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第七十九話

 ココ姉からのメッセージを受け取ってから、カナデは嫌々ログアウトした。マジで嫌な予感しかしねえ、と。だが、メッセージの文面からして、引越しの手伝いをしてほしい、といったものだ。


「まあ、うちの近くに来ると言ってもうちに来るわけじゃないし……というか、凛とか沙紀姉は学校どうするんだ? 凛は高校、沙紀姉はまだ大学生のはず……」


 ベットで頭を掻いていると、ピーンポーン! とインターホンが鳴った。誰だ。


「今行きまーす」


ガチャッ


「あ、居たぁ~。私達よぉ~、かなちゃん。もう来たのぉ~」

「えっと……ちょっと早かったよね。ごめんね」

「お兄ちゃんの荷物も、運び出します」


「……は?」


 ちょっと待て。どういうことだ。俺の荷物も運びだす? は? どういうことだよ。そう慌てている俺を無視しながら、従妹ーズは業者を招き入れた。業者はここに住んでいる俺が困惑している様子に困惑しているが、依頼人に従って家具を運び出す。かなちい。


 今俺が住んでいる家はココ姉が買ってくれた部屋だ。そのため、退去しろ、と言われたら大人しく受け入れるしかない。


「サプライズ大成功ぅ~! 良かったー。私たちのサプライズが成功して」


「そこの次女。姉の暴走を止めるんだ」


「いや、いきなり奏の引っ越しを伝えるのは流石に可哀そうではあるけど……私たちがいいからいっか!」


「チッ。この次女頭イってやがる。三女。姉二人の暴走を止めろ」


「いや、私も同じ意見なので……」


「ダメだこの三姉妹」


 一種の諦めの境地に至りながら、俺の部屋が綺麗に片付けられるのを見ていた。大体の物を運び出し終わったころ、業者さんが棚を持って行こうとした。その中に入っているものを思い出し、慌てて止める。


「ちちちちょーっと待ってもらえませんかァ!? ちょっとだけ。ちょっとだけですから……」


「はい? どうされたんですか?」


「いや……中にあるものを取り出しておこうかと思いまして」


「ああはい。構いませんよ」


「「「???」」」


 何を取り出す!? と興味津々の三人からの視線を背中でカバーしながら、中に入っているものを箱に移し替える。そして、暗証番号式の鍵を掛けると、業者さんに持って行ってもらっていた。


「えー、何を取り出したの? 見せてくれてもいいよね?」


「そうですよ、お兄ちゃん。私たちの間に秘密は無しですから!」


「いや、ありだろ。何で全て知ろうとしてんだ。止めろよ」


 本当にやめてほしい。人間なのだ。秘密の一つくらいあってもいいだろう。


「あらぁ~? もしかして、エッ○な本かしらぁ~? もう、そうなら言ってくれてもいいのに~」


「ハァ!?」


「ええっ!? そうだったの!? か、奏のエッチ!」


「お兄ちゃん……こんなに可愛い従妹がいるというのに……それはよくないです」


「だからなんでだよ」


 あらぬ疑いを掛けられて泣きそうになってしまう俺。酷い。冤罪だ!


「まあそれはいいとして。俺は何処に住めばいいんだ? 何も言われてないから困るんだけど……」


「え~? ほんとぉ~に分からないのぉ? 私たちがこっちに越してきたのよぉ?」


「お兄ちゃんは、頭いいのに馬鹿ですよね」


「えへへ~。私たち、あのマンションに住むんだぁ」


 そこで、沙紀姉に促され、窓から外を見る。指で刺されていた場所は、とても高いマンションだった。あのタワマン……確か……。


「え゛っ……月額五百万って噂のやつ……?」


「実際は三百万だったわよぉ~? この周辺だったらあそこが綺麗で広かったから、あそこにしたのぉ~」


「うーん。三百万でも十分に、いや、異常に高いよね。心姉(ここねえ)の金銭感覚がおかしいだけで」


(ここ)お姉ちゃんって、年収はいくらくらいなんですか?」


 奏と沙紀と凛の視線が心響に向く。心響は、「あらあら」と言った笑顔で誤魔化そうとしていた。


「たしか、二年くらい前に年収二千万を超えたって言ってたよな? 大学卒業後二か月辺りで」


「え? でも去年五千万超えたって聞いたんだけど……」


「そういえば先月、「大当たりだわぁ~」って言ってましたよね。今はいくらくらいなんですか?」


「……えっとぉ~、お金の話は、止めない? 人間関係の悪化の元はお金よぉ~?」


「「「吐け(いてください)」」


「うっ」


 珍しく心姉が詰まる。歯切れが悪いな。年収を知られるのがそんなに嫌なのか? いやいや、別にいつもは普通に言っていた。どういうことだ?


