第六話
『キシャアッ!』ドバッ
「ん? すまんな、毒はもう喰らわないんだわ」
毒をかけてきた蛇を一瞥すると、右手のデザー……【狩人の血鷲】にて撃ち抜いた。
あれから三十分以上歩いてきた。道は一本だが、広く、深く、敵が多い。階段も三回降りてきたため、今は地下三階だ。とか言っているうちに、目の前が階段。つまりこれで四回目か。
「ん? 扉? ここが終着点か?」
階段を下りた先には、巨大な扉があった。
なんだ、終わりか。そう思い、扉を開く。すると、目の前には先ほどの毒蛇を少し大きくした程度の竜がいた。さながら毒竜か。
「んー、お前がラスボスなのか? ま、ダメージ次第か!」
容赦なく弾丸を三発撃ち出す。そして対して回避行動をとらなかった蛇に突き刺さった。しかし、蛇の上のHPバーは変動なし。あれ? 攻撃力が足りない? と思っていると
『ギシェアアアアアッ!!!』
「あっ、動き出した。なんだ、待機時間だったのかよ。三発返せよ」
パァン、パァンッ! と五発打ち込む。そしてそれは大きくHPバーを動かした。なんだ、DEFが少ないのか、HPが少ないのか、ダメージの入りは悪くない。毒を吐かれようと、俺には【毒無効】がある。こいつ、自分の劣化版のせいで自分の攻撃手段失ってんじゃん。
そして、大して時間も掛からずに倒し切った。
「……これがラスボス? いやいや、そんなわけ……っと」
奥に扉が現れる。やっぱり、中ボスだったのか。
扉に近づき、ゆっくりと押す。すると、ギギィギ……という音と共に扉は開かれた。
「っと、今度は巨大蝙蝠と電気ネズミか。さっき出てきたモンスターが巨大になって出てきてるのか?」
とすると、状態異常は大して気にしなくてもいいな。後は物理攻撃の回避を意識すればいい。
『ビイカアアッッ!!』『キエエエエッッ!!』
「第二ラウンドか。行くぜっ! 【災厄伝播】!」
ゴォン! という鐘が鳴るような音がし、足元に赤い円形の魔法陣が描かれる。これが、STRが2.0倍される領域か。これは、一秒ごとに広がっていく……と。
先に電気ネズミを仕留めよう……と思ったのだが、すでに先ほどの位置には居なかった。どこだ? すると、足元に黄色い魔法陣が。あ、これあかんやつ。
「退避退避ィッ!」
すると、その魔法陣から電気の奔流が。さながら逆流する電気の瀑布だ。これは【麻痺】だけじゃないな。物理的にダメージを負う。まだHP20しかないから、一撃も貰えない。DEFも0だし。
「チッ、先にお前だ! この無能が!」
上空の蝙蝠に銃口を向ける。こいつ、叫ぶだけで何もしないし。ならば邪魔になる前に堕とす。
パァァンッ! という妙に間延びした軽い音が響き、弾丸が蝙蝠に襲い掛かる。二発連続して撃ったことで、音が延びたのだ。
放たれた弾丸は蝙蝠の羽の付け根を穿ち、きっちりと地に堕とした。なんか俺、めっちゃエイムよくね?
「よし、一匹消えたな。後はお前だ! 電気ネズミ!」
『ビィカァッ!!』
目の前に立ち塞がったネズミは身を低くし、タメを作る。その隙を見逃さず、しっかりと三発打ち込むが、ギリギリ間に合わなかった。爆発的な加速での突進。ステータスでのごり押しが一番きついかもな。
寸前右に転がることでタックルを回避。通りすがりに追撃を……って、弾がねえ!?
