第六十二話
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FFO 中央広場
今日、カナデと第二階層を解放し、クラン〈魔王軍〉を結成しようとしていたところだ。そのため、カナデ以外の七人は中央広場に集まっていた。合流したタキオンが「うおっ!? べっぴんさんがいっぱいおる!?」と言い、みんなが照れるという茶番があったが、遅れて来たカリノが飛び蹴りをかまして自己紹介へ突入。何だかんだ仲良くなった。
その過程でタキオン、カリノ共にクリスのことを知ったが、特に騒ぎは無かった。いや、周辺のプレイヤーがこっちを見てザワザワとしたが、すぐに眼鏡を付け直し、アオイたちが体で壁を作ったので、バレなかった。
「えっ? ええええええっ!? カナデログインできないのォ!?」
「らしいよ。なんか、従妹が泊まりに来るんだっけ? そう言ってた。忘れてたーって」
「お、う、あー、あの人たちかぁ……。まあ、悪い人たちじゃないし、大丈夫……か!」
ユカとリエが微妙な顔をしながら「ま、まあ、大丈……夫?」と言った雰囲気を作る。それを見たコルネ達は、正直に疑問をぶつける。
「んー? そのカナデの従妹さんって、いい人なんでしょ? 何が心配なの?」
「えっとねぇ……。いやー、あの人たち、スキンシップが激しいというか、愛情表現が激しいというか……」
「うん。間違っては無い。あと、あの三人は家事が下手だから、料理を全てカナデにさせる」
「ええっ!? 四人分の料理を全部一人で!? 学生なのに!?」
「「まあ、あの気持ちは分かる」」
二人曰く、カナデの料理は美味しいらしい。本人も凝り性なため、そこそこ凝った料理が出て来るとか。前遊びに行った時、「上手くできたからあげる」と言われて食べさせてもらった七層オペラは忘れない、らしい。
「へえ。あいつ、そんな器用やったんやなぁ。わいは米も炊けんからな。羨ましいわ」
「タキオンさんはもう少し家庭的になるべきです。カナデさんを見習ってください」
「おお。幼女に怒られんのは心にクるものがあるな……。ということは何や? 今日はクランが作れないから、また明日っちゅうことか?」
「ま! そうなるよねー……。ちょっと残念だけど、明日になるかなー……」
皆が軽く肩を落としていると、その場にピロンッ! というメッセージが届いた音が響く。全員にだ。確認をしてみると、差出人はカナデだった。
「「「「「「「カナデぇ(さん)!?」」」」」」」
『今日ログインできるかも。ここ姉たちも一緒にだけど』
「「おっふぁぁ……」」
「「「「「これが従妹ってやつ!?」」」」」
どうやら、カナデは従妹と一緒にログインしてくるらしい。これはまずいかもしれん……と言った顔をするリエとユカ。他の五人は喜びながらも、なぜか一抹の悪寒を感じるのだった。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「よっ! ログインできたぞ!」
「よかったじゃんカナデ! ……ところで、沙紀さんたちは?」
「一回家にヘッドギアを取りに帰ってる。現実の俺が無防備なのがすごく怖い」
「ん? そんなに近いわけじゃないはず。なのに、一回帰ったの?」
「ああ。説明したら、
『ええっ!? かなちゃんFFOしてるの!? もぉ~、先に言ってよぉ~。申し訳ないことしちゃったしぃ』
『興味ないと思って持って来なかったよ』
『お兄ちゃん……ゲームするんだ……』
ってなって」
「「「「「ん……? かなちゃん?」」」」」
やばくね? 電車で二時間の距離をわざわざ戻って取りに帰ったんだぜ? 頭おかしいだろ。
だが、あの人たちが戻ってくる前にするべきことを済ませておく。
「まずは、第二階層を解放しよう。たしか、中央広場近くのダンジョンからいけるって聞いたが……」
「えっと……これのことじゃないかしら」
クリスがマップを広げながら指を指して来る。六人はマップを覗き込んだ。
指を指された地点はそう遠くない。否、それどころか、とても近い。今日追加されたようだ。
「……噂では、巨大な鹿……馬?みたいなモンスターが出るみたい。樹を操る」
「えー、樹ぃ? 燃やすにはリエちゃんの魔法を使うしかなくない?」
「んなもん純粋に撃てば壊れるやろ? 現実に近いとはいえ、そこはゲームやからな。耐久値を超えれば壊れるはずや」
「そんなものなのね……」
取り敢えず、戦ってみないことには分からない。というわけで、まずは行ってみることにした。
中央広場を北に出て、いつもとは違う場所の森へと入る。すると、意外と近くに入口があった。結構分かりやすいな。
「さ、行こうぜ」
総勢八人のデカいパーティーだが、問題ない。この歪なパーティーでも、何だかんだ上手くやれるのだろう。なぜか俺は、そう確信していた。
「っ! あと十秒くらいで来るよ! 変な猪!」
先に【世界観察】で視ていたコルネから声が上がる。ほんと便利なスキルだ。俺が『黒龍』を、リエが『蒼穹魔杖』を前方に構えると、静止の声が上がる。それはクリスからだった。あ、演技モードに入ってる。
「私にやらせて。そろそろ活躍しなきゃ」
「え、一人でいいのか?」
「だ、大丈夫。私に……任せて」
クリスはインベントリからルービックキューブを取り出す。その姿すら神々しく感じた。眼鏡を取ったクリスの艶やかな唇からその詠唱は放たれる。
「『記憶連想』“冥影鷹虚”」
クリスが持っていたルービックキューブのようなものが光を放ち、形を変える。それは、アオイが持っている『冥影鷹虚』と瓜二つだった。思わずアオイが武器を確認するほど。
「……うわっ。完璧な模倣だ」
「……模倣じゃない。これも本物」
演技状態になったクリスが告げ、前に銃口を向ける。反動が地味に強いはずだが、それを余裕をもって耐えている。俺の予想では使用者のステータスは反映しないはずだが……。素のステータスが高いのか?
