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第六十三話

 俺とタキオンが主にフィールドを駆けまわり、鹿のヘイトを集める。時折背中に乗ってみたりもするが、牙のような樹が背中から生えて来るのでそれほど長時間は乗れない。とことん樹を操る鹿だな。

 それに何より、体力が多い。果実を破壊することでステータスを落としているはずなのだが、こいつなんと自然治癒能力を持っていやがった。マジでクソ。


「この回復能力マジうぜえなァ! 自動回復はセコイだろ!」


『……自動回復持ちが何か言ってる』『装備脱いでから言ってほしいよね!』『ある意味バカだから』『自動回復持ち……?』『【不絶の混沌】っていうスキルがあるんだよ』


 女子組からの一斉批判。俺じゃなかったら泣いちゃうね。ダイヤのメンタルを持つ俺はそれに挫けず【(つらね)】を使っていい感じに威嚇する。


「これでっ、最後の果実だよっ!」


 ドパァンッ! と聞こえたと思うと、最後の銀色の果実が撃ち抜かれていた。もうこれ以上のステータス低下と能力剥奪は無い。ようやくまともな戦いになりそうだ。


『ファアアアアアッ!!!!!』


「あ、怒ってる。第二形態かな。みんな、頑張って」


「私も何もできませんが、頑張ってください……!」


 応援する生産職と幼女に、タキオンが超高速で移動しながらツッコむ。今現在使っているスキルは、【加速】、【超加速】の二つらしい。重ね掛け強い。


「おおーいカリノぉ。オノレは多分ダメージ喰らわんやろ!? ちょっとは戦いぃや!」


「うっ」


「ん? タキオン。多分ダメージ喰らわねえってどういうことだ?」


「いや、そのまんまやで? あいつが一番頑張って上げとるステータスはDEFやし。『チュートリアルでのダメージが痛かったから! 多少のスピードを捨ててもダメージを減らすしかないんです!』だそうや」


「聞いたことのある理由だな……痛いのが嫌だから防御力をあげるってのは」


「……多分異世界の文化だと思う。読者もそう思ってる」


「「は? 読者??」」


 【影結び】で俺の影に転移し、鹿の攻撃を回避したアオイ。少し電波を受信しているようだが、今はそれを気にしている余裕はない。


「まあ、わざわざ攻撃を受けに行く意味は無い。俺達で倒し切ろう。攻撃を避けながら攻撃さえすれば―――」


「おらあっ!」


 途端にタキオンが俺とアオイを突き飛ばす。すると、足元から樹が飛び出してきた。よく分かったな!?


「ゆっくり話してる暇は無いみたいやで! そろそろ決めてもええんちゃうん!?」


「んー……確かに、そろそろスキル解放してもいいかもしれない。削り切れないのも、じれったいしな」


「……【冥府葬送】」


 無慈悲な一撃……三撃? にて鹿を屠るアオイ。ハイパー無慈悲。くっ、頭が!

それを見た皆は口を開いて驚いている。ボスすらも即死させられるとは思わなかったのだろう。だが俺は既に色々な場所でボスを即死させている。今回のボスだって、果実があれば【即死無効】も持っていただろうに。


