16話『向かう足は重く……』
「さてと……!それじゃあ、連れてきてもらった所で悪いけど、世界救う為に必要な相方呼びに掃除屋本部行ってきます!あー……一緒に行きます?」
「あぁ、いえ、行く必要はないですよ。人を送りましたので……」
「えっ?」
ガダンッッッ!!!
粗雑に開かれるドア。余りにも大きく、荒々しい音に命は迷わず十手に手を掛ける。……が、入ってきた人物を見て手を止めた。
そこにいたのは……紅いクセ毛に、目の下に深い隈を持つ男・絡繰良 紅鈴を背負った女性。黄金色商団守銭奴の……泡 芥と同じデザインの黒スーツを着こなしているその女性は、芥を見つけるとニパッ!と笑う。
「絡繰良 紅鈴さん!確かにお持ちしましたよぉっ!!!団長っ!!!」
耳に響く大声。命が見知らぬその女性の名前に気付くには余りにも十分過ぎるヒントであった。なにせ、今朝、自分の耳に大ダメージを与えたその声が、目の前の女性から放たれているからである。
意識が無い様子の紅鈴をソファに雑に投げ捨てる。余りの扱いに意識が無くとも不満なのか、紅鈴から呻き声が漏れ出た。
「ちょ……ちょっと!傷は治ってますけど……!い……いち……おうは!怪我人ですので……!も……うすこ……し……丁寧に……はい……お願いします……」
その女性の裏から更に1人。こちらは見た人物である。紅鈴を想う少女看護師・人看 子々子であった。
わぁぁぁぁ!!!と投げ捨てられる想い人に心配そうに駆け寄って、頭こそ強く訴えかけたが、次第にその力は弱まる。終いには、もにょもにょと聞き取るのも困難なぐらいの大きさになってしまう。
「あっ!!!これは失礼しました!!!……ごめんなさいっ!!!」
素直。その女性という外見からは程遠い子供っぽい無垢な言葉遣い。命は(あっ……シンプル馬鹿なタイプの子だ……!)と胸に閉まっておくのだった。
芥から思わず溜め息が漏れた。
◇ ◆ ◇
「どこ行くの?」
教会を後にする七夕の元へ走り寄ってきた小柄な少女は、抑揚の少ない声で目的を聞く。
「紅鈴を捕まえる……!」
「場所……分かるの?」
「掃除屋の本部にいるらしい。そこら辺にいた阿呆な教徒の言うことにゃ……な?……いつかぜってぇに殺す……紫ィ……っ!」
殺害宣言で自分を保つ七夕は掃除屋本部に向けて、一切足を止めずに走り出すのであった。
「あっ……ちょっと……。……私にも……もう少し意識向けてくれても良いのに……」
再び追いかける構図となって彼の後を真昼が追いかけるのだった。
◇ ◆ ◇
「起きたぁ……?」
「んぁ……つつぅ……!がっ……はぅ……!あ……?命ォ……?胸は痛い……。夢とかじゃ……ねぇよな?」
「おはよう。聞いたよ。人看さんを助ける為に戦ったんだって?……惚れてたよ……あの子」
ザクッ!ザクッ!と揚げたてのカツを包丁で切りながら、背中で語る命。紅鈴はソファに寝転んだままで天井を見つめ言葉を返す。
「変なジョーク言ってんじゃねぇ〜よ!てか……全身まるで傷が無ぇなぁ……?これはいったい……?」
「人看さんが治してくれたんだよ。あの子も掃除屋医療隊の1人だからね。霊術使えるんじゃないかな……?」
「あぁ……お礼言っとかねぇとな……。……何作ってんの?」
「あぁ……それならそこの扉から地下に行けるから、その先にある1番手前の部屋にいると思うよ行ってきな〜!作ってるのはトンカツね」
手慣れた速度でザクッザクッザクッ……と切られていくトンカツ。そんな命が一度手を止め油のついた指先で指す先には扉があった──。
「ん……ありがとよ。行ってくるわ……ん?」
──いつもはない扉が。
「んぇ!?地下っつった!?こ……こって事務所だよな……?いや、違う!?なんか色々と変わってる!?いや……え?やっぱり夢かぁ!?」
「ちが〜う〜よ!あとで話してあげるから。取り敢えず行ってきな?」
「え……えぇ……?んじゃぁ……そう……するわ?」
こんがらがる頭を抱え、紅鈴は子々子の部屋に向かうのだった。




