第九十話
カランカラン……
「……いらっしゃい。四日目だね」
「ああ。クリアするつもりだからな」
「今回は、これ……」
学校が終わり、すぐさまFFOにログインした。そして、真っ先にレヴィアタンの店に行ったのだが、今回買えと指を指されたのは紫色したビー玉。なんだこれ。
「……『災厄の記録』……二千万ゴールド」
「あいよ。で、これどうやって使うんだ?」
ちゃんと二千万ゴールドを支払い、商品を受け取る。透き通った紫だ。綺麗だなーと思いながら見ていると、レヴィアタンが説明してくれた。
「この世界に存在する、災厄シリーズ。その全ての効果を……知る、見ることができる」
「見る……? どうやって?」
「……自分で考えて……あと……明日は四千万でいいよ」
「それでも高えよ」
残金を見ながらため息をつく。五千万貰ったはずなのにな……なんで足りねえんだ……。
にしても、『災厄の記録』ねぇ……ほんとにどうやって使うんだ……。プロジェクターはねえよな?
「とりまアイテム関連のことはユカに聞くとして、まあ、次のイベントへの準備かなぁ……」
今は極力金を使わず、レベル上げの方に専念している。明後日にはもうイベントだしな。
あ、そういえば今日はアスカとクリスのスキルを見せてもらうことになってるんだった。向こうがログインしたら呼ばれるのかね?
と考えていると、背後から声がかけられた。
「おー、カナデやん。そや、久しぶりに一緒に狩りに行かへん?」
「タキオンか。そうだな。確かに最近お前との交流が減ってたし……行くか!」
「それでこそカナデや。どこ行く? ゆーてこの後用事あるからあんま長いことログインは出来へんのやけど」
「そうだな……俺もこの後いつ呼び出されるか分かんねえから、すぐ切り上げられる場所がいいな。『ガルミヤ遺跡』とやらにでも行ってみるか?」
「ありやな。よし、行くか」
はい。というわけで、タキオンと一緒に狩りをすることになりました、と。普通に楽しみだな。俺もタキオン程とは言わんが、AGI振りだし。共闘は楽しい。
♢ガルミヤ遺跡
「ほー、ここが『ガルミヤ遺跡』か。初めて来た」
「ここに通い続ければ立ち回りが洗練されてくる、って聞いた。なんか出て来るモンスターが無駄に高いAGIで逃げ回るんだってよ。それも、武器無効だから肉弾戦主体で」
「つまり、銃弾もナイフも一切通さん肉体のモンスターを、肉弾戦主体で倒せっちゅーことか? それも、相手は逃げるやつを」
「よくできました。そういうこった」
銃を撃ち合う戦争ゲームで、まさかの肉弾戦が求められるんだぜ。やばくね?
「まあ、やろうと思えば魔法で攻略できなくはない。魔法耐性も高いらしいが……それでも捕縛程度なら何も問題は無いはずだ。あとは、一部のスキルで物量ゲーかな」
「ほぁー」
間抜けな面で突っ立っているタキオンを置いて、モンスターが出現するステージに侵入した。すると、二足歩行の猿のような奴が出てきた。ああ、いかにもスペック高そう。
『ウボア!』
ヒュンッ! と風切り音がするや否や、背後に回り込んでくる猿。全身を落とし、右足薙ぎ払いによって脚に攻撃するが、少しふらついただけで大したダメージは見えなかった。
「確かに速いな。まあ、モンスターにしては、やけど」
「見てねえで手伝ってくれると助かるんだけど。早く入ってきてよ」
「仕方ないなぁ」
そこでタキオンが侵入。すると、俺の背後からもう一匹の猿が現れる。ちょっと待てよ。
「おお、これ一人に付き一匹なんか。じゃ、がんばりーな」
「いや、何で銃禁止を一人で抑え込めると思ってんだ。【憤怒】【怠惰】【強欲】」
大罪シリーズを解放し、ステータスを上げる。肉弾戦主体だからな……ステータスがものを言う。
「ほー。なんか増えとるな、カナデ。ま、俺も成長しとるんやけどな。【加速】【超加速】【亜音速】」
その瞬間、右側で俺の動きを見ていたタキオンが消える。は? と声が漏れてしまった。そして、唐突に猿の背後に現れ、回し蹴りをかましていた。
「んー、やっぱSTRが足りんなぁ。そっちにもステータスを振るべきやと思うか?」
「ああ、思うね! スピードだけじゃ限界が来るだろ!」
「と、思うやんか。けど、このゲームには慣性が働くらしいやん? それを強化するスキルを発動すればええんや。【突進】」
さらに高速で動くタキオン。そして、姿が掻き消えると同時に猿が吹き飛ばされ、消滅していた。こっちはまだまだ戦ってるっていうのに! AGIに振りまくったらSTRも強くなるとかありかよ!?
