マカナの行方
― マカナの屋敷内 ―
俺達はマカナの屋敷の中へ侵入したが、辺りは静かだった。代わりにスーツを着た屈強な男達の死体が転がっていた。
ミネコ「あの…勝手に入って良いんですか?警察を呼んだ方が…」
アカリ「駄目に決まってるでしょ。邪神が殺したかもしれないんだから。邪神がいないと分かるまでは駄目よ。」
ミネコ「そ、そうでしたね…」
アサヒ「だったら大人の神術士呼んだ方が良くない?現場の調査って俺達子供がする事じゃ無いだろ。」
その時、皆が俺に対して驚いた顔をしていた。
アサヒ「お、俺何か変な事言ったか?」
俺は手を前に出して慌てていた。
アカリ「ちょっと、のんびり説明してる暇無いんだけど。」
アカリが苛ついて俺を睨む。確かに俺達には時間が無い。マカナの安否が最優先だ。
アサヒ「ご、ごめん。後でスケベジジィに聞いてみる。」
俺は軽く頭を下げて謝罪した。
シュン「邪神とマカナの捜索するという事だが、この敷地は広いし、邪神と遭遇した場合を考えて二手に分かれるぞ。」
アカリ「ねぇ、何でアンタが指示するわけ?だいたい、アンタら二組は神に選ばれたわけじゃないんだから、勝手にリーダーぶるのやめてくれない?」
今度はシュンに噛みついた。だがシュンは笑っていた。
シュン「すまない。別にリーダーになるつもりはなかった。ただ指示を出すのが余りにも遅くてつい言ってしまった。」
シュンがやれやれとしているところを見てアカリが怒った。
アカリ「アンタねー!!」
トモエ「やめなさい二人共!!」
トモエの大きな声にシュンとアカリが驚いていた。
トモエ「今必要なのは団結よ。ここで協力出来なければ邪神に惨殺されるだけ。これ以上輪を乱すなら二人共出て行きなさい。」
トモエが二人を睨みつけて怒る。シュンとアカリは納得いかないような顔をしていたが黙っていた。
トモエ「シュン君、あなたの言う通り二手に分かれましょう。ただ一組と二組に分かれるのは危険よ。一組に戦力が偏るし、二組には探知系神使がいない。だから私が班決めをさせてもらうわ。反対する人はいる?」
ヒマリ「私はトモエに任せるよー。だってこの中ではトモエが戦闘経験あるし、現当主だからねー。」
ヒマリの言う通りだ。トモエは桜山家の当主をやっているから人に指示を出すのに慣れている。だから全員が納得して頷いた。
トモエ「それじゃあ、まずはa班は私とアサヒ、アキナちゃん、アカリちゃん。これはアサヒが戦闘経験が無いから、それに合わせたわ。」
ミドリ「今思ったらトモエ以外全員始まりにアが付いてる。あっ、だから班の名前がaなのね。」
アサヒ「本当だ、気付かなかった。」
シュン「名前言う時たまにどっちか分からなくなるよな。」
アカリ「すみません、コイツらに殴る許可下さい。」
トモエ「許可するわ」
アサヒ・シュン・ミドリ「あーー!!」
急にふざけたので二組全員アカリにゲンコツされました。
ヒマリ「二組は仲良しだねー」
ヒマリは笑顔だがトモエは呆れていた。
トモエ「仲良しはいい事だけどもっと緊張感を持って欲しいわ。さて気を取り直して、b班はヒマリちゃん、ミネコちゃん、ミドリちゃん、シュン君。これはミネコちゃんの精神安定をメインにしたわ。」
ミネコ「えっ、でもアキナさんが私を守ってくれるんじゃ…」
ミネコが不安な顔になり、トモエがすぐに訂正した。
トモエ「そうだったわね。じゃあミドリちゃんと入れ替えようかしら。」
アキナ「あ!でもそれだと私がトモエさんと…」
アキナがトモエを見た。
トモエ「え、私?どうしたのアキナちゃん?」
アキナ「あ、いや、そ、そうだね!ミドリちゃん変わろっか!」
ミドリ(あー、そういう事ね)
アキナの挙動のおかしさにミドリは何かに気づいたのか、ミドリは手を前に出した。
ミドリ「その必要は無いわ。アキナはトモエと一緒にいなさい。代わりに私がミネコを守るわ。それでいいでしょ?」
ミネコ「え?ミドリさんが?」
ミネコが不安な目でミドリを見たが、ミドリはそんな事を気にせず笑いながらミネコの肩に腕を乗せた。
