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凛々しい少女とちっぽけな少年

 ― マカナの庭園 ―


 プナ「お荷物を先に殺してあげようとしたのに…悲しい…」


 プナは涙を流していたが、アキナは真っ直ぐな眼差しでメサプを見ていた。


 アキナ「私の友達にお荷物なんていないよ。」


 メデ「はwそこに伸びてるオスガキ見てみろよw女に守られてw情けねwww」


 俺は電気ショックの痺れで倒れたまま動けなくなっていた。トモエとアキナがいなければ俺は確実に死んでいた。メサプの言う通り俺はお荷物で情けないガキだ。そんな情けないガキの前にトモエとアキナが凛々しい姿で立っている。


 アキナ「誰かを守るのに性別と年齢なんて関係ないよ。私に力があって、その力で皆を守りたいと思って、守っているだけだよ。」


 アキナがメサプへ突撃しに行く。


 サス「腹立つメスガキだ!!殺せ!!」


 プナ「悲しい…そんな考え方をしている者ほど…短命である…」


 メデ「そんなんだからお前ら巫女供は都合良く()()()()()んだろうがぁあああwww」


 メサプもアキナに突っ込んで行くが、アキナは突然空高くジャンプした。そしてメサプの先にはトモエが薙刀を構えていた。


 トモエ「爆龍水波(ばくりゅうすいは)!!」


 トモエの足元から大量の水が爆発したかのように溢れ出た。そして溢れ出た大量の水が次々と龍の形となり、複数の龍が波のようにメサプへ襲いにかかる。

 トモエの龍が口で俺を掴んで自分の背に乗せた。そして空へと避難した。


 サス「コイツ!これ程の水を大量に出せるとは!!なんて寿量の多さだ!!ジャンプで回避!!」


 メデ「いやw上にはピンクのメスガキがいるw」


 プナ「なら僕の出番…悲しい…」


 プナが手のひらを爆龍水波の前に出す。


 プナ「輸血…」


 手のひらには穴があってそこから大量の血が噴射される。


 ドォオオオ!!


 爆龍水波と大量の血がぶつかり合い弾けた。空には血の雨が降り、マカナの屋敷はトモエの膝のところまで水没していた。


 サス「この黒髪のメスガキ!!」


 メデ「だから上w」


 メサプが上空を見る。その先には鬼が棍棒を構えていて、その棍棒の上にアキナが乗っていた。


 アキナ「鬼さん、フルスイング!!」


 鬼がアキナをメサプに目掛けてフルスイングした。高速な動きでアキナが拳を構える。


 アキナ「華炎パーーンチ!!」


 拳から炎が出てメデの顔に目掛けてパンチしようとするが、メデがサスから()()()()。アキナは驚いた顔をしていた。


 アキナ「えー!?」


 メデ「残念w」


 サス「速く捕まえろやボケ!!」


 メデは頭にあった脚を下へ移動させてサスの肩に乗って、アキナの両手を掴んだ。プナはアキナの両脚を掴んで、サスは両手から手動式除細動器のパドルを形成した。


 サス「あのオスガキにした事を同じようにお前にしてやる!!」


 アキナは両腕両脚をメサプに掴まれているのに冷静だった。彼女は空気を勢いよく吸い込む。


 アキナ「スゥー、放炎華(ほうえんか)!!」


 メサプ「!!」


 アキナはメサプに向かって一気に炎を吐いた。その炎はメサプを包み込んで広い庭園に広がって大きな花がとなって、水没した水を蒸発させた。トモエは龍の能力で既に上空に飛んで避難している。

 アキナは炎を吐き終わったら、辺りに少し炎が残る地面に着地した。美しい庭園が今では跡形も無い。


 メサプは所々火傷を負っていた。メデはすぐにサスまで近くにいき、合体した。


 アキナ「頑丈だね。でも次で一気に決める!トモエさん!!」


 トモエ「ええ!アキナちゃん!!」


 アキナが拳を構えると同時にトモエも薙刀を構える。


 プナ「連携神術ですか…」


 サス「このメスガキ二匹!!邪神との戦いに慣れてやがる!!」


 メデ「油断したねwwそれならwwww」


 メサプ「撤退」


 アキナ「えっ!?今度は三つ!?」


 トモエ「また分裂した!?」


 メサプがメデ、サス、プナに分裂した。アキナとトモエが驚いている隙にメデは頭にあった脚とサスは背中にあった脚が下に移動して、各それぞれ別方向へダッシュで逃げていった。


 アキナ「はやっ!逃げられた!!」


 トモエと俺を乗せた龍が地上に降りる。


 トモエ「クソッ、次会った時は必ず殺す。」


 アキナ(トモエさんがあんなに怒ってるの初めて見た…やっぱり、アサヒ君のこと好きなんだ。)


 アカリ「とぉお!!」


 メサプが俺で掘った穴からアカリを乗せた灰狼がジャンプして出てきて、アキナとトモエの近くに着地した。アカリと灰狼は水に濡れていてびちょびちょだった。


 アカリ「雑魚の掃討は終わったわよ!あとトモエ、この水あんたのでしょ。天井の穴から大量に水が入って来て大変だったんだから。次から周りの事を考えて寿量を抑えて神術使いなさいよね。」