「だってぇ~、安定しないじゃない。もしかしたら明日にでも株が大暴落してマイナスになるかもしれないしぃ~……迂闊に年収は話せないわよぉ~」


「今まで心姉が読み間違えたことあったっけ? ってか、最近投資以外の稼ぎ方も出来たんだろ?」


「まあ、それはそうだけどぉ……」


 曰く、様々な会社の社長の相談役らしい。明確な役職名は無いが、実際にそれで成功しているのだから心姉はすごい。


「えっとぉ……二億ぅ……?」


「「「……えっ……」」」


 ね、年収二億、だと……!? んなバカな……。身近にとんでもない大富豪がいた……。怖い。

「それはそうと」と話を逸らすように心姉が新たな話題を切り出す。


「もう全部運び終わったみたいよぉ~? さ、移動しましょうよ」


「いや、俺どこに住めばいいか聞いてないんだけど。今強制退去させられただけで」


「あ、そっか! 私たちがあのタワマンに住むってことしか言ってないよね。ごめんごめん。私たちは先に行っておくから、凛と一緒に来てくれる?」


「え? ああ、まあ、案内してもらうけど……」


「分かりました。伝えておけばいいですか?」


「んー……着いてから!」


 何かのサプライズが始まるのでは、と身構えたが、まあ、だからどうした感があったのでスルーしておく。それよりもあのタワマンに行ってみたい。人生であそこまで金稼げることないだろうし。それならば一度くらいは拝んでみよう。


「ええっと。そういえば最近お兄ちゃんは、FFO、どうですか?」


「どう、って……。楽しんでるけど」


「それはよかったです。〈魔王軍〉の皆さんは元気ですか? カリノから新しいユニーク装備を手に入れたと報告がありましたけど」


「ああ。みんな異常に強くなってる。王の立場が狭くなってくるほどにな。嬉しいんだが悲しいわ」


「やっぱり装備の質次第でプレイヤーの力は大きく左右されますからね……。でも、お兄ちゃんが負ける姿はイメージできないです」


「俺だって負けたことはあるさ。逃げ出したことも。なんなら、アイクに一回負けてるしな。正面から」


「ええっ!? あの悪名名高いアイクに!?」


「あいつウザいけど強いから」


 そう。あいつは俺の『魔王シリーズ』と同等の性能を誇る、『勇者シリーズ』を持ち、さらにそのうちの【勇者顕現】を解放している。全力でぶつかったら勝てる気がしない。ってかさ


「なんか、『魔王シリーズ』の性能が低いと思うんだよな……ほら、手の装備が胴体と一体化してるからさ、ステータスの上昇幅が小さいんだよ」


「私の『機械王シリーズ』は、胴体、手、足の三つですね。あ、頭もありますけど、あんまり使っていません」


「なんで? 使えばいいじゃん」


「性能は高いんですけど、見た目がちょっと……。まあ、いつか見せてあげます」


 クリスの『全能神シリーズ』を除いて、『魔王シリーズ』は最上位と言われている。そんな装備が、あれだけの性能なのか? と、少し訝しんだことはある。

 ……どこか別のクエストで進化するのかね。アスカの装備みたいに。


「あ、ここです」


「うっはぁ……たっけぇ……きっれぇ……すげえなぁ、こんなとこに住めるなんて。しかも三人」


「あー、それなんですけど……」


 キョロキョロと凛は辺りを見渡す。何かを探しているようだ。すると玄関から心姉と沙紀姉が出てきた。救いを求めるような顔で二人に縋りつく凛。


「あ、着いたのねぇ~。お疲れ様~」


「今お兄ちゃんとFFOの話をし終わったところなんですけど……」


「あ~、丁度良かったね。じゃ、そろそろ言おうか!」


「ええっとぉ~、このマンションなんだけど、私が買ったの…………四人部屋なのよぉ~」


「へえ~。誰が来るんだ?」


「かなちゃんよ?」


「………………ゑ?」

まあ、『全能神シリーズ』は、運営達にも想定外ですし。あと、『魔王シリーズ』はピ―――――を持っていて、ピ――――の可能性とピ――――の可能性があるんですよね。それに、ピ―――――――――の楔は既に打ち込まれてるし、最強(笑)では無いです。

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