ミドリ「安心なさいな。私の不死鳥がいればあなたは絶対に死なないわ。そう…」
ミドリが目をギラギラさせながらミネコの顔に急接近した。
ミドリ「絶対にね!!」
ミネコ「ギャー!分かりました!分かりましたから!!」
ミネコは泣きながら悲鳴をあげた。
トモエ「それじゃあアカリちゃんとヒマリちゃん、お願い。」
アカリ「分かったわ、出て来て灰狼」
ヒマリ「はーい、出て来てコンコン!」
アカリが灰色の狼とヒマリが黄色い狐を召喚した。
ヒマリ「よーし、コンコン!変化の術!」
ボンッ
コンコンという名前の狐から突然白い煙が出て来て、アカリの灰狼の姿に変わっていた。俺はそれに驚いていた。
アサヒ「こ、これは?」
ヒマリ「コンコンの能力は見たものを何でも変身出来て、変身したものの能力もコピー出来るの。」
アサヒ「チートじゃん…」
トモエ「灰狼とコンコンはマカナちゃんの匂いを既に覚えているから、調査を始めるわよ。ここからa班が東、b班が西の調査を始める。何かあった際はスマホで連絡する事、いいわね?」
一同「了解!」
― a班 マカナの屋敷内調査中 ―
屋敷内に入って廊下から調べていく。灰狼が匂いを嗅ぎながら進んでいき、俺達a班はそれに付いて行っている。
アキナ「アサヒ君、確か何で私達が大人の神術士を呼ばないか分からなかったよね?」
アキナが俺に突然話しかけて来た。
アサヒ「あ、ああ。そうだけど」
アキナ「大人の神術士って…もうサイモリ先生とミツハ先生しかいないの。」
アサヒ「え?」
俺は予想外の答えに頭が真っ白になった。大人の神術士が、わずか二人だけ?
アキナ「神術士はね…20歳になる前に死ぬ人が多過ぎてね、神術士になった人は必ず死ぬと言われてるんだ。国からはサイモリ先生とミツハ先生は珍しいベテラン神術士。貴重な戦力となっていて、邪神の大規模な侵攻や強力な力を持つ邪神相手じゃないと出撃は出来ないの。
だからそれ以外は私達子供が調査をして邪神を退治しなきゃいけないの。」
俺はスケベジジィの言葉を思い出した。
――――――
ただ神は巫女にこだわっている。
神使達にとっては命をかけて戦っているのに神が変なことにこだわっていて戦力を増やしてくれない。
――――――
ふざけやがって、神達は邪神に勝つ気あるのかよ!巫女はおもちゃじゃないんだぞ!
アサヒ「じゃあ、アキナは何で神術士になったんだ?必ず…死ぬと言われてるのに…」
アキナ「それはね、皆の笑顔を守りたいから。」
アキナが笑顔で答えたが、俺は悲しい顔で彼女を見た。
アキナ「そんな悲しい顔しないで…大丈夫!私達は絶対に負けないから!!」
アサヒ「うん」
アキナの励ましに対して俺は返事しか出来なかった。俺は神術士に憧れていたが思っていたよりも残酷だった。神術士とは20歳を迎えられない子供達の事でもあったのだ。
なのに、どうして過去の俺は神術士になりたいと思ったんだ?分からない…
アカリ「灰狼が何か見つけたわ!!」
灰狼が突然障子を突き破って行き、屋敷の中央へと向かった。
俺達も灰狼の後に続いて行ったら、大きな畳の部屋に入った。中央には大きな穴があって、穴の中には螺旋階段があった。
トモエ「おそらく畳の下の抜け穴だったものね。よく忍者屋敷にあるわ。」
アカリ「それじゃあ、皆行くわよ。灰狼。」
灰狼はアカリに頷き、トンネルの階段を降りた。階段は螺旋になっているが、長くはなくて2階ぐらいしか無かった。
降りた先にもトンネルが続いたので俺達は灰狼に付いていく。このトンネルは石で出来ていて、壁に吊るされているランプが道を照らしている。
しばらく歩いていると壊れた大きな牢屋があってその中には壊れた鎖や勾玉、注射器と木っ端微塵になっている肉片が転がっていた。この光景を見て俺達は唖然としていた。
アカリ「何よ…これ…」
トモエ「こ、これは、まさか…」
アサヒ「トモエ、何か分かったのか!」
トモエは息を呑んでから俺の質問に答えた。
トモエ「ええ、これは神仏合体の実験跡よ」




