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第八十五話

マズい……。最近書いてなかったせいで、少し忘れかけている……。間違いがあったり、足りないことがあったら是非指摘してください。

 それからもう少し進んでいると、今度は開けた空間に出た。上を見ると、天井ではなく空。え、外に出たのか?


「ん~? 外に出たわけじゃないみたいねぇ~。ほら、見てぇ~」


 ココ姉が上方向に槍状の氷を飛ばす。すげえ、見やすいように赤く染色してある。

 とてつもない勢いで飛ばされた氷の槍は、どこまでも進む……と思っていたが、やがてどこかに刺さった。空に。ああ、ペインティングか?


「色が塗ってあるわけじゃないみたいだねー。投射かな~?」


「転移をするでもなく、わざわざ洞穴の中にこの空間を投影したってことですか? 凝ってますね。運営も」


 だだっ広い空間だ。外だと勘違いしそうになるが、時折見える壁の岩石がここは洞穴だと思い出させる。ただ特に罠も無いので、ずんずん進む。五分くらい経った頃だろうか。変化があった。道が狭くなり、気温が下がる。


「……ん? 壁が……鏡になった?」


「うわっ、ところどころ自分の姿が映ってるねー。鏡の迷宮みたい」


「でも、鏡の迷宮ほどくねくねしていないので、簡単に抜けられそうですけど」


「さっきの空間が何も無かっただけに、ちょっと不安よねぇ~。戦闘とかは始まらないのかしらぁ~?」


 環境の変化に不安を持っていると、今度は音が聞こえる。ビィン! ビィンッ! ビィンッ! と。等間隔というわけでもない。なんだ?


「何この音……? どこから聞こえてるの?」


「…………ん? この奥か? ってか、近づいて来てね?」


「「「え?」」」


 すると、目の前にレーザーが現れる。音の正体はこれか! レーザーが鏡に跳ね返りながら接近していたのだ。角から途端に出て来たので、俺たちは回避行動がとれない。計十五本のレーザーを、どう対処するか。


「『無量メタ―――」


「任せて! 【衛星の盾】!」「【防御形態】“抗”」


 神崎家の前に立ったのはアスカとカリノ。カリノはまだ分かるが、アスカは耐えられないだろ!? と思っていると、俺の知らないスキルが出てきた。なにそれ。

 どうやら、『夜空シリーズ』の頭装備、『夜空ノ集束』についているスキルであり、使用者の周辺に自動で防御してくれる衛星を展開するようだ。クソ便利じゃねえか。


「あー、こういう不意打ちが多いのねぇ~、このダンジョン。嫌だわぁ~」


「精神を破壊しようとして来るタイプのダンジョンか? 集中力を削って」


 鏡の迷路は厄介そうだ……そう考えていると、またもビィン! ビィン! が。面倒くさいな。今度は俺が行く、と言いながら最小限の『無量メタル』で防ぐ。あまり時間は掛けたくないな。こんなところで。


「んーと、私は衛星がある限り防御手段を損なうことは無いかな。無くなっても、『隕鉄』って素材をこの衛星に与えれば回復するし」


「スキルにも回復の概念あるんだ。変なスキルだな」


「私も外的要因に左右されないので、使いやすい防御スキルだとは思います。ただ身一つなだけで」


「いやカリノは高いDEFがあってこそだろ。俺がそれ使えって言われても、使いこなすのは無理だしな」


 すると、意外とあっさり鏡とレーザーの間を抜けた。さっきからなんなんだ? ここ。言うほどピンチは無いが……。ヌルゲーか?


「あらぁ~? なにか張り紙が……」


 そこで、ココ姉がある張り紙を見つける。それは、俺達をキレさせるのに十分なメッセージだった。


『ここまでよく来たね。さあ、振り返って。何が見える? 君たちが出てきた氷鏡(ひょうきょう)とレーザーの大迷宮だね。でも、大迷宮の割にはすぐに出られたと思わないかい? そう! まだ君たちはこの迷宮の十分の一も攻略していない! ただの一本道を歩いて来ただけだ! あとは、各所に置いてあるオーブを回収して、彼女の封印を解いてあげてくれ!』


