第六十七話
翌日クランホームに案内し、全員がクラン〈魔王軍〉のメンバーとなった。うおー、や、なんや伝説の始まりな気がするなぁ……、といった声が聞こえる。
人数が十一人となった〈魔王軍〉は小規模ギルドというカウントらしい。中規模は五十人以上百人未満。大規模は百以上とのこと。
「フレンドに聞いてみたが……大量の小、中規模ギルドが乱立しとるって話やな。まあどうせ、いくつかがまとまって大規模になるんやろうけど」
「……私たちは、どうするの? ここから人数を増やすの?」
全員の視線がこちらに集まる。ここからの進路を決める重大な決断だ。ココ姉は、「ふふふ」と笑っていた。楽しんでいやがる。
多少迷ったが、一応前から考えていたことではあるので、すぐさま決断できた。
「……いや、これ以上は増やさない。満員だ。これ以上は一人一人の管理が大変だし、そもそもクリスの問題がある」
「えっ、私……!? 私のためにそう決めたんだったら、別に気にしなくても……」
「いや、そもそも大量の人と関わるのが面倒。あと、アイクみたいなのが入ってきたらクソ面倒」
『あー……』
全員が納得する。あいつ外面こそいいけど、内面は腐っているからな。ガチで俺が嫌いなタイプ。
それに、知り合いだけで済ませてある方がいい。厄介ごとを簡単に始末できる。
「んー? でも、〈聖王勇者隊〉って大規模ギルドでしょー? いろんな人を集めてるって話だしー」
「らしいね! 強者を大量に集めている、って聞いた! 実際はどうかは分からないけど……」
「世界チャットを見てみると、他にも〈インデュリメント〉っていうめっちゃDEFの高いクランとか、真っ当な攻略者たちの集まりの〈攻略者の集い〉とかいろいろあるみたい」
「ほー、魔術師だけの集団もあるみたいやな。まー、大体は同じようなコンセプトのクランやけども」
結局のところ王道が最も強い、らしい。まあ、銃をメインに扱うゲームでそれほど大逸れたことは出来んわな。
ステータスを上げ、武器の性能を高め、スキルを集める。仲間との連携を組み、確実に相手を倒す。現実とは戦い方が違うが、ゲームとしての楽しみ方としたら最高だ。
「で、でも、〈聖王勇者隊〉は大規模ギルドだから……正面衝突したら負けるんじゃ……?」
「じゃあ、俺たち一人一人が強くなればいい。このゲームは平等じゃない。強者が弱者を蹂躙するゲームでもあると俺は痛感した。だから、力さえ手に入れれば多対一でも勝てるんだよ」
「……」
「事実、俺やアオイ、リエも広範囲攻撃や即死攻撃を持っている。タキオンだって高速で動き回って一人一人を最速で殲滅することができる。知らんけど」
「そこは断言してくれ……」
従妹三姉妹は知らないが、そこそこの強者であることは分かる。そもそも第二階層来てるし、そりゃそうか。
「さて、じゃあ、これからは自由行動だ。次の第三回イベントに向けて、二階層を探索しようぜ」
『おー!』
この階層には何があるのかね。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「なんか個人行動が久しぶりな気がするなァ……」
イベント含めて最近はずっと誰かと行動していた気がするため、一人となると少しだけ寂しく感じる。まあ、人間は一人で入れる人が強いんだけど。
「あっ、『嫉妬』行ってみるかなァ……いや、まずは散策か?」
ブツブツと言いながら北上すると、新エリアが解放される。そこはやはり森だった。やっぱどの階層でも大体は森なんだな、と思いながら進む。道がだいぶ整備されているので、奥に何かあるように感じる。
すると、道から外れたところでロボットが出てきた。何だよ。出てこねえんじゃねえのかよ。
「第一階層の時も何回も戦ってるからなァ……嘗めてんじゃねえぞッ!」
レーザーを出される前に接近してナイフで切り裂こうとすると、ロボットの左腕がドリルに変化し、俺を掘削しようとしてきた。うわっ、内臓出るじゃねえか。止めろよ。
ガンッ! とナイフで受け止めると、右手の『黒龍』を連射する。七発ほど打ち込んで、ようやく壊れた。強くなってるなー。
経験値も貰えるゴールド数も上がっている。やはり腐っても第二階層。
「こうなったら、【対物理特攻】くらいは取っといた方がいいか? ってか、動物はいんのかな……」
その後もロボットたちと戦闘した。どいつもこいつも所持してる武器が面倒だ。ドリルを筆頭に、ショットガンは当たり前、時折自爆する奴もいた。
「チッ、ちょっとダメージ入ったじゃねえか……。面倒なやつらだな。というか、このロボットはどっから来てんだ?」
もう少し歩いていると、何かの鉱山があった。巨大な機械やベルトコンベアもあったが、今は止まっている。採掘場か? ふーん……。
「お? これもダンジョンなのか」
坑道の入口に入ると、メタルスライムが出てきた。あ、第一階層と同じだわ。この雰囲気。
『黒龍』、『白龍』の両方を連射し、ようやく倒す。最初に出てきた雑魚敵がこれってマ? 弾の消費量的に不味いし、『白龍』をメインに使うとしよう。
「こういうところで出て来るなら……蝙蝠だよなァ!」
右斜め前に出てきたダイヤモンドを纏っている蝙蝠を、『白龍』で撃ち落と―――
カァンッ!
