第七十七話
ごめん。学校が休みになってたから気付かなかったけど、今日月曜日か。
翌日、俺はレヴィアタンの店で買い物をすることに。『嫉妬』クリアしなきゃ。
「あ……いらっしゃい。本当に来たんだ……」
「あ、はい。何を買えばいいんすか?」
「今日は……これ……」
指を指されたのは、一本のポーション。効果を見てみると、【状態異常無効】だった。マジかよ!?
俺がゲームを始めたての頃にユカから貰ったポーションと同じだ。いや、効果時間が十分とこちらの方が長いため、ユカをも凌駕している。値段は五十万ゴールドだ。高いけどやっす!?
「はい。購入」
チャリーンと、大量のゴールドが流れてゆき、一つのポーションを手に入れる。ユカが味方という時点でこのポーションを買う意味はほぼ無いし、もう少し言えば俺は大体の状態異常を持っているので、このポーションはマジで意味が無い。
「じゃあ……また……明日も来てね」
「任されたし」
店を出て、スキルショップへ向かった。理由や欲しいスキルがあったわけではないが、俺の持っているスキルが少ないと思ったからだ。何かあれば、というわけだ。
【災厄の記憶】を除き、直接戦闘に関連するスキルは、【ピンポイントアタック】、【権能:迎撃】、【憤怒】、【怠惰】、【衝撃緩和】。それに、最近進化した【隠匿Ⅳ】くらいだ。むしろこれまでよく持った方かもしれない。
クリスの戦闘を見て、アイクとの戦闘を経た今、これだけでは足りないと思ったのだ。いや、クリスは多すぎるけれども。
災厄シリーズにおんぶにだっこ状態だったな、と思った俺は、もっと一般的なスキルを手に入れようと思ったわけだ。
チリンチリン……
「いらっしゃいませらるらせりー!」
「なんて?」
入店直後からキャラの濃い人に会ってしまった。なんだこの女性NPC。よく噛まねえな。
「いやー、うちの店の掟なんですよー。この挨拶の仕方が」
「そーなんすか。大変ですね」
「提案したのは私です!」
「全責任はお前にあるのか」
そんな会話を繰り広げながらも、店内に目を送る。第一階層とは見た目が一新されており、より現代の店に近づいた。探しやすそうだ。
すると、店の奥から一人の少女が出て来る。
「んー? あれー? カナデ君?」
「ん? コルネか?」
「そうだよー。って言っても、名前変えたけどねー」
「あ、変えたのか。今の名前は?」
「アスカ、だよ。リアルと同じにしちゃった。皆みたいにね! ほら、ココネさんが入ってきたら、ココネとコルネで困っちゃうじゃん?」
「確かに」
よく考えてみると、俺、リエ、アオイ、クリス、ココ姉、サキ姉みんなリアルネームか。身バレしそうだ。ユカは優華なのでギリギリ違う。
「ところで、お前のリアルネームは? 俺何だかんだ知らないんだけど」
「えー? ひどくない? 新宮 飛鳥だよ。まあ、覚えてることは期待してなかったけど」
「それはそれでひどいがな。ところで、コ……アスカは何用でここに?」
「あー。今、〈魔王軍〉のみんなが異常な速度で成長してるじゃん? だから、私も私の武器を磨こうと思って」
「アスカの武器……そのエイムか? 超遠距離狙撃も成功させるくらいだし」
「そうだねー。でも、それは近距離には対応できないんだよね」
そもそもスナイパーが近距離で戦おうという発想がおかしいと思うのだが、そこには口を出さない。モチベーションは落とさせない。
「でー、いい感じのスキル無いかなーって」
「いい感じのスキルって言ってもなァ……俺そこら辺には詳しくないし。近距離に対応できるスキルって言っても……」
「だよねー……。あ、カナデ君。発電機系統のスキル見つけたけど、買ってみる? 『白龍』を強化できるかもしれないしねー」
「マジで? 案内してくれね?」
三番目の本棚に向かい、一つのスクロールを取り出す。そこには、【効率強化Ⅰ】と書かれていた。
「【効率強化】……なるほど。伝導率を高めるみたいな感じか? 『白龍』へのつけ方は分からんが、一応買っておこう」
「良かったー。じゃあ、私のも探してくれるよね?」
「チッ。まあ、欲しいものの一つは買えたからいいよ」
