第七十一話
失恋のショックがぶり返してきたし、テストの結果も散々だったしってことで、二話投稿します
クリスと人型の青い光が相対していた。その光は天使らしい。いや、天使の魂魄? らしい。
「『記憶連想』“黒龍”“白龍”!」
まずは状況を伺いやすいハンドガン二丁拳銃にする。その時ゼウスは離れた場所から見ていた。
『“雷槍”』
光が詠唱をすると、空に雷でできた槍が生まれた。流石に雷速は回避できないと、クリスは大人しく障壁を張ることにする。
「【魔法障壁】! ……さすがにこれが物理ってことは無いともうのだけれど」
クリスが生み出した障壁にガァンッ! ジジジジッ! バジィッ! という音が響き渡る。あ、一撃で死にそう、とクリスは悟る。
「【覇者の道】【ピンポイントアタック】【貫通必至】【会心必至】【連】……!」
クリスの立ち回りは僧侶。回復やバフをメインとしたクラスだ。通常こうやって戦う奴はそうおらず、後方支援が多い。そして、【覇者の道】は僧侶の専用スキルだ。
【覇者の道】
乗っていると味方のステータスを10%上昇させる魔法陣を作り出す。範囲は使用者の最大MP量に比例する。
そして、【ピンポイントアタック】と【会心必至】にて相手の弱点を的確に射抜き、さらに絶対にクリティカルが出るという状態になった状態で破壊力が増す【会心必至】を使う。そんな一撃に、超強化を加える【連】。普通に考えて恐ろしすぎる一撃だ。天使はそんな一撃をまともに喰らった。
『“治癒の加護”』
「……えっ!?」
天使は詠唱をし、自身のダメージを回復していく。どうやら自動回復のようだ。【不絶の混沌】みたいだと思う。
『“雷虎”』
「っ! 速―――」
雷を纏った天使は瞬間移動の如く速度で移動し、クリスの脇腹を抉った。どうやら雷を纏わせた手刀のようだ。流石にハンドガン……というより、銃器では間に合わない。ならば、これしかない。
「『記憶連想』“終ノ刃”“三日月”!」
カナデのナイフとコルネのナイフを両手に持つクリス。演技に入らず、素のクリスのままだ。
「自動回復してくるなら、即死させてあげる……!」
『“雷虎”』
「ん゛っ!」
すれ違いさま脇腹を抉ろうとして来る天使にタイミングを合わせて『三日月』を振るうクリス。それを見た天使は急ブレーキをかまして飛び退いた。
「……(普通の即死だとしたら、魂魄が~の話で復活するかもしれない……)」
『“轟雷”』
途端に空から雷が落ちて来る。ピカっと光った次の瞬間には落ちて来たので、クリスは成す術もなく撃ち抜かれた。しかし、そのHPは9残っている。僧侶の本領を発揮するときだ。
「【超治癒】!」
【超治癒】
【回復属性上級魔法】と同等の治癒を施す。
つまり、HPをたくさん回復するということだ。これにてクリスは全快し、ナイフを構え直す。MPの残量が心許無くなったが、気にせずに前を向いた。すると、天使はもう一度同じ攻撃をしてくる。
『“轟雷”』
「ふうっ!」
クリスは一度目の攻撃で気が付いていた。光った地点から自身の頭の上に直線で落ちて来ると。つまり、そこにナイフを置き、触れた時にナイフを振れば、その攻撃を切り裂くことができる。
「【星の枷】【魅惑の薫香】【電磁波】!」
【魅惑の薫香】はAGIを30%下げ、【電磁波】は全ステータス5%下げる。つまり、合計してAGIが大体53%ほど下がっていることになる。だいぶ弱体化している今のうちに仕留める!