「なんでだよ! てめえ、そんなに硬いのかよッ!」
さすがにダイヤモンドを銃で撃ち落とすのは無理だ。ハンマー位は欲しい。
そもそも、鉱物では世界最高のモース硬度を誇るダイヤモンドがあんな風に加工されるのは、ダイヤモンドの劈開性があるからだ。まあ、超簡単に言うと、炭素同士の結びつきが弱いところに力を加えたら簡単に割れるよ、ってことだ。
「あんの蝙蝠ガチで落としてェ……まあ、鉱物とは言えモンスターだったら、即死するか……」
俺は跳び上がると、蝙蝠を正面に捉える。蝙蝠は、絶対バッチリ見えている眼でこちらを見ると、急いで逃げ出した。壁の柱を蹴り肉薄すると、『終ノ刃』をその翼に触れさせた。
「【極刑】ッ!」
『ッ!? ファァッ!?』
……よし、倒した。やっぱ困ったときは即死がいいな。【極刑】最高。
「さて、このダンジョン……鉱物系が来るんなら、だいぶ稼げるな? そんで、ユカに素材も渡せる。めっちゃいい場所だな」
ここを何週もすればだいぶレベルが上がるかもしれない。そう思った俺は、まずはここのボスを倒そうと奥へ進むことを決めた。
「おっ、階段か……地下何階まであるのやら」
降りてみると、地下は暗闇だった。うわ、松明あったかな……。
インベントリを見てみると、『幽玄の明かり』というアイテムがあった。これは……。
―――あ、一個だけあげるね―――
「っ、コルネがあの時にくれた……行き先を示してくれる明かり系のアイテムか。うわー、マジか。後で礼を言っとこ」
あの時のアイテムがここで役に立つとはな。最高かよ。使ってみると、目の前に青い炎が浮かび上がり、ふわふわと動いて俺を案内してくれた。マジでありがてえ。
青い炎に従って歩いて行くと、土でできたゴーレムが目の前に現れた。ダンジョン全てを塞いでいるから邪魔だ。
「どけ」
と『白龍』を連射すると、弾丸の全てはゴーレムの体に飲み込まれてしまう。構わず撃ち続けると、今度はゴーレムから泥が放たれ、べちゃりと体にまとわりつく。うわ、気持ち悪っ。
「何だ……? っ! AGI低下か!」
『ウオオオオオッ!!』
「チッ!」
だいぶ動きを遅くされてしまった。70%くらいAGI落ちてないか!?
そんなところに巨大な右腕が迫り、俺は腕をクロスさせて防御の姿勢を取る。しかし、あまりの破壊力に俺はとてつもない勢いで吹き飛ばされた。
「やっべ……! 【邪淵の災呪】!」
一撃でHPが吹き飛ばされたことに焦りつつ、一度蘇生する。対象、つまりゴーレムのHPを半減させ、他のステータスも30%低下させながら俺は飛び退いた。
「こいつ普通に強いな……」
どう勝ったものかな。