急いでリロードをするが、当然相手も体勢を立て直している。そして、またもタックル。さっきよりも速い―――
「っぶな!? 止まれピ〇チュウ! 俺の傍に近寄るなああーッ!!」
『ビィィィカァァ!!!』
雄叫びと共に雷が落ちて来る。あの、天井を無視しないで貰っていいですか。降って来る直前で転がったおかげでギリギリ当たらなかった。ほんとにやめてよ。
「けどまあ、限界は見えてきたかな」
照準を電気ネズミの少し先に合わせる。そして、タックルと同時に引き金を引く。すると、丁度のタイミングでネズミにヒットした。
『ビカッ!?』
「隙ありィ!!」
パァァァンッ! パァン! と、何発も打ちまくる。一瞬たりとも動かさない。そして、マガジンをさらに二本使い、ようやく倒しきった。妙に硬い奴だ。ネズミのくせに。
まあでも、武器スキルとかまともな装備やらも無い状態で、中ボスをあんだけの弾丸で倒せたのは、やはり【災厄伝播】の力か。強いな。
「っと、休む間もないな」
奥に扉が現れた。思わず苦笑いしてしまう。せめて十分だけ待って。
というわけで少しの間休息し、扉へ向かう。
「さて、この流れで行くと……あいつか? いや、あいつらか?」
扉を開くと予想通り、炎を纏った猫と、冷気を放つ犬がいた。もちろん、巨大化している。こちらもまた状態異常は無効化しているが、体当たりと尻尾の薙ぎ払いが厄介そうだな。
『フニャーッ!』『ワオーンッ!』
「【災厄伝播】! と……あれだ。【ピンポイントアタック】!」
何かする前にシバく! と思い、急所を撃ち抜くスキルを使う。いいなこれ。ある程度の狙いをつけたら勝手に照準がつけられる。
パァァァンッ!! パァァンッ! という音が洞窟内に響き渡る。猫に三発、犬に二発ずつだ。ヤッバ。今更だけど、銃乱射するのめっちゃ楽しい。
『ンニャッ!? ニャァァァァァッ!!』
「あっ、ちょっと待って。炎の爪は聞いてない。止めてよ」
『ヴォァァァァンッ!!』
「それを犬の鳴き声とは言わねえよ。なんだよ、ヴォァァァァンッ! って。暴走族か」
ジェアッ! という、猫が発してはいけない声を聞きながら、迫りくる凶悪な爪を半身になりながら躱す。あっ、これ一撃即死のタイプだわ。熱を感じる。すると、背後から殺気が!
「チッ、挟撃はダメだろ! 初心者相手に!」
『ワォンッ!』
「冷凍光線!」と言わんばかりのビームを口から放つ犬。ブレスじゃねえわ。ビームだわ。一撃即死のタイプ。急に凶悪になってくるじゃん。敵。
「【ピンポイントアタック】! 【天災への反抗】ぅ!」
敵が二体いるので、ステータスが2%上がる。やったね!
パァンッ! パァァンッ!!
「! 外したかぁ……。ちょっと残弾が心許無いんだけど……。しっかり当たってくれよ」
そういいながらも、【ピンポイントアタック】を発動しながら弾丸を打ち込む。今度はしっかり急所にあたった。HPバーも残り一割ほど。焦らず、丁寧に削り切る。
『ニャア゛ッ!』『オ゛ォンッ!!』
「……なるほど。遠距離戦を望むか」
距離を取る犬猫。雄叫びと共に、周囲に炎の塊と氷柱の槍が生まれる。いや、そこまでされたら銃使うしかないじゃん……。弾薬の節約大作戦がッ!
ドドドドドドッ! と、氷の槍が放たれる。これまた一撃即死だな、多分。正面に駆け出すことで、射出角度の死角を狙って回避する。すると、目の前には炎が。
「っぶな!? 人の目の前に炎とか出してんじゃねえよ! あぶねえだろ!」
銃器を使っているこちらも大概だが、と思いながらも寸分の違いなく急所を撃ち抜く。【ピンポイントショット】を使っていないと、通常射撃の急所はあまり意味が無いようだ。プレイヤー相手なら、ヘッドショット有効なんだろうか?
「おっ、あと少しか。だったら、これで終いだな!」
それぞれに二発ずつ打ち込み、終幕を迎える。二体は光となって消えた。
「はー、やっと終わりか。洞窟内で出てきたモンスターはもう五種類くらいいたが……最初から最後までずっと出てきたのは、蛇と蝙蝠と鼠と犬猫だけだから、これでラストか? ってか、そうであれ」
最初の地点でいろんな奴に襲われただけで、あの後も出てきたのは先ほどの五種類だけだ。ならば、ボスもあの五種類だけだと信じたいんだが……。
現実は非常なもので、目の前には扉が現れる。俺は、渋い顔をしながら扉に手をかける。
「さて、次は石化させてくるモグラか……意味の分からん発狂のする鳥か?」
ゆっくりと扉を押す。正直、少し休みたかったが、一度休んでしまったらもう動けない気がしたのだ。
そして、今までとは一線を画す巨大な部屋。その中心には、今までに会ったことのないモンスターが立っていた。それは、数多のモンスターが混ざっている。
「ああ、キメラかぁ……」
ダンジョン名『混成魔獣の巣』
ピ○チュウ 冷凍光線
ポケモン
「俺の傍に近寄るなああーッ!!」
言わずと知れたジョジョ五部のやつ。