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第六十五話

大阪遠征とか、文化祭準備とか諸々終わったので、投稿します。夏休みの間は月曜日の感覚が無くて困っちゃいますね。

 黎明岬(れいめいみさき)


「……お? 建物あんじゃん。もしかして、クランホームに出来る?」


「できるんじゃない!? まずは見てみようよ!」


 近寄り、確認してみる。うわお。美しい豪邸だ。モダン建築ってやつだな。部屋の数も多そうだし、いいかも。中から見てみたいんだが……。


「これ、中に入ってみることもできるみたい。一万ゴールド支払ったら」


「マジで? じゃあ見てみるか」


 きっちり一万ゴールドを支払い、中に入らせてもらう。すると、シンプルな造りであり、自分たちで飾ることができるのだと分かる。ルームシェアのように見える。知らんけど。


 でっけえリビングに、使いやすそうな広いキッチン。それと、各部屋か。見てみると地下もあるようだ。拡張性も高いな。


 巨大な窓を見ると、黒く藍色の闇に染まった海がそこにあった。見ているだけで吸い込まれそうになる。夜空が反射していて、幻想的な景色だ。


「ここにしよう。決めた。ここだ」


「「早っ!?」」


「気に入った。他に目移りする前にここにしよう。まあ、純粋にこんなとこに住んでみたかったってのもあるし」


「まあ、確かに。私もこういうとこ好き。きっとこのゲームがより楽しくなるはず」


「そうだねー! 私もそう思う! だから、ちょっと待ってみない?」


「「?」」


「夜明け!」


「「あー」」


 こいつは俺たちに四時間待てというのか? 正気か? いや、確かにあと三時間ほどになってはいるけども、だ。せめてどっかのダンジョンとかに潜ったりしてないと無理だ。


「あれ? そう言えば、ここ姉たちから連絡あったか? 二階層来たぞーって」


「いや? まだ来てないよ! さすがに三人だったら無理だったのかなぁ?」


「んー・・・・・俺たちは八人で挑んだからあんだけ難易度上がっただけだろ? だったら、三人だったらもう少しまともなレベルに落ち着くんじゃねえのかな」


「それもそう」


 その瞬間、三人のフレンド欄にメッセージが届く。フレンド申請だ。三人は、「あちゃー」とした顔になりながらそれを承諾する。すると、メッセージが送られてきた。心響たちだ。


『二階層に着いてかなちゃんたちを探してるんだけど、見つからないのぉ~』


『今どこかのダンジョンに潜ってたりするのかな? でも、クランホームを探すって言ってたよね?』


『見つかりましたか?』


 思わずため息を吐いてしまう。というか、三人ともゲームでは本名なんだな……。


「……三人別々に違うメッセージを送ってくんじゃねえよ……内容は連結してるし……」


「あ、クリアしてるんだ。流石」


「あれ? 今ログアウトされたらマズくない? 今現実は無防備でしょ?」


「「おうっふ」」


 急いでこの豪邸を買おうとする。金額を見てみると、一億二千万ゴールド。おっと? それは想定外なんだが!?


「……えー、俺の残金が五百万ゴールドとちょっとだ」

「私は、その……二百万程……」

「ハンドガンで使ったばっかだから、三千万くらいしかない」


 三人合計で三千七百万ゴールド。すげえ。こんだけ理想と現実の差が開いていると思わなかった。

っていうか、相場は五千万じゃねえのかよ。どこがだよ。面影の欠片もねえじゃねえか。


「まあ、豪邸だし……それと、今まで買った人が安いものしか買ってなかったのかもしれないし」


「ちょっとみんなにメッセージ送るわ……。やべえなァ……」


 俺はクランメンバー(予定)の五人にメッセージを送る。幸い、クリス以外の四人はすぐに返信が来た。それぞれこうだ。


コルネ『千万かなー……アイテムを売ればもうちょっと増えるかもだけどね』

アオイ『……三十。最近買い物をしたばかりだから』

タキオン『弾薬と装備以外は特に買わへんからな。二千万ほどあるわ』

カリノ『そもそも殆ど稼いでいませんので、一万しかありません。お力になれず、申し訳ありません』


「すっげ。一人異次元なのがいるぜ」「三十って……もしかして、三十ゴールドってコト!?」「最近買い物をしたばかりって言ってるし、そうじゃない?」


「「「…………」」」


 端数を除いて、大体六千七百万ゴールド。遠いな……。大体倍ほど欲しいんだが……。あとはクリスに頼むしかないか? いや、だけど多分今は習い事だろう。前習い事が忙しいって言ってたし。


