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第六十六話

 三十分後、先程「ここがいい!」となった場所に集まっていた。やっぱここ良いわ。

メンバーは、俺、リエ、ユカ、ココ姉、サキ姉、リン、クリスの七人だ。すっげえ嫌な予感しかしねえ。


「で、彼女がクランメンバー予定のクリス。うん。クリス」


「〈魔王軍〉に入れてもらえるかは分からないけどぉ、もし入ったら、よろしくねぇ~」

「多分入ると思うから、そうなったらよろしくね。クリスちゃん」

「……お兄ちゃん。もしかしてですけど……」


 リンのみが気付き、こちらに視線を送る。俺は微妙な顔になりながらコクリと頷く。それを見たリンは、小さく天を仰いだ。マジかよ……と言わんばかりに。しかしそれでも話は続く。


「えっと……クリスです……。よろしく、お願いします……。あの、ココネさんって言うと……投資家の心響さんですか……?」


「わぁ~、知ってくれてるのねぇ~! 顔出ししてるからそれほど問題ではないのだけれど、気が付いてくれると嬉しいわぁ~!」


「それと……サキさんは、あの、モデルの沙紀さんですよ……ね? テレビとか雑誌で見たことあるんですけど……」


「えっ、知っているの!? ありがとう~!」


「「「「…………」」」」


 俺、リエ、ユカ、リンが気まずい顔をする。最強の有名人がそれを言うからだ。それに気が付かない二人は、えへへ~、などと照れている。いや、別に悪いことではないんだけど。


「クリス。どうだ? そろそろじゃないか?」


「そ、そうだね……仮にダメだったらどうするの……?」


「箝口令を敷いて、クランへの加入を禁止するかな。酷かったら記憶が飛ぶまで殴るけど」


「え、いや、そこまではしなくても……」


「それは冗談にしても、そこまではしてやるって意味だ。さあ、好きに言うといい」


 姉二人が不思議そうな顔をする。妹が気付いてんだぞ。ちっとは気付けよ。


「えっと……私は……朝比奈クリスなんです……眼鏡を取らないと分かりにくいと思うんですけど、朝比奈クリスです」


「あぁ~、だから、ここに呼び出したり警戒したりしたのねぇ~。ほら、サキってば君のファンだから」


「やっぱりココお姉ちゃんはこんな反応になるんだ……。多分、そこまではお兄ちゃんの想定内だと思うんだけど、問題はサキお姉ちゃ―――」


「……ほ、本当に……クリスちゃんなの? ほんとのほんとに!?」


「ほ、本当です……。眼鏡は取りたくないんですけど……」


「ちょ、ちょっとこっちに来てもらっていい……!?」


 サキ姉とクリスがこちらに背を向けながら場を離れ、こそこそと何かを話している。確認のための秘密の話だろうか。


「本物だった」「うううう……」


 クリスが胸を押さえながらヨボヨボと歩いてきた。ナニをしたかは聞かない。女を怖く感じまう。

そして、運命の時だ。


「さあクリス、選ぶんだ。この人たちをクランに入れてもいいか否かを。俺たちはクリスの意見を尊重する」


「嫌だったら断っていいんだからね、クリスちゃん!!」

「クリス。今回の決定は全てクリスにかかってる」


 完全にクリスに委ねる組、リエ、ユカ。


「できることなら入れてほしいわぁ~。お願いぃ~、クリスちゃん」

「私も、クリスちゃんが朝比奈クリスだって知っても普通に接したい! だから、お願い!」

「姉二人の言葉を借りるつもりはありませんが、私からもお願いします。お兄ちゃんと一緒のクランに入りたいんです」


「ん?」


 クランに入れてと懇願する組、ココネ、サキ、リン。さて、どうなるかね。


「わ、私は……」


 全員の視線がクリスに集まる。そして、少々重い雰囲気の中クリスは口を開いた。


「みなさんにも……クランに……参加してほしいです……」


 俺の右側から、歓声が上がる。マジか。クリス。


「それじゃぁ~、これからよろしくねぇ~、みんな」

「ほんっとうに、よろしくね!」

「よろしくお願いします」


「よろしくおねがいしますー! そう言えば、ココネさんたちっていつまでカナデのうちに滞在するつもりなんですか?」


「え~? 一週間の予定だったけど、もう少し長引かせてもいいかしらぁ~?」


 そこでここ姉がこちらを見る。俺の意見は変わらない。満面の笑みで答えた。


「そのまま帰ってもらって。別にどこに居ようとFFOログインすればいつでも会えるんだし」


「あ、そうだったね。まあ、一週間は私たちもカナデ()遊ばせてもらおうかな!」


「お兄ちゃん……暇でしょ?」


「ひどい」


 暇って言われたぜ。まあ、暇ではあるけど。

そして話していくうちに、運営の新たな処置、“サーバー間移動”についてを深く知ることができた。三人は色々と情報を集めたりしていたようだ。というか、それ以前に持っている情報量が違いすぎる。


