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第七十三話

皆さんは、好きになった人に彼氏がいたって知った時、どうします?

「ええっと、ここ、ですよね……カナデさんが言っていたのは」


 カリノは、足手まといになるのは嫌だ、と、先日カナデが攻略したダンジョンに来ていた。初っ端のハンマーと、途中に出て来る機械系の奴に対する水属性と炎属性の攻撃手段があればいい、と聞いていたので、ユカに作ってもらった『破壊的な水鉄砲(試作)』と『壊滅的な火炎放射器(試作)』を貰ってきた。ユカ曰く、


『それ、初めての試みだから、何か失敗があるかもしれない。けど、上手くいってればSTRに振り切ってる造りだから、簡単に敵は倒せると思う。最後のボス用に色々渡しておくから』


『え、ええ……』


 試行錯誤。try and error. ユカを形作る信念の一つだ。それを知っているため、カリノは二つの武器の使用を承諾した。


「うーん。やっぱりリンちゃんに助けてもらえればよかったかもしれないですね……彼女と二人ならだいぶ余裕で攻略できたと思うのですが……」


 ちなみにだが、カナデの従妹三姉妹は既に全員ユニーク装備を持っている。モチーフは、ココネが『雪女』、サキが『堕天使』、リンが『機械』である。全員それらしい。


 そのなかで、カリノは年が低い者同士リンと仲が良い。そして、カリノとリンが組んだ場合は爆発的な”強さ”を発揮する。二人が共同で戦った場合、それを見たカナデ以外のギルドメンバーからは『城塞』と言われた。


「いや、一人で攻略しなければ、誰かの足を引っ張ることになります。未来のために、今頑張りましょう」


 カリノは覚悟を決めて『最後の採掘所』へと入っていった。



♢ ♢ ♢ ♢ ♢



「あ、最初はメタルスライムですか。そういえば言ってましたね。そんなこと」


『ヌムルルルルッ!』


 うにょうにょと蠢きながらカリノを捕食せんと襲い掛かるメタルスライム。すると、カリノはインベントリから初期用のナイフを取り出した。

 バクンッ! とメタルスライムに飲み込まれるカリノ。しかしそこで終わるはずもなく、メタルスライムの中でナイフをブンブンと振る。すると、当然の如くスライムは消えた。


「ふぅ。少し気持ち悪いですね……。でも、スライムの【捕食】を耐えることができると分かったのは、 いい成果です」


 通常、スライムの固有スキルの【捕食】は、一部のDEFを無視して相手を溶かすというだいぶ凶悪なスキルだ。そのため、プレイヤーは基本的に襲い掛かられる前に倒すしかない。しかし、カリノはその異常なDEFにより【捕食】を耐えたのだ。


「次は……蝙蝠でしたっけ」


 カナデからの情報通りスライムの次に出てきたのはダイヤモンドで体ができた蝙蝠だった。それを見たカリノはハンマーを装備する。『開闢のハンマー(試作)』だそうだ。


「と、届かないんで降りてきてもらえますか?」


 蝙蝠がふわふわと浮かび、カリノに糞を落として来る。その時カリノはキレた。


「地獄を見てください。【超重力空間】」


 自身を中心とした、半径十メートルの範囲の重力を三倍にするスキル。突如増えた重量に驚いた蝙蝠は、ベジンッ! と地面に叩きつけられた。それを見たカリノは、ハンマーを掲げ、そのまま振り下ろした。


