表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
崩壊Hand's  作者: ナタデ 小町【・△・】
序章:『崩壊した國』
1/20

0話『手を──』

序章:『崩壊した國』開幕


 白き月光(げっこう)が差し込む廃ビルの中。

 壊れた外壁から空を見上げる者が2人。揺れる白髪の青年が、美しい黄金(こがね)に手を伸ばし、その手の中に確かに(つか)んだ。


「良い夜風だねぇ……。今日みたいな落ち着いた日くらい……何も起きないでほしいんだけど……」


「無理だろぉ……。犯行予告まで届いてんだぞ……?」


「……あっ。サボる?」


「いや、仕事仕事!」


「はぁ……休みほしぃ……!」


 夜風を浴びて(なび)く白髪と紅髪。静かな廃ビル街に響く笑い声。天と地を繋ぐそれ等の建物には一切の光が(とも)っていない。


 当然だ。何故ならここは──。


 ダダダダダンッ!!!


 響く銃声。

 安寧(あんねい)静寂(せいじゃく)は、悲しい事に無慈悲に奪われる。光の無い廃都市に痛いほど輝く爆発物。


「あ〜……!始めやがったぁねぇ!……行くか」


「おぉ……。切り替えはや……!」


「まっ!これでも社長ですから〜。んじゃ!……よろしく〜」


 紅髪を見つめ、背中から落ちる白髪。


「んぁっ!?ちょ……!待ってぇぇぇ!!!」


 遅れて外壁から飛び出す紅髪。


 先程まで居た場所、その高さ10階以上。

 普通の人なら、まず間違いなく落ちたら死ぬ高さ。

 その高さを今まさに落下しているというのに白髪の顔には一切の恐怖がない。(むし)ろ遊園地のアトラクションを楽しむかの様な笑顔だ。


 落ちる中、白髪が紅髪の手を握る。

 紅髪は口を緩ませ、小さく言葉を(つぶや)いた。


「──【傀儡傀儡(クグツカイライ)】」


 その手から突如として現れる無数の紅い糸。紅髪が手を突き出す。伸びていく紅い糸。その先には、かつてネオンカラーに輝いていたであろう看板が1つ。看板の根元に紅い糸は付着し、地面スレスレで2人を宙に浮(とど)めた。


 2人はその脚で、黒きコンクリートを歩いていく。目前の騒々(そうぞう)しい現場に向けて、一歩一歩、確実に。


 腰から白い十手を引き抜いて。


 片手に紅い糸を絡ませて。


 2人は静寂(せいじゃく)(ひずみ)に向かって行く。




 ()びた臭いが支配する(から)の街。


 (ルール)正しさ(モラル)を失った荒れた場所。


 人が人ならざる力を得て、混沌に染まった箱庭。


 何もかもが過去になった、全てが壊れた退廃都市。


 そう、ここは。


 ──クズレの國。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
最初の数行で引き込まれました!頭の中で想像しやすい、尚且つ美しい言葉を使った表現がとにかく素敵です!紅髪と白髪の今後が楽しみです!応援してます!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