第七十二話
だいぶ壮大な話になった。先に謝っとく。ゴメン。
FFO運営・最果ての地・最高議会の間
「で? どうしたんだよ、またカナデかぁ?」
「いや、カナデじゃねぇ。まあ、クリスだから近しいわけだが、今回はそっちじゃねえ」
「えー? プレイヤー関連じゃないのー? じゃあ何よぉ」
「『ゼウス』がこちらに干渉してきた」
「「「「「「「「…………チッ」」」」」」」」
班長皆が舌打ちをする。あいつらか……と忌々し気に。A班班長が中央にリンゴの樹のような図を作った。
さて、運営が一生懸命話し合っている間、ここらで真相の何割かを確認しておこう。
多重奏世界の走者、『ジオリドレ』を筆頭としたFFO運営は、無数の現実を垂直に移動し、ゲームとして自然に侵略させるようにしている。それを知っているのは班長達と『ジオリドレ』の二十七名のみ。他の部下は知らない。
多重奏世界というのは、つまり平行世界。交わることの無い、似たような世界が存在しているということだ。
「バタフライエフェクトの小さい第一階層はこっちの力で簡単に制圧できたが……四階層辺りからは無理だと判断したからこうしたんだがな……。まさか神界が荒れ始めてるとは……。予想だにしていなかった」
今自分達が存在している世界を0とした時に、これまでの歴史で微かな変化があり、今現在の着地点が違う大きさ、が階層である。深ければ深いほどバタフライエフェクトは大きいということだ。
第一階層、第二階層は、第零階層の宇宙にあるどこかの空間に、かつて小さな瑕疵があって発生した世界。そのため、齟齬も少なく敵も弱い。しかし、第一階層は弱いながらもプレイヤーたちに力を与える場所として絶好なので、遊びの場として使っていたのだ。
「システムで仮想的な肉体を作って冒険させる。第一階層にあった謎の装備とかを改良したり、こっちで改造したりしてゲームに昇華させた。ここまで俺たちの力でやってるのに、神界のいざこざでパワーバランスが崩れるのは……」
ちなみに、イベントで使われているフィールドは、第一階層世界にある別の島を改造してそのまま使っているだけだ。拡張したのも、多少大地を盛っただけ。そのため、カナデの掘ったあの大地は破壊不可ブロックを置くのではなく、モンスターとして『無敵』の特性を持った微生物を入れるしかなかったのだ。干渉できないから。いや、できるけど時間が掛かるから。
なぜ侵攻を始めるか? それは簡単だ。しなければこちらが襲われるから。もう第九十七階層から宣戦布告を受けているから。戦力を増やすためには兵士を増やし、武器や装備のクオリティを上げるしかない。プログラム、という名の【世界編纂】にて世界を少しずつ作り変えているのだ。そして、【世界編纂】を使う者がこの男、ジオリドレ。
「みんな。まずはイベントに向けて島を作り変えるしかない。第三階層はいろんな意味で厳しいからね。その備えをさせるためにもイベントに内容を持たせないといけない。それに、神界の干渉を受けるのは最初から想定済みだったはずだ。まあ、そちらの干渉を防ぐのは僕の役目。いくつか創り直しておくから、もう仕事に戻ろう」
「「「「「「「「ハイ」」」」」」」」
この男の役目は、【世界編纂】の力をこの空間に宿して、運営達が世界を管理できるだけの力を与えることだ。かなりの疲労が来るが、「世界のためだ」と絶えず力を行使する。
「……こちらが神や悪魔を使っているのも事実。神界からの干渉はやはり避けられないか……。世界をシステムに飲み込ませるなんて、無茶なことをしなければ……いや、もう始まったことだ。もう戻れない」
ジオリドレは覚悟を固め直すと、世界を作りなおしに向かった。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「ど、どうかしら……」
「すっごおおおおいっ!!! めっちゃ可愛いし、めっちゃカッコいい! すごいよクリスちゃああんっ!!!」
「……クリス……可愛い」
「いいじゃん。かっこいいし可愛い。似合ってるぜ」
「あ、ありがとう……」
素直に褒められて喜ぶクリス。照れた顔もまた可愛い、とコルネが興奮する。今この場にサキがいなくてよかった、と皆が安堵した。
「あ、クリス。私にお願いがあるって言ってたよね。何?」
「あ、ユカちゃんに、装備品の合成をしてもらいたくて」
「……合成? ユカ、そんなこと出来たっけ」
「んー、【生贄】ってのはあるけど、それは合成って感じじゃない。クオリティを上げるために一つの武器を生贄にする行為だから。どういうことをしてほしいの?」
「別々の装備を合わせて、両方のスキルを持った装備ができないかなって」
「………………ちょっと考えてみる」