それからスキルショップをうろうろとしたが、スナイパーが使う近接用のスキル、という漠然としたものでできることは無かった。何も見つからねえ……。
何個か提案した物もあったが、「えーっと……流石に、馬鹿なの? としか言えないかな……」と言われてしまったので却下となった。【硬化】と【防御形態】だぞ? カリノも使ってるし、いいじゃねえかよ。
「うーん。今日は諦めるかなぁ……もっとクエスト受けるしかないのかも」
「そもそも戦闘スタイルを変える必要があるのか?」
「え?」
「いや、俺たちの中で唯一遠距離狙撃ができるプレイヤーだからさ、そこを磨けばいいんじゃね? と思って。ほら、一発に懸けるみたいな」
「あー……確かに。そういうのもありだね……あ、これ買っとこーっと」
そして、アスカは【腰撃ち強化】を買った。近距離捨てきれてなくて草。
その場でアスカと分かれ、俺はショップに残った。まだ何かねえかな、と。その時にアオイやクリスを思い出し、【対物理特攻】を取った。
「まあもうちょっと明確な目的を持ってから来るべきだったな……。いや、ちょっと店員さんに聞いてみるか」
「はいー、およびですかぁー?」
「呼ぼうとはしてたけどもそれは早すぎだ」
背後から店員がにゅっと生えてきた。心臓止まったわ。
「えーっと、ハンドガンで戦うんですけど、おすすめのスキルとかってありますか?」
「ハンドガンを見せていただけますか?」
大人しく『黒龍』と『白龍』を取り出す。それを丁寧に受け取り、しっかり【鑑定】した後、笑顔だった店員が固まった。眉が、ピクッ、ピクピクッと痙攣している。
「? どうかしました?」
「……少々お待ちくださいぃ……」
ハイテンションな店員は神妙な面持ちで店の奥に。え、何。俺のハンドガンに何かあったのか? いや、スキルには思い当たることが多すぎるけれども。『黒龍』についてる【権能:分解】、『白龍』についている【権能:合成】、【連】、【神々の権能】。スキル売ってる立場からしたらおかしなことしかない。
少し待っていると、先程引いて行った女性ではなく、眼鏡をかけた男性が出てきた。
「お待たせいたしました。ここからは彼女に代わって、私が案内させていただきます」
「え? あ、はい。え、どこへ行くんですか?」
「神界書庫です」
「……ん?」
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
それから眼鏡の男性に店の奥に案内され、そこからさらに五分ほど歩いた。この男性はこの店の店主で、この店にあるスクロールや本は全て暗記しているそうだ。
そんなことを考えながら歩いても、まだ本棚の部屋は続く。外観と広さが釣り合ってないんですけど……?
「……この本棚だな。ここの三番目の本を取って、書き込む、と。『Dear history』、こうだね。さぁ、行きましょうか」
「えーっと、まずは神界書庫についての説明が欲しいんですけど……」
「ああ、忘れていました。申し訳ありません」
俺が聞くと、眼鏡の男性は苦笑しながら説明を始めた。
「神界書庫というのは、この世界が生まれてから滅ぶまでの歴史そのものです。つまり、過去、現在、未来の時空間に存在する全ての事象を視ることが、取ることができるのです」
「………………はぁ?」
ちょっと理解が出来ん。全ての時空間に存在する? 事象とスキル? は? 意味分かんねえよ。で、なんで俺をそんなとこに連れて行くんだよ。
「あなたが保有するその武器……『白龍』と言いましたか。その武器が持つスキル、【連】に私たちが反応しました。そのスキルがどのようなものか、どこから生まれたか、ご存じですか?」
「いいえまったく。(そもそもこれ、ユカの実験の果てに生まれたものだし……)」
「それは、人類の最終兵器です」
「……スゥー………………………は?」
……人類のォ……最終兵器ィ? 人生で聞くはずのねえ熟語だァ!
「えーっと…………というと?」
「では、歴史の授業を始めましょうか」
「うげっ」
新宮? はて、聞いたことがあるなァ……。