 トモエ「ご、ごめんなさい。」


 アキナ「仕方ないよ。()()()()()()()()()()()()()()()!」


 アカリがトモエに叱って、反省しているトモエにアキナが励ましていたが、俺はある言葉に耳を疑った。


 アサヒ「新…技?」


 俺は龍の背から降りようとしたが、痺れている為そのまま落ちた。


 トモエ「アサヒ!」

 アキナ「アサヒ君!」


 二人は俺に駆け寄って来て、俺を龍に寄っかかるように移動させた。


 アサヒ「新技って…アキナとトモエも開発していたのか?」


 トモエ「ええ。授業中にミツハ先生と協力してね。」


 アキナ「アサヒ君どう!?かっこよかったでしょ!」


 トモエとアキナが笑顔で答えるが、アカリはやれやれをしていた。


 アカリ「ま、トモエの場合はほとんど私達に教える側だったけどね。」


 アキナ「そうそう!トモエさんは入学してからもう神術いっぱい使えていたもんね!私なんて一週間前は華炎パンチと華炎キックしか使えなかったもん!!」


 アキナは自慢げに笑顔で語るが俺はショックを受けていた。何故なら俺のこの一週間は光輝弾と素振りが出来ただけで、今回での邪神との戦いでは何の役に立たなかったからだ。

 それに比べて彼女達は多くの新技をたった一週間で手に入れて邪神に対抗していた。

 俺の努力や成長なんて自分にとってのただの気休めにしかならなかった。


 アキナ「アサヒ君?大丈夫?」


 アキナが俺の顔を覗き込むように自分の顔を近づけて心配して来た。


 アサヒ「あ、ああ!大丈夫だよ…」


 俺はなんとか笑顔で答えたが、きっと俺はここに…彼女達と一緒にいるべきではないと思ってしまった。


 トモエ「もしかしてアサヒ、まだ人体模型野郎のダメージが残っているの?それなら速くミドリを呼ばないと…」


 ミドリ「来たわ!」


 ミネコ「待ってぇ、はぁはぁ、下さい〜」


 体中びちょびちょになったミドリとミネコが息切れしながら走って来た。


 トモエ「ミドリとミネコ!?シュンとヒマリは?」


 トモエはミドリにシュンとヒマリの場所を聞こうとした時に二人が後から走ってくるのが見えた。


 ヒマリ「いるよー」


 シュン「クソッ。ミドリの奴、走り速いな」


 ― 一年集合 ―


 トモエがb班に地下トンネルの牢屋の事とメサプの事を話していた。


 ヒマリ「そんな事があったんだねー」


 トモエ「ええ。メサプはおそらくマカナと何か関係があるわ。速く捕まえないと…」


 アカリ「捕まえるって言ってもねぇ、あの速さじゃあ探せないわよ。」


 トモエ達が今後どうするか話している中、俺は一人で門の端っこで地べたに座っていた。


 ミドリ「具合はどう?」


 アサヒ「え?ああ元気になったよ。」


 ミドリが俺に近付いて来て隣に座った。


 ミドリ「それなら、後は心の方ね。」


 アサヒ「は?」


 俺は驚いてミドリの顔を見たが、ミドリはアキナを見ていた。


 ミドリ「アキナからアサヒの事を聞いたわ。あなた、牢屋の中にいたアキナをメサプから助けたのね。やるじゃない。アキナがお礼言いたいって言ってたわ。ただ…」


 ミドリが俺の顔を見て優しく笑った。


 ミドリ「アサヒ君に話しかけたら辛い顔されたからお礼が言えなかったって。助けられてショックを受けた事、アキナにバレてるわよ。」


 アサヒ「そ、そっか…頑張って笑顔作ったんだけどな…。なぁミドリ、俺って情けないよな。努力しても結局はトモエとアキナに助けられてばっかりだ。それに比べたら牢屋の事なんて…」


 俺はついミドリに愚痴ってしまった。友達だからってつい甘えてしまった。


 ミドリ「何よ突然、助けられる事が嫌なの?」


 アサヒ「それは…」


 俺は言葉に詰まった。しかしミドリを俺の心を見抜いていた。


 ミドリ「早く強くなって彼女達に強いと認められたいんでしょ?」


 アサヒ「う!」


 ミドリ「恥ずかしがる事なんてないわ。誰だってそう思うものよ。でもね、結局初めから強い人間なんていないのよ。」


 アサヒ「分かってるよ。でも結局は才能のある人間や選ばれた人間が強いんだよ。落ちこぼれは結局弱いままだ。」


 俺は俯いた。そんな俺にミドリは優しく語りかけた。


 ミドリ「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 アサヒ「え」


 俺はミドリを見た。


 ミドリ「辛さを知ってるから、痛みを理解する事が出来る。痛みを理解出来るから、共感してお互い励まし合って、優しくなって、輪が広がっていく。

 私はね、人は不完全だからこそ優しくなれると思うの。

 アサヒ、あなたはまだ弱いわ。だから優しくなりなさい。いずれその優しさが彼女達を救うわ。」


 アサヒ「俺に、そんな事…俺に出来るかな…」


 自身の無い俺にミドリは優しく微笑む。


 ミドリ「出来るわ。何故なら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だから彼女達を支えられるのはきっと、彼女達に助けられた人だけよ。」


 アサヒ「ミドリ…ありがとう。なんか元気になったよ。」


 ミドリ「それは良かったわ。あっ!」


 ミドリが忘れものを思い出したかのような顔をして立ち上がった。


 ミドリ「私としたことが…キャラ崩壊してしまったわ…。」


 アサヒ「初めからキャラなんて意識してないだろ。」


 俺は笑って立ち上がった。


 ミドリ「さぁて、速く皆の元へ行くわよ。これからマカナを救わなきゃ行けないんだから!」


 ミドリが笑顔で走り出す。俺もミドリに続いて走り出した。


 アサヒ「うん!!」



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