第六十八話
ひとまずゴーレムの動きは鈍いので、AGIで撹乱することにしよう、と走り回る。やはりゴーレムは追って来れていないようだ。が、大体の位置は予測できているのか、ちょくちょく泥を飛ばして来る。そして、その中にはさっき俺が撃った弾丸も混ざっている。
「吸収して解放するとか、面倒な能力持ってんな! クソが!」
打撃はいけるのだろうか? と思ったので斜め上から蹴りを放つ。すると、そこからボロボロと土が崩れ、少し経ってから修復した。
「修復には時間が掛かるのか……。オッケー。数少ないポーションを大量に使ってやる」
あんまり使いたくなかったユカ製のポーションを三本飲み、ゴーレムに肉薄する。ゴーレムが『オオーンッ!』と腕を振り下ろし切る前に壁に跳び、壁を蹴り、頭の上までくる。そして回転しながら踵落としを繰り出した。
ドカッ! バラララ……
「ッ! 直る前にぶん殴ってやるからなァ!」
殴った傍から修復するゴーレムに、思わず「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!」と言いそうになったが、別に時を止められるわけではないのでやめておく。
見る影もなくボロッボロになったゴーレムに、最後の一撃を放つ。
「【ピンポイントアタック】」
放たれた弾丸は寸分の違いなく胸を穿ち、今度は吸収されることなくゴーレムを倒すことができた。
「……面倒な敵が増えたな。もしかして、属性的なものが出て来るのか? 火には水が強いーみたいな」
だとしたらここは水とかか? と考えながら奥に進む。時折出て来るダイヤモンドやルビーに身を染めた蝙蝠からは逃げながら、遂に最深部にたどり着いた。
「はー、面倒なやつが多かった。中ボスのあのロボットはマジで何だったんだ……?」
やはりここはかつて採掘場だったのかもしれない。そして、進んだ科学で自動採掘していたのかもしれない。あくまで俺の予想だが。じゃあ、ゴーレムは? 奥にある何かを守っていたのか?
「……よく考えたらダンジョンに潜ってそこを荒らしているのはプレイヤーの方なんだよな……『ゲームだから』って考えてなかったけど、そうか……」
少し考える。そもそもダンジョンってなんだ? と。
まあ、ゲームの中にある褒美付きの洞窟、という認識でいいと思うのだが……。いや、特に意味は無いか。無駄な時間だった。
「まあいいや。俺達は攻略者だからな。気にしない気にしない」
扉に近づくと、中からドカカカガガッ! という音が聞こえて思わず飛び退く。すると、扉と思っていたものが中から出てきたドリルに喰い破られ、大きな風穴となる。そのドリルはこちらを狙ったわけではないみたいだが、もしかしてガチで掘削機か!?
「うっわ、HPバーあるし……これと戦えって!?」
巨大で強大。先端は即死。胴体部分だってミミズや蛇のように見えるが、莫大な質量をもつ物質にぶつかられたら吹き飛ぶだろう。薙ぎ払いより悪質かも。
「一先ずは……【連】!」
電磁加速された弾丸が掘削機に迫り、激しくぶつかる。すると、少し拮抗した後弾き返された。あ、これあかんやつだ。
「……『神龍起動』【災厄伝播】【憤怒】【怠惰】」
インベントリから取り出したシリンダーに『黒龍』と『白龍』が集まり、リボルバーを作る。こちらに突っ込んで来た巨大な掘削機を飛び退いて回避すると、掘削機めがけて撃ち放った。
強烈な反動が腕を襲うが、眼だけは掘削機を離さない。すると、弾丸が触れるとその箇所が少しだけ、本当に少しだけへこんだだけで終わってしまった。
「STR12000をそんだけで済ませるのか……やっぱ属性的なものか? ちょっとこれは本気で行くしかねえな……」
スキルをあまり使わず技術だけで乗り切ろうとしたが、これは無理だ、と『災厄シリーズ』を解放する。
「【災獄旧海】“海”……ガッ!?」
急に頭痛がした。うわっ、苦しい……。
その後気が付いたのだが、領域系スキルが引き込めるサイズには限度がある。前回は量だったが、今回はサイズだ。意外と縛りが多いんだな。このスキル。
「仕方ねえ……【災獄旧海】“波”!」
ドドドドドドドドォッ!! と、背後の通路が揺れ、莫大な量の水が流れて来る。こっちはゲームの世界に直接出現させるだけだから大丈夫のようだ。
うにょにょと蠢いていた掘削機に水がぶち当たり、その姿を飲み込んだ。が、大したダメージを与えることも無く、HPバーを二十センチほど動かして終わった。え、マジで言ってる?