ドドドドドドッ! という音と共に現れた猪は光と消えた。
「性能も同じ……確かに模倣じゃないんだね! かっこよかったよー! クリスちゃん!」
「……ありがと。カナデ君のいう従姉妹さんが来る前に終わらせよ」
「ほんとにこの違いは演技ってレベルじゃない」
クリスの言った通り、二時間以内にここを攻略せねばならない。いや、クラン等の手続きも含めてもっと急いだほうがいいか?
そこから先は、ダンジョンがダンジョンとして成り立っていなかった。そもそも、火力だけで言うのなら俺、アオイ、コルネ、リエだけで十分だ。それに加え、アオイの真似事ができるクリス、やろうと思えば既にボス部屋までたどり着いていてもおかしくないタキオンもいるのだ。カリノちゃんは戦わせていないが、戦力であることに変わりない。
「おっ? この扉ちゃうんか? ボス部屋は」
「そうだと思うよ。なんだか模様も彫ってあるし」
「じゃ、それぞれ準備してから挑むか。樹が出てきたらどうするか……。破壊出来るわ! って自信のあるやつは?」
そう聞くと、三名から手が上がる。アオイ、コルネ、クリスだ。
確かにアオイの『冥影鷹虚』でならば破壊できるだろう。多分。そして、それはクリスも破壊できることを表している。
コルネは、持ち前のスナイパー、『朧』で十分に破壊できると思っている。まあ、それが無理でも【貫通必至】があるため、絶対に破壊は出来るのだ。
「今回は作戦らしき作戦は無しだ。が、アレだ。みんな、超火力のスキルを使わずに銃と身体能力で攻略してくれ。その上で、ありったけの力で挑もう」
「「「「「「「おー!!!」」」」」」」
巨大な扉を押し開くと、黒い鹿が座っていた。超巨大の。眠っているようだ。
俺たちが入った瞬間に目を覚まし、その瞳を紅く染める。ごめんね、起こしちゃって。
起き切っていないのに、リエは何の容赦もなく、【業火弾】を放つ。罪悪感の欠片も持ってねえな。
「あれっ!? 私の魔法、効いてない!?」
「……多分、頭にある果実のせいだと思う。あの攻撃が着弾した時、あの青い果実が光ったから」
「んー? じゃあ、アレを落とせばいいのかな? 落とすよ?」
『朧』を構えるコルネ。当然だが、その場から動けなくなる。それを見た鹿は、地面から出した巨大な根を鞭のようにしならせながらコルネを叩き潰そうとした。
それを『無量メタル』で防ぎ、『黒龍』と『白龍』で道を作る。意外と容易く壊れた。入る前の話し合いは要らなかったな。
「行け!」
「任せて!」
ドパァンッ! という炸裂音を響かせながら放たれた弾丸は、眼で追えない速度で飛び、寸分違わず青い果実を撃ち抜く。すると、鹿のDEFが一割下がり、リエの【業火弾】も無効化されることは無かった。
「んじゃ、コルネは果実を集中砲火! 意識は俺、アオイ、リエ、タキオンで分散させる! クリスは二人の護衛を頼む!」
「えっ、えっ、二人って……わ、分かったけど……『記憶連想“黒龍”“白龍”』」
クリスは両手に俺のハンドガンを生成し、二丁拳銃となる。しかし、クリスは左手の『白龍』を見ると、うーん、と唸った。
「か、完全に性能をコピーできない……何なのあのハンドガン……」
こうして、〈魔王軍〉VS第一階層ボスの戦いの火ぶたが切って落とされた。
ここら辺の話を忘れているので、必死に思い出している最中です




