14話『昔話:空虚の神』
「今日、貴方の身に起きた不自然な展開は全て計画されて行われています。無論、紅鈴さんも……ですよ。……命さん」
自身が狙われる理由。紅鈴が狙われる理由。知らない訳が、分からない訳が無かった。
「空虚の神に魂を喰われ、対価として得た不死の体。そして、その空虚の神の霊気をその身に強く受けたが故に目覚めた魔の手。どちらも下手に扱えば、世界を崩す事など造作も無い力です……よね?」
「狙ったのは……崩壊信仰なんですか?」
眉が寄る。口がへの字に緊張する。哀れむ様な表情が、命の心を動揺させた。
「合っています。合っていますが……それだけでは正解とは言えません。お話致します。1から。何故、崩壊信仰が絡繰良 紅鈴を狙うのか?何故、引金薬がこの國に広められたのか?そして、何故、黄金色商団守銭奴が、貴方を守るのか?その全てを……!」
◇ ◆ ◇
この事件の始まりは、貴方がかつてこの國を救った所から始まります。
「……紅鈴っ!」
貴方がまだ齢10歳にも満たなかったあの日。先代の便利屋Hand's社長である十 手綱がまだ生きていて、その唯一の社員として神成 生命がまだ所属していた頃の話。
貴方は紅鈴さんとソレの間に立ちました。本来、ソレは……空虚の神は……絡繰良 紅鈴の魂を食べるはずでした。ですが……貴方がその代わりになったんです。
「……ぁ……ぁあ……!ミ……コ……」
絡繰良 紅鈴は、孤児院に拾われた。よく、ありふれた環境の子供でした。……ただ、その孤児院が普通では無かった。
「なっ……ぁっ!命ォォォっ!」
「……!?命くんっ!」
空虚の神。神とさえ呼ばれるあまりにも強大な力を持ったその霊気は、やがて魂を作り上げ、意志を持つ霊気から生まれた生物。霊気生物として祠に封印されていました。
そして、とある孤児院は……いえ、孤児院と名乗るその集団は、その空虚の神に目をつけた。目的は、思想の強行。この世界を崩壊させる。その為に。ここまで言えば分かると思いますが、その集団こそ、現在の崩壊信仰です。
「あぁぁぁ……ぐぅ!!!ぁぁぁ……!!!くれてやるっ!僕の魂ぐらい……くれてやるっ!!!|僕の!!!大切な……友達にこれ以上……!手を……!!!出すなぁぁぁぁぁ!!!!!」
絡繰良 紅鈴はその貴重な実験台でした。元より人数倍強い霊気を持っていた紅鈴さんはその身を、魂を、みるみるうちに空虚の神へと適応させていきました。
ですから、絡繰良 紅鈴が食べられるはずでした。空虚の神は本来の魂を取り戻そうと貴方に宿った霊気を魂ごと喰らいはずでした。ですが、結果として、食べられたのは貴方です、命。貴方が、紅鈴をかばい、神の前に立ちふさがった。それが大きく世界を変えた。
しかし同時に、大きな問題を起こします。
「ぐぅぅぅぅぁぉぉおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
元より霊気のみで構成された体は我々人間よりも、うんと霊気に敏感でした。その為でしょう、命の魂を喰らい、その身を満たした空虚の神は予想外の挙動を起こしました。
不純物の混ざったその体は石へと変わり果て、ついぞ動く事はなくなった。ただ、明確に多大な霊気をその身に宿して。
そして、十 命という少年に不死の病という呪いを押し付けて。
ここまでは……9割がたは貴方もよく知る。貴方の昔話です。さて、ここからが、今回の騒動の真実。この國が今まさに崩壊を迎えようとしている理由です。