「じゃあもう詰みなんだけど……。属性有利の攻撃でこれだったらマジで終わりじゃん。【災厄伝播】も使ってるのに」
ため息をつきながら考える。もしかして耐久系か? いや、だとしたらHPバーを出さないはず。じゃあ、この空間にあるものを使うのか? 何がある? デカい穴。それ以外何とも言えん。
「……まあ、攻撃し続ければいいか」
結局辿り着いたのは脳筋スタイルだった。
「一旦『黒龍』をしまって、『終ノ刃』を右手に装備……っ! 今準備してんだろ! 攻撃してくんな!」
いや、こいつの場合攻撃ではなく、ただ掘削をしようとしているだけなのだが、俺からしたら十分な攻撃力である。一撃で死ぬんだし。
「【連】」
『……』ギュイイイイイイインッ!!!!
こいつらは大体『完全即死』効かねえよなー、と思いながら、掘削機に向けて走り出す。飛び乗ってナイフをぶっさぶさにするつもりなのだ。どう足掻いても合計STRが400のナイフが俺の最高戦力なので、ナイフを使うしかない。
「たとえ一ミリしか削れなくとも、何万回か繰り返せば全部削れるんだしな。別に長時間労働は苦じゃない。生憎だったな」
眼をキラン! と光らせながら、掘削機に飛び乗った。そして、ガンガンとナイフを叩きつける。すげえ、斬れねえや。
かつてしたようにグリグリとするが、傷一つしかつかない。あ、それは付くんだ。拳で殴りつけて衝撃が浸透するかなーと思ったが、鋼鉄の装甲にそれは無駄だと悟った。
ふと繋ぎ目のようなところを見てみると、中からすごく精密な基盤が見えた。基盤か……そりゃ自動で掘ってくれるくらいだし、そういうのは必要だろうな。
ところで、精密機械という物は基本的に熱に弱いらしい。理由はいくつかあるが、材料が融解する可能性もあるし、熱が上がれば電気の流れが阻害される。それに、内部の部品とかがダメージを受ける可能性があるし。そんな感じで、電子機器は熱に弱い。
「じゃあ、これしかねえよなァっ! ポーションをがぶ飲みしーのっ! 【任務遂行】【業渦災炎】っ!」
STRのみを上昇させ、火災旋風を巻き起こす。室内でするのはどうかと思ったが、ここはゲームだと割り切ることにした。
どんな敵であろうと強制的に『火傷』を付与する災厄は、機械にすら牙を向いた。よく考えたら掘削機の火傷ってなんだ?
「あっづぁっ!? 熱伝導率がァ!」
自分の起こした炎と火傷のせいで掘削機の外装がとても熱くなり、思わず飛び退いてしまう。びっくりするくらい熱かった。【火傷無効】を持っているとはいえ、熱は感じるし。
その後も見ていると、掘削機が変な挙動をしている。おっ!? これは……壊れたか!?
このダンジョン、『最後の採掘所』のラスボスである掘削機の討伐条件は『『火傷』を与えること』である。そのため、【炎属性上級魔法】を連発したり、『火傷』を与えるアイテムを使ったりすることで攻略できる。
ジッ、ジジィッ! ギュリイイイイイイインッ!!
「あ、こっち来―――」
ザシュアッ!! と、超高速で回転していたドリルに貫かれる。しかし、俺は数メートル先に転移して復活していた。
「【空蝉】ィ……最後の抵抗ってめっちゃ怖えな。うん」
ズッドォォ……と巨体が床に倒れると同時、宝箱が目の前に現れる。開いてみると、中に入っていたのはスクロール一つだった。何だよ。単独で初挑戦で初攻略者だろぉ!? ユニーク装備くれよ。
スクロールを開いてみてみると、『白龍』と相性のよさそうなスキルだった。
【unlimited materials】
エネルギーを流すことで、その量に比例した量のアイテムを生み出す。素材の種類は自由に選ぶことができる。
見てみると、第二階層からは発電機のようなアイテムもあるようだから、恐らくこれはギルドホームで使って、発電機を使って大量のアイテムを生み出す! みたいなもんだろうな。まあ、『機械神の心臓』があるからエネルギー問題は無いに等しい。
「ユカに言ったら喜ぶかな?」
俺は、ルンルンと帰ったのだった。
無駄無駄無駄→DIO様
土で体が出来ている奴は、水を浴びせて回復能力と吸収能力を消して、胸の弱点を【ピンポイントショット】で撃つと超簡単に倒せます。なお、あの拳のSTRは300です。
このダンジョンでユニークを手に入れる条件は、合計DEFの値が100を超えていることです。