「あ、本当にカナデさんの言った通りなんですね。劈開性……でしたっけ?」


 急速にレベルが上がるカリノ。そのステータスポイントの大半をDEFに割り当てながら、さらに奥へと進んで行った。


「えっと、道順は……こっちで合ってますね。カナデさん、なぜ道順を覚えていたんですかね?」


 マップを見ながらカナデの言われた通りの道を通る。すると、これまた言われた通り、土でできた巨大なゴーレムが出てきた。


「水鉄砲を使えばあっさり倒せるかも、と言っていたのはこういうことですか……」


 ゴーレムが、バァンッ! と壁を叩く。すると、壁があっさりと壊れ、衝撃がこちらにも伝わって来た。なかなかのSTRだ。


「一度くらいは試してみたいですね」


 何をかって? 耐えられるかどうか。自身のDEFとスキルでこのゴーレムの力を超えられるかどうか。


「やってみますか。【硬化】【重化】【プロテウス】【防御形態】【超防御形態】【防御形態】“重”【防御形態】“硬”【防御形態】“抗”」


 持ちうる限りの方法でDEFを上げていくカリノ。さて、ここらで整理していこう。


【硬化】

自身のDEFを10%上昇させる。クールタイム十五分。


【重化】

ノックバック耐性(中)を得る。クールタイム十五分。


【プロテウス】

自身のDEFを10%上昇させ、攻撃してきた対象のSTRを20%低下させる。クールタイム三十分。


【防御形態】

自身のDEFを15%上昇させる。クールタイム十五分。


【超防御形態】

自身のDEFを25%上昇させる。クールタイムニ十五分。


【防御形態】

“重”ノックバック耐性(大)を付与する。クールタイム三十分。

“硬”自身のDEFを30%上昇させる。クールタイム三十分。

“抗”攻撃してきた対象のSTRを20%低下させる。クールタイム三十分。

“絶”十秒間、あらゆる攻撃を無効化する。クールタイム二時間。


 元のDEF75を圧倒的な倍率で増やしていく。現在のDEFは143だ。そして、ノックバック無効を持っているため(中と大が合わさったから)、決して退かない最強の壁ができる。もう少し言うならば、ゴーレムのSTRが下がっているため、現在の拳のSTRは180だ。


 ああ、カリノのDEFが143と言ったが、それは装備抜きのステータスだけのDEFだ。ここに装備のDEFを足すと193となる。つまり、ゴーレムの拳を超えるのだ。


ドガアンッ!!


「っ! ……ふう。余裕で耐えられましたね。STRはどれくらいだったのでしょうかね?」


 カナデが一撃で消し飛んだ攻撃を、HPの一割を削るだけで耐えたカリノは容赦なく水鉄砲を乱射し、中のコアを『開闢のハンマー(試作)』で破壊してその場を通り過ぎた。ちなみにこの時水鉄砲は壊れた。

 次の通路からは入り口で出てきたような、鉱物で構成された蝙蝠が出てきた。カナデが逃げたやつだ。


「まあ、私にはハンマーがあるので破壊出来ますが。【超麻痺空間】」


 自身から半径十メートルの空間にいる敵全てに『麻痺』を与え、蝙蝠たちを落とす。そして、地面に叩きつけられた鉱物蝙蝠たちをハンマーで叩き壊していった。


「あ、これが最後のボス部屋ですか。たしか、ミミズのような形の掘削機―――」


ウイイイイイイインッ!! ギャリギャリギャリギャリッ!!


 呟き切る前に巨大な掘削音が響き、目の前の扉を破壊する。カリノは低いAGIで必死に飛び退いた。


「痛っ……」


 いくつかのスキルの効果が切れているとはいえ、ドリルに触れるとそこそこのHPが持っていかれてしまった。この掘削機、一部DEFを無視するらしい。ドリルらしい。


「まあ、あまり遊んでいたら負けるので一瞬で終わらせますけど」


 カリノはメイン武器に『壊滅的な火炎放射器(試作)』、サブ武器に『破壊的な水鉄砲(試作)』を装備し、二丁拳銃となった。


「ふうんっ!」


 まずは軽く装甲を剥がすため、ウォーターカッターのようになった水鉄砲を撃つ。すると、掘削機の表面にあったバリアが剥がれた。カナデはこれを無意識にしていたが。


「一部でも回路を剥き出しにできれば……ッ!?」


 さすがのミミズと言えど、自身を攻撃してくる敵は看過できなかったのか、カリノを掘削しようとした。しかし、回避は出来ないと分かっていたカリノはスキルで対処する。


「【防御形態】“絶”!!」


 先ほど紹介していなかった、【防御形態】スキルの最後の一つ。“絶”。その効果は、十秒間あらゆる攻撃を無効化するという物だ。クールタイムは二時間と長いが、十秒もあれば十分だと火炎放射器を構える。


「ファイアー!!」


 少し見えていた基盤に炎を浴びせ続ける。なお、掘削機は一生懸命カリノを削ろうとしているが、見えない何かに護られるようにしてドリルはカリノの前で止まっていた。「あ、火炎放射器壊れた」と、新しい火炎放射器を装備した。顔に焦りが見える。


「そろそろ十秒が来るんですけどぉっ!」


 それでも尚あぶり続けていると、途端に掘削機の動きがおかしくなる。バグが起きたように。思わずカリノは、「よし!」とガッツポーズをした。

 その後はカナデの時と同じだ。暴れて、倒れて、消える。その際の胴体はカリノに触れなかったようで、カリノは安堵していた。


「……? あれは」


 部屋の中心に、黒と銀色でカラーリングされた宝箱があったので、カリノは急いで駆け寄った。そして、ドキドキしながらゆっくりと宝箱を開く。中には装備が、ユニーク装備が入っていた。


「……あれ? この装備、【合成素材】って書いてある……。ユカさんに聞いてみますかね」


 取り敢えず迂闊に触れないようにしようと、装備をインベントリに入れてから〈魔王軍〉のクランホームに帰ったのだった。

今回は、ユカの試作がヤバイという話でもありましたね。


【プロテウス】は素材の方です。神じゃないです。

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