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ミネコの過去

 ― 深山 崖下 ―


 ミネコ「うぅ…」


 頭が痛くて血がどくどく出てきてる。ミドリさんの不死鳥がバランスを崩した瞬間に放り出されて崖に当たって落下した。崖に当たる直前に何とか神使を召喚したおかげで体が丈夫になったから死ななかったけど、頭を思いっきりぶつけたから凄く痛い。

 速くb班と合流しないと…


 ミネコ「あれ、シロニャンは?」


 私は泣きながら辺りを見渡した。シロニャンは私の神使の名前。本当の名前は白猫又。シロニャンは私が勝手に名前をつけた。氷の能力を持ってるんだけど、私が弱いから氷の能力が余り使えない。普通の猫くらいの大きさで、尻尾は二つある。いつもなら私の側から離れない筈なんだけど…今はいない。


 ミネコ「どうしよう…速くシロニャン探さないと。痛!」


 私はシロニャンを探す為に立ち上がろうとした時、右足首に痛みを感じて、また座り込んだ。

 右足首を見たら有り得ない方向に折れていた。


 ミネコ「うそ、どうしよう」


 熊「グルル」


 ミネコ「ひっ!」


 突然大きい熊が出てきた。そんな、ここの深山には邪神がいるから野生動物は逃げていなくなるはずなのに…


 ミネコ「何で…何で私って運が無いの。誰も私を守ってくれないの。」


 熊「ぐああ!!」


 ミネコ「ひぃいい」


 私は死を覚悟して頭を抱えた。


 ミドリ「猛焼の羽根(もうしょうのはね)!!」


 熊「ぎゃあ!!」


 無数の火の羽根が弾丸のように熊に当たり、燃えながらすぐに灰となった。


 ミドリ「ミネコ、大丈夫?」


 ミドリさんが私に駆け寄って来た。そしたら自分の右手の親指を躊躇いなく口で噛みちぎって、私に血を飲ませた。


 ミドリ「あなたの神使って白い猫又だったのね。急に出て来てニャアニャア鳴くもんだから気になってついて来て正解だったわ。」


 そっか、シロニャンがいなかったのは助けを呼んでいたからなんだ。見捨てられたのかと思った。勘違いしてごめんねシロニャン…


 ミネコ「ケホケホ」


 私が咳をした時にミドリさんは背中をさすってくれた。


 ミドリ「頭の傷と右足首は治ったわね。何とか間に合って良かったわ。怖い思いさせてごめんなさい。」


 ミドリさんは優しく励ますかのように語りかけてきた。ミドリさんはアキナさんとは違う優しさを感じる。例えるならアキナさんは太陽でミドリさんは月かな…


 ミネコ「あの…他の人は?」


 ミドリ「逸れたわ。でも安心なさい。皆マカナを追ってる訳だし、マカナの屋敷で見た爆発地点に行けばいずれ合流出来るわ。」


 私は右足を見たら右足首が元に戻っていた。それだけじゃなく、頭の傷も治っていた。


 ミネコ「凄い…本当に治ってる…」


 ミドリ「当たり前よ。私の不死鳥は何でも治す事が出来るわ。」


 驚く私にミドリさんが自慢げに言う。


 ミドリ「さぁ、立って。ここは妖量が充満してる。おそらく多くの邪神が集まっているわ。速く皆と合流するわよ。」


 ミドリさんが私に手を差し伸ばす。


 ミネコ「うん」


 私は差し伸ばされたミドリさんの手を取って立ち上がった。


 謎の飛行物体「トントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントン」


 豚の邪神が突然私達の上空を物凄い速さで通過した。


 ミドリ「制空権はトントン野郎に取られたわね…めんどくさいけど、歩いていきましょう。大丈夫、方向は不死鳥が覚えているからついて行きましょう。」


 私とミドリさんはマカナさんの屋敷で見た爆発地点へ向かう。

 不死鳥は普通の鳥サイズに戻っている。

 神使は寿量によってサイズを変化する事が出来るけど、サイズが大きい程寿量を大量に使うし、小さい程寿量のコントロールが難しくなる。だからサイズは常に神使の通常サイズの大きさにしている。

 私達は不死鳥についていく。私は不意にミドリさんの右手を見たら、噛みちぎった筈の親指が元に戻っている。どうして平気で自分の右手の親指を躊躇いなく口で噛みちぎれるだろう。私はミドリさんに質問してみた。


 ミネコ「あの、ミドリさんは自分の親指を噛みちぎったのにどうして平気なんですか?痛くないんですか?」


 ミドリ「痛いに決まってるでしょ。ただ慣れているだけよ。昔はよく怪我人と病人を治したものよ。そのおかげで村では女神様って言われて祀られたわ。あの時は恥ずかしかったわねー。」


 ミドリさんはまるで思い出話でも語るかのように笑いながら答えた。

 ただ私はおかしいと思った。何故ならミドリさんは巫女であり、村から女神様と祀られる程なら神から大巫女に選ばれる筈だ。なのにミドリさんは大巫女に選ばれていない。だから私はミドリさんに更に質問した。


