第五十七話
休憩時間です。トランプ楽しいよね。
俺とアオイが地下に籠り、ボードゲームで遊んでいた頃、ある二人組がその家に近づいていた。たまたま。
「んーっ! つっかれたなぁ……。ね、クリス。どこかで休まない?」
「そうだね。私も休みたい……かな。そこの家とかどうかしら」
「いいね。中に誰もいないといいけど」
「うーん……【世界観察】で中を見てみるのはどう?」
「このためだけに使うのはもったいないけど……まあ、いっか! 【世界観察】!」
【世界観察】。世界シリーズの一つであり、周辺どころか遠く離れた地すらも視ることができるスキル。スキル発動後の現象やプレイヤーの思考を読むことにより、簡易的な未来予知もできるえぐいスキルだ。上位互換である【世界観測】なんてものもあるが。
そして、スキルによって見えた空間。家の地下に生体反応が二つあったのだ。見覚えのある装備の二人が。
「……あー、クリス。このめっちゃ広いフィールドで、同じペアに遭遇する確率ってどれくらいかな?」
「えっ? ええっと……分からないわ……流石に。というか、それって……」
「私たちを倒したペアがそこで遊んでる」
「えーっと……カナデさんたち?」
「せいかーい」
見てみると、どうやら椅子に座ってゲームをしているようだ。だいぶボロボロな将棋だった。
自分たちも十二位に入ったことだし、と、コルネはカナデにメッセージを送る。混ぜてもらえないかな、と。
「おっ、いいってー。やったね、入ろ!」
「え、ええっ。でも、初めて会う人だし……」
「大丈夫大丈夫! 相手は第一回イベント五位と四位だから」
「今大丈夫な要素あった……?」
より不安になるクリスだったが、でも確かに遊びたい……という思いと板挟みになり、遂には折れた。そして、二人のいる地下室へ入ることになったのだった。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「あ、来た来た。よう。元気だったか?」
「あっ、えっ……こ、こんにちは……」
「こんにちはー。うわー、ランキング四位のアオイさんですよね!? 一回会ってみたかったんですよねー!」
「……どうも」
「あ、あの……カナデさん。私たちも、参加させてもらって……いい?」
「俺はもちろんいいが……アオイはどうだ?」
「……いいよ。やろ」
あと二手で詰みだった将棋を片付け、新しくゲームを用意する。といっても、まず何をするかは何も決まっていない。というか、俺遊ぶもの持ってないし。
簡単な話し合いの結果、トランプをすることになった。おっしゃ。勝ち申した。このトランプはクリスが取り出した。何で持ってるんだ。
「ババ抜き? 大富豪? スピード? 神経衰弱? ポーカー?」
「……なんでもできる」
「私、スピード? は、知らないかなぁ……他は知ってるけど」
「う、うーん……。神経衰弱とスピードは苦手で……」
「じゃ、まずはババ抜きすっか。その後に大富豪でいいだろ」
「「「さんせーい」」」
クリスが、四人の中心にトランプを置く。俺が、きらないのか? と聞こうとしたところ、自動でトランプが割り振られ始めた。うわ、VRだからこそできることだな。
手札を見てみると、その中央にジョーカーがいた。ムカつく面だ。ぶん殴ってやる。
手札の数は十二枚。そうだな。ちょっと、
「遊んでみるか……」
「これはゲームだよー? 現在進行形で遊んでるよーw」
「……頭おかしくなった?」
「ふふっ」
ピキッ、と俺の額に青筋が浮かぶが笑顔で沈める。オレ、怒ッテナイヨ。
しかし、叩き潰してやろうと思った俺は止まらない。
「……!? ん!?」
「えっと……カナデ君?」
「えぇっ!? ど、どういうこと!?」
俺の手札。その真ん中にいるジョーカーは―――
「さ、誰から始める?」
裏返しになり、皆を嗤っていた。
微妙な雰囲気が作られる。そりゃそうだ。ジョーカーの位置が分かっているババ抜きなんて面白みの欠片もない。普通ならな。
「あれっ? もしかしてだけど……」
「……ん?」「なんで……?」
「さて、あと二週だな」
そう。今の時間、結構な早さでカードが引かれていた。既に十五週ほどしている。そして、俺の残りのカード枚数は三枚。ジョーカーを含めてだ。
「……なんでそんなに少ないの……?」
「いや、初っ端の何週かで並びの規則性は分かったからな……。あとは自分の欲しいカードらへんを引くだけだろ」
「!? そんなに分かりやすい……!?」
「うん。アオイって基本どのゲームでも弱いよな」
「……」
無言で机の下に手を隠し、シャッフルするアオイ。だが、そんなものじゃ俺には勝てない。
「さて、今俺はハートの七が欲しい。そして、今現在それはお前が持っている」
「……何故そう思うの?」
「既に捨てられた七のカードは、スペードとダイヤ。そして、クローバーは今俺が持っている。あとはハートの七だけなんだが……それは最初俺が持っていた。しかし、二週目で引かれた。クリスが手札に加えた位置、コルネがそれを引いて手札に加えた位置から察するに、今現在アオイが引いている。そう思っただけだ」
「……じゃあ、残念だったね。外れだよ。私は持っていない」
「あー、外れたかー。じゃあ……」
俺はアオイの広げるカードの右端に触れる。何の変化もない。それから、スーっと左にスライドさせる。そして、二枚ずらしたところでピタリと止めた。すると、アオイの瞳の奥が揺らぐ。動揺の証だ。
「ありがとー。わざわざ七くれるなんて」
「……ッ」
「すっごい。今何があったのか分からなかったよ」
「わ、私も……」
この圧倒的記憶能力と簡単な知識。それにより、場のカードの位置を支配する。そして……。
「はい。これでラストだ。お疲れさまー」
「……あっ……」
「最後の一枚が揃ったじゃん! ということは……」
「え、これ私……見えてるジョーカーを取らないといけないの!?」
「そういうこと。いやー、わざわざ見せているジョーカーを取ってくれるなんて、クリスは優しいんだなー」
「ムカつく……」
「クリス!? 始めてクリスがムカつくって言ったの聞いた!」
「……カナデ。それほどまでに罪は重い」
「なんで!?」
取り敢えず圧勝したので、外に出て軽く運動をすることにした。脳内で繰り広げられていることでも、やはり疲れは来るのでな。あと、一応索敵も。三人が何も考えずに遊べるように。
ぐるぐると周囲を見渡し、気配を探る。しかし、特には何も感じなかった。
「まあ、誰もいないのが一番い―――」
カチッ
「へ?」
ボォーンッ!!
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「おっ、一つ起爆したようだね。キル数はどう?」
「上がってないよ。あぁ……やっぱり僕の罠は攻撃力が足りなかったんだ……あぁ」
「こらこらー、そんなに落ち込むなって~。俺達みたいな罠使いは、キル数にどうしてもムラが出るんだから、さ!」
「ま、まあね……でも、やっぱり安定して倒せるようにしたいよ……」
「うん。今二位のやつが言うセリフじゃないよね。下位のやつらに謝って」
「ごめんなさい……」
現在順位二位。リンチミンチ&トミカ ペア。トミカの能力で、マップの大半にばら撒かれたリンチミンチの罠。多少性能が落ちようとも、高威力かつ気が付かない罠は、数多のプレイヤーを散らしていった。
「痛った……【空蝉】が残っててよかったな……」