「【範囲攻撃】ぃ!」
あらゆる攻撃の当たり判定を大きくするスキルでナイフを当てやすくし、天使に突撃する。天使は逃れようと『“雷虎”』と詠唱する前に、【物理障壁】で逃げ道を防ぎ、すぐそばまで肉薄する。多分そのスキルそうやって使うはずじゃないと思う。
「【極刑】!」
右手に逆手で持ったナイフに『完全即死』を纏わせながら振り切る。天使の放つ光と接触し、バヂヂヂィッ! という音が溢れ出す。『終ノ刃』から溢れ出す黒いオーラと、天使の持つ白い光が拮抗するが、【範囲攻撃】にて広がった当たり判定が天使の光を凌駕する。
『いかん!』
ドオォォォンッ……と、何かの衝撃が通り、クリスは吹き飛ばされる。砂埃と黒いオーラが晴れた後にクリスが見たのは、ゼウスが天使を守るために二人を突き飛ばす絵面だった。
「ちょっと!? 何するんですか!」
『戦いは終わった。そのスキルはマズすぎる』
「マズい……? というと?」
『即死ならば許容できた。だが、完全即死はダメだ』
「???」
どうやら神界とは魂魄の集う場なので、死んだ後に魂が行く場所という認識でいいらしい。なので、『即死』させられたモンスターはここに来る。天使もそうだ。
しかし、『完全即死』だと魂魄ごと消し飛ばしてしまうので、いくら天使、そしてここが神界だろうと、消滅してしまう。それはダメだ、ということでゼウスが止めたのだった。
『フハハ。想定以上だった。報酬は当然渡す。来る日に備えて、仲間とともに精進するといい。面白いものを見せてもらったぞ。フハハハハハ……』
そう言ってゼウスと天使は透けていき、やがて消えた。もしかしたら実体はここになかったのかもしれない、と思いながら、いつの間にか中心に現れていた宝箱を開く。中にはユニーク装備が入っていた。
「う、うわぁ……こ、こんなの私が着て……いいのかな?」
『全能神シリーズ』
『全能者ノ纏』
【STR +20】【DEF +20】【AGI +20】【HP +20】
【破壊進化】
スキルスロット
【自動治癒】一秒毎にステータスHPの五分の一を自動で回復する。パッシブスキル。
【空欄】
『掌握魔手』
【STR +10】【DEF +10】【TEC +10】【MP +10】
【破壊進化】
スキルスロット
【支配者の権能】強力な念力を使う。対象の重さと、持っている時間に応じて消費MPが多くなる。
【空欄】
『自由闊歩』
【AGI +10】【TEC +20】【HP +10】【MP +20】
【破壊進化】
スキルスロット
【雷速】雷を纏い、高速で移動することができる。クールタイム三十分。
【空欄】
『背理』
【STR +20】【DEF +20】【AGI +20】【TEC +20】【HP +20】【MP +20】
【破壊進化】
スキルスロット
【全能神】※使用不可
使用条件:特定のクエストの完遂
『雷霆 STR 200』
【破壊不可】
スキルスロット
【壊滅の雷撃】十秒間、自分の視認できる好きな位置に、即死の雷を落とし続ける。クールタイム四十五分。
【空欄】
………………ゑ………………
「ちちち、ちょっと待って!? な、何この装備!? さすがに……強すぎない!?」
全ステータスが+50。全ての装備に【破壊進化】。挙句『※使用不可』の表記がある耳飾り。いや、ナニコレ!?
というか、『即死』の雷を落とし続けるって……多分、皆のスキルよりも強いんじゃ……いや、クールタイムが四十五分だからちょうどいいのかなぁ?
「えっ、えっ、えええ……。ちょっと、ゼウスさん!?」
驚きすぎて焦り始めるクリスであった。
運営・最果ての地
「おいQ! 誰か手ェ空いてる奴来てくんねえか!?」
第二階層の異常を探していたD班の男が声を上げる。Q班。つまり、プレイヤーの装備を管理している班だ。
「はいはーい。何ですか? レア装備が取られたなら通知が来ますよねー?」
「いや……こんな装備お前らが用意してたか? これ系統のスキルを持つ装備は、上級でも上澄み、最上級でようやく出るくらいだろぉ?」
「えー? 『全能神シリーズ』……? ……ん? 【全能神】……?」
眠そうにしていた社員の眼が、カッ! と開かれる。それを見た男は、「うおっ」と驚いてしまった。
「ちょっと、班長と話してきます」
「お、おお……(何だったんだありゃ?)」
Q班の男は、班長に相談しに行った。自分たちの知らない装備がある、と。それを聞いた班長。装備を確認し、その男に一言告げた。
「班長会議を開く」
「あ、ハイ」
Q班班長は眉を顰めた。『全能神シリーズ』という異物の正体が掴めなかったからだ。
「まさか……多重奏世界に干渉してきたのか? 神界の住人が……イベントの周期を早めるか? いや、ゲームとして楽しまなければ……クソッ、これはあいつらと話し合うしかないな……」
この話からスキルや装備等の書き方を変えました。
次話、運営がガチで話し合います。
クリスの入手した『全能神シリーズ』は、カナデの『魔王シリーズ』や、アイクの『勇者シリーズ』に並ぶ最上級装備ですが、頭一つ飛びぬけています。だって、神が用意した装備だし。