「ええええっ!? 終わりがこんなにあっさりしてていいのぉ!? 私たちの努力は何処へェ!?」


「即死があるならすぐ終わらせればよかった。『終ノ刃』とかでさ」


「それじゃあみんなの訓練にならないだろ? スキルに頼りきりになってたらさ、プレイヤースキルが落ちるだろうし」


「い、一理あるわね……。ええっと……このダンジョンの報酬は第二階層の解放のみ……なのかしら? 他には何も無し?」


「こういうところやから、それだけちゃうんか? まあ、いつか探索してみんのもありやろ」


「そうだねー。まあ、一回階層を解放したらこのダンジョン攻略する必要ないみたいだけどー」


「というわけで」


 パンッ、と手を叩き、皆の注目をこちらに集める。こちらへ来たカリノとクリス、それにコルネもだ。


「行こう。そろそろ一時間半が過ぎる。あんまり時間は残ってないからな」


「従妹さんが来るんですよね。現実の体が色々される前に……早く終わらせましょう」


「カ、カリノちゃん……言霊っていうのがあるからそういうのは止めよう? ね?」


「あ、はい……すみません」


 確かに現実の俺が襲われる可能性があるため、あまり長居は出来ない。さっさと扉を開―――っと、これ勝手に樹が避けて開くのか。

 その木のゲートをくぐり抜けると光に包まれ、新たなる第二階層にたどり着く。


『第二階層 ~侵食する科学~ を解放しました』


 へえ。今メニューで確認してみると、第一階層が『滅びへの始まり』、第二階層が『侵食する科学』らしい。不吉だなぁ。


「マップは……やっぱり一から集め直すのよね。それは大変そう」


「んー? そういえば、中央広場が宇宙船じゃなくなってなぁい? これ、ストーリー性があるのかな?」


「そう言われたら確かに、ホントだー! どっかのクエストで分かるのかな!?」


「……侵食する科学……察するに、こうだと思う。あくまで私の予想だけど」


 そう前置きを置いてアオイは予想を話し出す。だいたいこういうのっていっつも当たるよな。


①そもそも第一階層のモチーフは、『自然豊かな大地に落ちてきた宇宙船』だという話。これは周知の事実。

②侵食する科学、ということは、宇宙船はもう壊され、周辺の街が形成されていったのではないか。

③つまり、ここは第一階層の未来ではないか。


「ああ、確かに。その予想だったら何の違和感も無いな。まあ、俺のクエストに違和感が残るが……」


「『大罪シリーズ』っちゅうやつか? この階層が未来やったら、変わっとるんか? NPCも」


「でも、カナデは最後に『嫉妬』のクエストを貰ったって言った。その場所は分からないの?」


「あーそれが、第一階層の時は表示されてなかったんだよな。それも相まって第二階層を解放したかったんだが……」


 『クエスト』の項目から『嫉妬』を確認する。すると、マップの未だ黒い領域に紅い点が置かれていることを知った。マジか。


「ここに行けばいいのか……」


「つまり、第一階層にはサタンとベルフェゴールしかいなかったってこと!? 階層を跨いでのクエストってめっちゃ面倒じゃん!?」


「ま、まあ、そんだけ強いスキルになるってことだから……っ!? ふはははははっ!? あはははははっ!? ははははははっ!?!?」


 途端に体がくすぐられたような感覚になり、爆笑してしまう。俺、これ弱いんだ。


「カ、カナデ君!? きゅ、急にどうしたの……!?」


「……これは……ああ、そういう……」


「現実で体を弄られているみたい。早くログアウトしないと、やばいかも」


「ちょ、ちょっとユカ! カナデの家行くよ!」


「分かった。ちょっと、ログアウトする」


 第二階層からは何処でもログアウトが可能になった。アイテムは盗まれないようだ。いろんなユーザーから文句があったようだから。そのため、リエとユカはその場でログアウトすると、現実の俺の家に行ったのだった。


「あっはっはっはっはっは! あはははははっ! こっ、この手はぁっ……あはははっ! ……ここ(ねえ)っ! あはははははっ!」


「……ここ姉? ……ああ、その人が心響(ここね)さん? リエたちから聞いた」


「そ……あはははははっ! く、苦し……そうっ! あ、待って!? 沙紀姉えええっ!!」


「つ、次は沙紀さんになったのね……なんか、カナデ君が可哀そうかも……」


 こうして、「今日はとりあえず、解散かな?」とコルネが言ったので、その日は解散することになったのだった。

ハイパー無慈悲→エグゼイド


ストーリー性に関しては、運営がそれっぽく名前を付けているだけです。実際のところは、違います。

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