「……は? 最初っからそれ言えよ」


「一度攻略したと思ったからぁ、すっごく嫌だわぁ」


 ココ姉が、手に持っていた張り紙を氷漬けにする。鋭利な武器の出来上がりだ。背後ではアスカが壁を破壊出来ないかを試している。怖いからやめて。


「『ウヤマエ』って割には随分と虚仮にしてくれんじゃねえか……尊敬は何かしてくれた奴にだけ向けるんだよ。ってか、決めた。絶対に正規の方法で攻略しねえ」


「っていっても、実際にオーブってのを探すとなったら、時間かかるじゃん。どうするつもり?」


「全部壊す。さっきアスカ試してたろ? どうだった?」


「えっと、あれ一応氷だから破壊は出来るよ。でも、耐久性能が高いから全部壊すのは面倒かな。それに、全部が繋がってるわけじゃないだろうし」


「といいますと?」


「ほら、迷路って基本、外側の壁を構成する壁と、それから分岐した壁、それと内部で独立した壁の三種類あるでしょ? 全部壊すのはちょっと……って思って」


 ふむ……鏡の特性を持っているとしても、この壁の本質は氷。


「……よし、ココ姉。共同作業だ。今のを聞いてやれそうだと思った。だってココ姉は氷を破壊できるもんな?」


「あまりにも範囲が広大だったらMPが足りないんだけどぉ……」


「ここにユカ特製MPポーションがある。さあ、グッと行きましょうグッと!」


「……分かったわよぉ。【絶壊の―――」


「ちょっとまって。確実に、全部(・・)壊すから。内部で独立してる壁も」


「「「え?」」」


「二人とも、離れておいてくれ」


 俺も俺でMPポーションを飲む。この大迷宮全てを覆う水は流石にきついからな。

 おっと! みんな【業渦災炎】で呑み込めばいいと思ったか? それが無理なんだな。【業渦災炎】の範囲って、思った以上に広くないし。近~中距離の敵を全て薙ぎ払う用のスキルだから。


 というわけで


「【災獄旧海】“波”!!!」


 ドドドドドドドドッ!! と、足元から津波が大迷宮に襲い掛かる。おそらく、モンスターの一匹もいない空間に大規模殲滅スキルを撃ったのは俺が初めてだろう。それも、迷路を破壊する目的で、だ。


 迷路全てに水が襲い掛かった瞬間、その水もまた全て凍った。ココ姉が凍らせたのだ。俺が一切抵抗しなかったというのもあるが、これほどの範囲、それも災厄シリーズの津波を一瞬で凍らせる猛者が、このゲームに一体何人いるだろうか? リエでさえ、【世界天幕】で逸らすしかないというのに。


「つ、疲れるわねぇ……あと、仕上げに―――【絶壊の業氷】ぅ!」


 パキンッ!! パキッ! パキパキッ! と、小さな音を鳴らしながら全ての氷が破壊される。そして、その場に残ったのは紅、蒼、山吹、翠の色をしたボウリング球程度の大きさの球体だった。


「あれがオーブですかね? なら、早く回収してしまいましょう!」


「あ、これ以外と軽いわ。見た目に騙されたけど」


「え? なんかボールが寄ってきてるんですけど……」


「『掌握魔手』。クリスの持つ『全能神シリーズ』の手の装備だ。これについてる【支配者の権能】が念力だからな。軽めだったら俺程度のMPでも動かせる」


「……ん? あれ? ユニークシリーズなんじゃ……世界で一つだけだよね? なんで持ってるのー?」


「買った」


 俺に大罪シリーズのやつらについて聞かれても……。ちょっと世界の法則を超越してるし……。でも、これでこの大迷宮は攻略したかな? と思っていると、頭の中に声が響いた。


『へーっ! 本当にあの大迷宮を攻略したん……ん? あれ? 迷路が無くなってる? どういうこと!?』


「全部ぶっ壊してオーブだけ入手した。文句あるか?」


『えー? ちょっとさぁ……殺すよ? そんなことするなんて……』


 プツッ。という音がした後、何かが急速に接近している音がした。ゴオオオオオオオオッ!! と。俺たち四人は身構え、音のする方を見た。すると、巨大な白い狐がその場に飛び降りてきた。衝撃が伝い、地面が揺れるが、その狐から目を離さない。溢れ出るオーラが余所見を許さない。


「……へえ。このダンジョンを用意したのがお前みたいな狐なんてな。ってか、喋れるんだったら平和的に解決しよーぜ。うんうん。ラブアンドピース。大事大事」


「……カナちゃん。いつでも最大火力の攻撃を放てるようにしてあるけど、普通に無理かもしれないわぁ……どうしましょ」


「いざとなったら私が皆さんを守ります。その後は知りませんけど……」


「この狐、かなり速そうだねー……。エイム付けられるかな……?」


 それぞれ備えていると、狐が口を開いた。見た目に会わない口調で。


『いや、本当に殺すつもりはないから大丈夫だよぉ!? というか、まだ(・・)この世界に干渉することができないし~』


「「「「……え??」」」」


 なんとなくリエ味を感じながらも、ひとまずは警戒を解く俺達であった。

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