「ええやろー。因みに、加速系スキルはもう四つあんねん。最終奥義的なやつやな」
「そいつはいいなァッ! 【災厄伝播】ッ!」
STR二倍を発動し、怒涛のラッシュをかます。すると、十二発目でようやく倒れた。何で銃と魔法の世界で肉弾戦なの……? でも、ランカーの中には近接戦闘主体の人がいるらしいしな。ナイフじゃなくてボクシンググローブを使っているらしい。なんで戦えるんだよ。
「にしても、なかなかに面倒くさい敵やなぁ。時間も労力も掛かるやん」
「そんなあなたに朗報です! なんと、遺跡の奥地には宝物が眠っているらしいのですが、皆AGIが足りずに断念しているらしいです! さあ、頑張りましょう!」
「なんやそのキャラは。にしても、宝物か。AGIが足らずに断念っちゅーのは、どういうことや?」
「いやー、詳しくは知らないんだけど、壁が迫ってきたり、溶岩が上がってきたり、敵の妨害があったり、みたいな感じらしいよ」
「それはそれは。楽しそうやな」
「ま、そこら辺はお前に任せる。俺が攻略できるとは思えんしな」
「一度やってみればええやないか。死んだところで現実で死ぬわけやない」
「えー、0デスの意地が……」
まあ仕方ないか。と腹をくくって遺跡の奥地に行くことにした。にしても、宝物って何だろうな? そもそも、スキルとか装備の場合って宝物って言わないし。ま、手に入れたら分かるかー、と呑気に洞穴に突入した。
「ん? クエスト……?」
「どうした? なんかあったのか?」
「いや……特殊クエスト発生っちゅーインフォが届いてな。ええっと……? 『韋駄天への道』やと」
「これをクリアしたら宝物が手に入るって意味かね?」
「……あ、違うたわ。俺の持っとる装備が原因やった。この耳飾りなんやけど」
「お前もか……」
最近、耳飾り系のスキルクエストがどんどん解放されている。アスカとクリス、今度はタキオン。実際に見てみないことには何とも言えないが、最初は封印されているスキルというわけで強そうだ。
「はい。じゃあ一人で行ってきな。これ、二人以上だとダメなやつだろ」
「えー……」
「念には念をってやつだ。後ろで見てっから、やって来い」
「はぁ~……しゃあない。勝手に帰んなよ!」
♢タキオンサイド
「というわけで一人で来たが……実に虚しいもんやで。こんな場所で一人やなんて」
また、はぁーと溜息を吐くタキオン。だが、無情にもクエストは始まる。最初は、どんどん沈む岩を伝って、向かいの足場に行くもの。
「そんなん造作もないやろ。見とれや」
シュタッ! シュタッ! と、スキルを一切発動せずに素のAGIで攻略するタキオン。まだ岩は半分以上残っていた。
「こんなんで攻略できんやと? 情けない奴らばっかりやないか」
ハンッ! とステージを煽り、次のステージへ行く。今度は狭苦しい空間がタキオンを待っていた。
壁が近く、天井も低い。警戒に走るのは難しそうだ、とタキオンは思う。
「これは……壁が迫ってくるっちゅー奴やな」
そしてまた駆けだすタキオン。天井が邪魔で上手く走れなかったので、仕方なく【加速】を発動した。これのおかげで、多少走り方が汚くても余裕をもって駆け抜けることが出来た。
「次は……ああ、純粋に速度がないと越えれん系やな」
目の前にだだっ広い空間が広がっており、その間にいくつかの赤い線が引かれている。その上に10km/hや、50km/h等、速度が表記されていた。恐らくだが、この速度をクリアしなければこのラインを超えることはできないのだろう。
「最高速度が400km/hやと? それはそれは」
タキオンが軽くアップし、首を回し始める。その瞬間、空気が変わった。
「嘗められたもんやな」