クリスは帰ってきてから、〈魔王軍〉のみんなに装備を披露していた。みんなの反応は、一貫して「かっこ可愛い」だった。「強い」は出てこなかった。なぜだ。
「あ、それでカナデ君。ちょっと話があるんだけど」
「え? んだよ」
魔王軍のリビングで【unlimited materials】を試していたカナデは、自分が呼ばれると思っておらず普通に驚いた。これ頑張れば『オリハルコン』とか作れそう。
「えっと……神界の話なんだけど」
「! ……というと」
「三代目全能神……アグネルとかの話。多分より詳しく聞いて来たから、情報交換をしたくって」
「……それは、誰からの情報だ? 装備の全能神から……ヴァグエルか?」
「そのヴァグエルに力を与えた、ゼウスからよ」
「……マ?」
ちょっとこれは完全に理解するまで皆には話せねえ、と自室にクリスを案内する。絶妙な広さで素晴らしい豪邸だ。
そこで、カナデとクリスが自身の持ちうる全ての情報を交換した。俺からはなぜ追放が始まったのか。クリスからは全能神の継承の話と、管理者たちが減ることの弊害。そして、多重奏世界。情報量が多すぎてパニクりそうになった。
「ってことは、第一第二階層は、現実世界の宇宙のどこかにある空間の成れの果て、ってところか? いや、成れの果てじゃないな。ありえた現実か」
「そう。私たちが平行世界って言っているのが多重奏世界。『ありえた現実』が階層としてこのゲームに追加されて行ってるっていうこと」
「どっかしらに、『ある空間に宇宙船が落ちた世界』が、何か小さな変化があって『そこに科学文明が住んでいて、もう滅んだ』に変わったのか。バタフライエフェクトってすげえな」
「だから、これはゲームじゃないと思うの……。いくら何でも、ここまで話が広がる? それに、多重奏世界って、公開されていない話じゃない? もしかしたら、運営が何か隠しているのかも……」
「……うーん。どこまでが運営の想定したストーリーなのかが分からん。神界とか冥府とかを含めたストーリーが、全て運営の作ったストーリーなんだったら……いうことは無いんだがな。あんまり疑いすぎるのもよくないと思う。このゲームを楽しむプレイヤーとして存在すればいいんじゃねえのかな。俺達」
「それも、そうね……。いざとなったら、私達で運営に聞いてみましょう」
「そうだな」
話が一旦の終結を迎えたので、外に出る。すると、皆がそっぽを向いて何かをしていた。何人か口笛を吹いている。あ、こいつら聞こうとしてたんだな。でも、俺の部屋には防音の結界を張るアイテムが置いてあるから無駄だったと。
ピロンッ!!
「「「「「「「「ん?」」」」」」」」
リビングにいたギルドメンバー八人に通知が届く。全員同時ということは、運営か? と思っていると、真っ先に確認したユカが説明してくれた。
「あ、次のイベントの通知。なんか、面倒くさそう」
「は? 面倒そうってどういうことだよ。また戦闘か?」
「いや、サバイバル」
「「「「「「「はぁ?」」」」」」」
聞いてみると、今度は無人島でのサバイバルのようだ。うわ、確かに面倒そう。でも、ゲームの中だし多少は……と考えていると、そう甘くない内容だった。
「えーっと? 参加はギルドメンバー全員。時間加速で体感五日間。腹の減るスピードも眠気も、現実とそう変わらん設定になっとるらしいで。勿論、餓死も存在すると。敵もめっさおるらしいな」
「……サバイバルなら、ナイフとか食料を持って行った方がいい? できるだけ大量に」
「そ、そうよね……でも、それだったら大量にアイテムを持って行って疑似的な家を建てることも出来そうだけど……」
「あ、それ無理ですね」「んー? それ無理じゃなぁい?」
そこでカリノとコルネがほぼ同時に声を上げる。アオイとクリスが「「エッ」」とこちらもハモる。
「持って行っちゃダメなアイテムとかが書いてありますけど、その中に食料品って書いてありますし」
「あ! イベントにもっていっていいアイテムかは、メニュー欄に追加された『審議』の場所にアイテムを入れてみると分かるらしいよ。えっと、試してみるね……」
そこでコルネは『審議』の項目を開く。『持っていきたいアイテム欄』という場所で、インベントリ内のアイテムを選ぶことができたので、買ったばかりのマイ枕を選択してみる。すると、許可が下りた。
「枕はいけるみたいだね。こうやって準備をするしかないよね!」
「……あ、キャベツ持っていけないみたい。トマトも」
「いや、なんでお前はそれを持ってんだよ……」
アオイの謎の所持品に驚きつつも、俺たちは各々イベントに向けて準備を進めることになった。マジで【unlimited materials】あってよかった!
分からないことがあったら全部聞いてください。ちゃんと丁寧に答えます。分かりにくい説明を書いたこっちが悪い。
それと、三話目いきます