「うーん……ココネさんたちに頼んでみたら? ほら、現実でも稼いでいる人だし、このゲームでも上手く稼いでるんじゃないかな?」


「見返りになんか要求されそう」


「未来が視える」「これが【世界観察】なのかなっ!?」


「まあ、聞くだけ聞いてみるわ……」


 すっごく嫌な予感がするが、クランのために、と三人に聞いてみる。残金の確認だ。うわ、詐欺を企んでるみたい。


『残金は四千万あるわぁ~』

『今は千万持ってるよ』

『四十五しかありません』


「めっちゃ持っとるやんけ。何だこいつら」

「やりこんでるね~」

「いや、四十五がいるんだけど。アオイを彷彿とさせるんだけど」


 それから、それを貰えないか聞いてみることにした。すると、返答は意外かつ想定内だった。


『ん~、カナちゃんのクランに入れてくれるっていうのなら、いいわよぉ~?』

『私も、〈魔王軍〉に入れてくれるんだったらあげる!』

『私は持っていませんが、普通に入れてください』


「想定の範囲内なんだけど……想定したくなかったなァ……」


「別にいいんじゃない? ここまで来たら。それに、いつでも会えるよォ~? 愛しの従妹たちと♡」


「そのツラ潰すぞ」「なんで!?」


「一先ずは、合流してからじゃない? じゃないと、何とも言えないでしょ」


「そうだな……合流場所決めて、落ち合うか」



♢ ♢ ♢ ♢ ♢



 結局、どの階層でも分かりやすい中央広場にした。なんて分かりやすいんだ。行ってみると、既にココ姉以外のサキ姉とリンは揃っていた。あれ? ココ姉はいずこ?


「あ、ココ姉ならナンパされて戦闘可能エリア(・・・・・・・)に行ったよ。行く前に、「ムカつく面だわぁ~」って呟いてたから悲惨なことになってると思う」


「やっぱり、ココお姉ちゃんはキレると怖い……」


 取り敢えず相手の男性の精神が死なないことを祈りつつ、二人と話しておく。クランに入りたいことについてだ。


 クラン〈魔王軍〉は全員知り合いで構成される。「お前誰!?」という状況は生まないし、秘密もそう作らない。

 そしてそれ故に、〈魔王軍〉に入る時の条件として最大の関所がクリスの存在だ。


「なあ、二人って、朝比奈クリスってやつ知ってるか?」


「えっ、それは勿論! ファンだもん! 家に来たら沢山グッズが置いてあるよ!」

「まあ、人並みには知ってますけど、私にはお兄ちゃんがいますから。別にそこまで惹かれませんね」


「ふむ。これをどう見ますかね? ユカさんや」


「サキさんはアウト。リンちゃんはセーフだと見ます。あなたはどう思いますか? リエさんや」


「私も同じく、アウトとセーフですねぇ」


 これはマズイ気がする、と、俺たちは視線で会話をする。知られたら詰む気がするからだ。サキ姉はクランに入れられないかも。


「まあでも、実際に会ったとしたら一般人と殆ど同じように接するかな。相手に迷惑かけちゃうだろうし、歳も近いでしょ? だったら、そっちの方がいいかなって」


「「「えっ」」」


「まあ、願望だけどね。あははは」


「「「……」」」


 やべえ、どうする……と、眼を見合わせる俺達三人。とりあえず、クリスに聞いてみようと思い、メッセージを送る。その間にココ姉が帰って来た。


「ただいまぁ~。あ、もう来てたのねぇ~。ごめんねぇ、ちょっと手間取っちゃってぇ」


「いえ、私たちも今来たところなので。……ナンパしてきた人はどうなったんですか?」


「うーん、ユカちゃん。世の中には知らない方がいいこともあるのよぉ?」


「……はい」


 和茶話茶している間に返事が返って来た。まずは、残金の話だ。


『一応……五千万ゴールドはあるけど……今日の晩に買い物をするつもりだから、三千万になると思ってもらえれば』


『そのうちのどれくらいくれる? いや、一度建物を見てみてくれていいんだけど』


『三千万全部いいよ。それで、サキさんたちのことだけど、一度会わせてみてくれないかな。やっぱり、一度会ってみないとどんな人か分からないし……』


『分かった。いつ、どこで合流だ?』


『三十分後、クランホーム予定地でいい? 一応見学してみたくて』


『分かった。マップのスクショを送っておく』


 さて、これが吉と出るか凶と出るか……。まあ、多少の凶は俺が塗りつぶせばいい。そう、考えたのだった。

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