 ミネコ「村から祀られる程なら、何でミドリさんは大巫女になっていないんですか?」


 ミドリさんはしまったという顔をしていた。どうやらうっかり村の事を話してしまったらしい。


 ミドリ「うーん。それだと私の過去について語らないといけないわね…」


 ミネコ「私、ミドリさんの過去を知りたいです!」


 私はミドリさんに真剣な眼差しでお願いした。


 ミドリ「仕方がないわねー。良いわよ。でも条件がある。」


 ミドリさんが私の前に立って指を指してきた。


 ミドリ「まずはミネコ、あなたの過去を話しなさい。そしたら私も話してあげるわ。言い出しっぺなんだから当たり前でしょ?」


 ミネコ「え、え〜!私の過去なんてつまらないですよ〜。」


 ミドリ「じゃあ、私も話さない。」


 ミドリさんがそっぽを向いて歩き出した。どうしよう、このままじゃミドリさんの事を知る事が出来ない…


 ミネコ「わ、分かりました!私の過去を話します!なのでミドリさんの過去を話して下さい!!」


 ミドリさんが振り向いて私に笑顔を向けた。


 ミドリ「言ったわね。長くなりそうだから休憩しましょうか。」


 私達は近くの木に座り込んだ。不死鳥は木の天辺の枝で見張りをしている。シロニャンは私の太ももに丸くなって座っている。


 ミドリ「さて、聞かせてもらうかしら。」


 ミドリさんはニヤニヤしているが、私は不安だ。


 ミネコ「つまらないですよ?」


 ミドリ「つまらないかどうかは私が決める事でミネコじゃないでしょ?速く話しなさいな。」


 ミネコ「うん…」


 ― ミネコの過去 ―


 私の父と母ははっきり言って毒親だった。

 父はバイトをしていて母は専業主婦と言っているけど家事はしていない。

 母は父の高学歴で大手企業で働いているという事で結婚したけど、実は父の言った事は全て嘘だった。だから夫婦仲は災厄だった。

 父は家にお金は入れないでキャバクラで遊び、母はホステスで遊んでいた。そういう生活をしていたから借金をよくしていて闇金に追われたりもあった。

 私が産まれた理由はある程度成長したら借金返済の為に売り飛ばす為だった。

 幼い頃から虐待はされていたし、掃除や洗濯が出来ないとよく父と母に殴られていた。お金が無いから洗濯や体を洗う事が全く出来なくていつも体は臭くて服が汚かった。だからよく学校で虐められていた。

 地獄のような日々だったけど、通学路で見つけた路地裏にいる捨て猫だけが私の癒しだった。名前をシロニャンって名付けたの。

 シロニャンは私と同じでひとりぼっちだったから自然と仲良くなれて、給食の時にパンを小さく千切ったものをあげて育てていた。

 だけどそれがクラスのいじめっ子にバレたの。ある日女子三人と男子二人が路地裏で私を待ち構えていて、男子ニ人が私を押さえ込んで、女子三人は私の目の前でカッターとハサミを使ってシロニャンを解体したの。

 あの時は物凄く悲しくてボロ泣きしたけど、彼女達は笑いながら私に暴言や暴力をして来たの。捨て猫に餌をあげるのは犯罪だ。犯罪者は死刑だって言われた。

 ただ殴られてる時にシロニャンのバラバラになった死体が集まって光出したの。そしたらシロニャンが元の姿に復活したの。ただ尻尾が二つになってた。

パニックになっていたいじめっ子達を氷漬けにして尻尾で粉々にしていたのを見て私は気づいたの…

 シロニャンは実は神使で捨て猫に化けてただけで神術士に相応しい子を探してただけだって。

 神術士は死亡率が高くて20歳を迎える事は出来ない事は噂で聞いていた。だから私は神術士だとバレないように生きていこうと思った。だけど、すでに神術団体から感知されていて家にやって来て勧誘して来たの。私は嫌だって言ったんだけど、


 ミネコ父「多額のお金が貰えるから神術団体に入れよ!借金が無くなって毎日遊び放題だ!!」


 ミネコ母「やっとうちのゴミが役に立ったわね!!アンタを産んで良かったー」


 私は神術団体に入って無理矢理巫女にさせられて、まともな訓練も受けさせて貰えず邪神と戦わされた。何度も死にそうになったし、死んでいく子達を見て来た。私達は邪神の動きを探る為の捨て駒の扱いを受けてきた。

 だけど何故か私は大巫女で選ばれて神術中学に入学させられたの。


 ― 深山 ―


 ミネコ「つまらない人生ですよね…」


 私は俯いた。


 ミドリ「ええ、全く面白くなかったわ。だから…」


 ミドリさんは私の手を引いて抱きしめた。


 ミドリ「これから面白くて楽しい人生にしましょう!!」


 ミネコ「え?」


 私は突然抱きしめられて驚いていたが、ミドリさんはそんなのお構い無しに話を進めた。


 ミドリ「大丈夫よ、神術中学には頼りになる子達がいるわ!あなたはひとりぼっちじゃないし、ゴミなんかじゃないわ。だって私達の友達になったんだから。」


 私は急なミドリさんの励ましの言葉を聞いて涙が勝手に出て来て大泣きした。

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