 今までこのゲームにログインしている時にここ姉たちや、リアルでの知り合いに会えなかったのは、日本国内でもサーバーが分けられていたからだ。

 北海道・東北サーバー、関東サーバー、近畿サーバー、中部サーバー、中四国サーバー、九州サーバーの六つであり、時折その中でも分けられるそうだ。一日のログイン数が増えたら。


「サーバー一つ辺りに一つしかないユニーク装備ってことは、違うサーバーに行けば、『魔王シリーズ』があったりするのか?」


「いや、それは違うみたい。それは、国内サーバー一つ辺りって意味で、他は国外に一つずつあるみたいだよ。まあ、それも一般的なユニーク装備で、本当にトップクラスの装備はそうじゃないみたいだけど」


「ん? じゃあ、イベントの時はどうなってるんだ? いつもよりログイン人数が多くなるだろ? それなのに、あのフィールド一つでカバーできるのか?」


「お兄ちゃん、よく考えてください。あのイベント用マップは通常の階層よりも広くて、ダンジョンとかの異空間、洞窟とかの地下空間があるんですよ。さらには、イベント開始時に自動的に別サーバーに振り分けられるんです。まあ、ここら一帯の人は大体同じサーバーですが……」


「うん……?」


 少し整理して考える。つまり、ここら一帯に住んでいる俺とかアオイとかリエとかユカとかは同じフィールドにいたが、少し遠かった姉ちゃんたちは同じサーバーに居なかった、と。


「ってことは、別のサーバーにはもっと強い人たちがいるのか。それはまた面白そうだな」


「私ねぇ~運営にお友達がいるんだけどぉ~、その人曰く、『階層が増える毎にサーバーが統一されていく』らしいわよぉ」


「既に関東と近畿は統一されているしね。イベントの時にはどうなるか知らないけども」


「なるほどなるほど。つまり、並行世界のようなものか。うんうん……」


 やっぱり強者は他にいて、階層が増える毎にサーバーが統一されるということなので、プレイヤーが増えるということか。確かに受け入れられる人数が倍になるようなもんだしな。

どこにでも強者はいるのか。血沸き肉躍るってやつだ。

 その時、ピロンッ! とメッセージが来たことに気付く。見てみると、クランメンバーからの送金完了のメッセージだった。


「あっ、皆からゴールドが送られてきた。大量に」


「私達からも送る。これで合計、六千七百万ゴールド」


「よしっ! 送金完了! あとはクリスとココネさんたち…‥」


「お、送ったわ……三千万だけだけど……」


「十分高えよ」


 これで九千七百万ゴールド。そこから、ココ姉が千八百万、サキ姉が五百万ゴールドを支払い、丁度一億二千万ゴールドとなった。何の迷いもなく豪邸を買う。そして、ギルド名を打ち込んだ。


『ギルド名:〈魔王軍〉を承認しました。ここ周辺の敷地は〈魔王軍〉所有となります』


「購入成功! この豪邸は俺たちのものだ!」


「「「「「「おーー!!!」」」」」」


 やったねー、や、ちょっと憧れがあったから、良かったかも! などの歓喜の声が聞こえる。そして、ココ姉は気が付いたように言った。


「そういえばぁ、クランメンバーになった人たちって、全財産を投げ打ってこれを買わせてくれたのよねぇ? だったら、全部は無理だとしても、私のお金で少し戻せないかしらぁ? ほら、私まだ三千二百万持ってるしぃ……」


「あー、ココ姉がいいんならみんなとしてもそれがいいと思うが……いいのか?」


「いいわよぉ~、カナちゃんがみんなと仲良くするためにも、ね」


 というわけで、俺とサキ姉を除いたリエ、ユカ、クリス、コルネ、タキオンの五人に返金されることになった。まずココ姉が俺に二千万贈り、それを一人四百万ずつとして皆に送る。すると、みんな喜んでくれた。「ココネさんにありがとうって伝えといて!」と。


 その後はこの場の六人がクランメンバーとして登録し、ログアウトすることになった。

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