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崩壊Hand's  作者: ナタデ 小町【・△・】
序章:『崩壊した國』
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5話『片割れ』

「しっかりしろよぉ!お前に死なれちゃぁ!(ミコト)になんて言えば良いかわからねぇんだからなぁ!!!生きろよぉ……!!!」


 廃れた街をただ駆ける。風よりも速く、雷の様な力強さで、ただ一心に掃除屋本部に向かって行く紅鈴(クレイ)。その手が湿り気を帯びる。それが汗なのか、はたまた今抱えている人間の血なのか……風前の灯火が紅鈴(クレイ)(ひたい)に大粒の汗を出させた。


           ◇ ◆ ◇


(ミコト)くぅん……!不意打ちとは……卑怯ではないですか?」


「俺は助ける為なら手段を選ばないのが……便利屋Hand's(うち)のモットーなんで……なぁぁぁぁぁ!!!」


 弾かれた十手を空中掴み取り、そのまま繰り出される十手の連撃。幾度となく金属音を響かせて、跳ね返えされてはまた打ち付け、跳ね返されてはまた打ち付けの繰り返し。


 壁に投げ付けたスーパーボールが自身の元へ返って来る様な連撃に、霧夜(キリヤ)は冷たく最低限の動きで返していた。

 2振りの太刀の峰で次々と弾かれる十手。


「たぁぁぁぁぁっ!!!」


 霧夜(キリヤ)一際(ひときわ)強い一撃が迫った。しかし、霧夜(キリヤ)はその一瞬を見逃さない。絶え間なく続けられた連撃の間に生まれた刹那の隙。


左手からその大きな鋏の片割れを投げつけた。


 死を(まと)った刃が(ミコト)の顔へと牙を剥く。既に体は次の一撃の為に、大きく振りかぶってしまっている。体を動かそうにも、今の勢いを急には止めれない。刃先の恐怖が体を強張らせる。心の内では死のイメージが離れない。


 それでも──。


「ぜってぇ……負けねぇ……!」


 ──(ミコト)は諦めない。


 無理矢理(ひね)られる体。


 構えた腕を前に突き出す。


 無茶な体勢で繰り出される一撃。白い十手の先端が、(はさみ)の刃先と打つかる。


「……魔の手(ハンド)も無しに、この身体能力。話に聞いていた通り、相当の化け物みたいですね?(ミコト)くぅん?」


「いい加減……そのうざったらしい呼び方止めてもらえるか?」


 十手に弾かれた鋏の片割れが、高く飛んで、コンクリートに突き刺さった。


           ◇ ◆ ◇


「おいっ!医療隊!医療隊を呼べぇ!速くっ!!!」


「え……あっ!あぁ!はいっ!!!」


 崩壊した世界に珍しい紅くネオンに輝く建物に駆け込んだ紅鈴(クレイ)。とても巨大な長方形で、ネオンの装飾以外のデザイン性が無いそこは、()()()()()のプレートが入口に掲げられていた。


「これはっ!!!酷い……何故、こんな事に!?」


 すぐに駆けつけた車輪付きのベッドを持ってきた眼鏡の医師が驚いた。それはそうだろう。今尚、地面に垂れ続ける紅。あまりにも死が鮮明に、そこにあった。


「でかい鋏でやられた2箇所貫かれた。その上、悪魔の手(ハンドメイド)にも一度なってる。体も魂にもかなりの負荷が掛かってるはずだ!任せるぞ……!掃除屋っ!!!」


「あ……あぁ!!!なんとしても助ける。……道を開けてくれぇ!!!通るぞぉ!急患が通るっ!!!」


 院内を駆けて行く数名の医師と血濡れたベッドを見送る紅鈴(クレイ)。ひとまずの緊張が解け、筋肉が緩む。されど、まだ肝心なところが解決していない。


(……(ミコト)っ!)


「あっ……あの!!!」


 掃除屋本部を後にしようと一歩踏み出した紅鈴(クレイ)の足が止まる。


「タ……タオル……いりませんか?」


 ガタガタと震えながらに声をかけた少女。急に入ってきたと思ったら、血にまみれていて、さらには今にも死にそうな人を連れてきた。


 さぞ、怖かっただろう。


 それでも目前の恐怖の対象を想い、優しさを渡したのだ。紅鈴(クレイ)は慈愛に目を細め、「ありがとう」とタオルを受け取る。


「さて……無事でいろよぉ!(ミコト)っ!」


 掃除屋本部を背に紅鈴(クレイ)は今駆けてきた道を逆走して行く。太陽が最も高い所から紅鈴(クレイ)の行く道を照らした。

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