺も…」


 ズサァ!


 トモエ・アキナ・アサヒ「!!」


 メデ「あっぶねwギリギリ間に合ったw」


 サス「まだ邪神化は進んでいるな!!ダッシュして良かったぜ!!」


 プナ「それに3人とも弱っている。特にジョーカー…これはチャンス…」


 メサプがダッシュで俺達の前に現れた。災厄のタイミングだ…マカナの天変地異の中にいたのに生きていやがった。

 この状況にトモエは絶望していた。


 トモエ「そ、そんな…」


 アキナ「大丈夫だよトモエさん!私達3人でやれば倒せるよ!!」


 絶望しているトモエにアキナは励ます。だがメサプと戦う時間は無いし、トモエとアキナが戦ったら神楽の寿量分が無くなる。


 アサヒ「そんな時間は無い!!メサプは俺が相手をする!!だから速く神楽をやれ!!」


 トモエ「そんなボロボロなのに無茶よ!!」


 アキナ「そうだよ!!死んじゃうよ!!」


 2人は止めに入るが俺はついに怒った。


 アサヒ「黙れ!!マカナを救えるのは君達だけなんだぞ!!なのにリスクを背負う覚悟を持たずにここに来たのか!?」


 トモエ「ア、アサヒ…」


 アキナ「アサヒ君…」


 トモエとアキナは俺に怒られて落ち込んでいたが、それども心配していた。呆れた俺は嘘を吐く事にした。


 アサヒ「安心しろ、俺には作戦がある。」


 アキナ「あ、あるの!?作戦が!?」


 トモエ「本当に大丈夫よね?」


 アサヒ「ああ大丈夫だよ!俺は1人でも平気だ!だからマカナの側に行け。1人は嫌なのは分かるんだろ?マカナの側に行ってやれ。」


 俺の笑顔と言葉にトモエとアキナは安堵した様子だった。何とか説得が響いたな。


 メデ「いつまで話してw」


 サス「待て!!地雷式光輝弾があるかもしれない!!僅かでも寿量を感知しながら進むんだ!!」


 メサプが地雷式光輝弾にビビって恐る恐る歩いている。こいつらが馬鹿でビビりのおかげで話す暇が出来たわ、良かったぁ。


 トモエ「そうよね…アサヒごめんなさい。私また心が揺らいでしまったわ。アキナちゃん!速くマカナちゃんを救いましょう!!」


 アキナ「分かったよトモエさん!!アサヒ君、死なないでね!!」


 トモエとアキナはマカナの側へ走り出す。


 アサヒ「トモエが謝る必要なんて無いんだがな…」


 メデ「それでw俺に勝つ作戦があるとか言ってたけどw何なのw」


 サス「地雷式光輝弾が無かったみたいだかな!!」


 メサプが馬鹿にするかのように笑いながら質問して来たので、今度は俺もメサプと同じように笑って答えた。


 アサヒ「ある訳ねぇよバァカ!!ただカッコつけただけだよ!!」


 メサプが歩いてくる。


 アサヒ「ハァハァ…」


 今の俺は肋骨数本折れている。全身には雷による痺れと溶岩による火傷と打撲。大竜巻による切り傷。

 初めての旭道三段だったからリバウンドによる全身の筋断裂の重症と骨の痛みと高次脳機能障害。左腕は肩から千切れそうな程の複雑骨折。

 こんな状態で作戦なんかあるもんか。もう根性だけで時間を稼ぐしかねぇよ。

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