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第四十九話

自分で書いてて、アイクキモイと思った。今からキャラを変えようか悩むほどに。

 アオイサイド


『―――――だろぉ!?』



「……なにか悲鳴が聞こえた気がする。だいぶ余裕な」


 カナデと別れた後、言われた通りに進み続けると、「お前かよぉ!?」という声と、「シッ! 静かに!」という声が聞こえてきた。本当にいるようだ。カナデの命は延びることになった。


(……この距離なのに【索敵Ⅱ】にかからない……。やっぱり、【隠匿Ⅱ】を持ってる……? だとしたら、早く相手を視認しないと―――ッ!)


 いまだ見えない敵の姿を探りながら、奥へ進んで行く。すると、何とも言えない悪寒を感じたので、急いで飛び退く。すると、目の前を紅い光が横切った。銃弾の後ではない。何かを振り回したような跡だ。


「チッ! 外しちまった! とんずらするぞ!」

「何やってんだよ馬鹿野郎! ひとまずはバレていないようだから、このまま逃げるぞ!」


「……すごい。聞こえているのに見えない。これじゃ狙いのつけようがない」


 アオイは、思わず呟いた。すごい、と。こんなスキルがあるのだったらクラスが暗殺者(アサシン)のカナデにでも教えてやろうか、と。ただ、アオイの考えは少し甘かった。


「……でも、攻撃の瞬間は姿が見えるんだ。関係無いけど。【サーモグラフィー】」


 サーモグラフィー。すなわち、体温を見て場所を知るのだ。これは、光学迷彩を使っているだけのものだ、と考えていたアオイだが、最近の光学迷彩は赤外線を操作してサーモグラフィーから隠れることもできるらしい。それを知らなかったアオイは少し混乱した。


「……あー、見えなかった。うーん。どうしよう」


「……おい、チャンスじゃないか? あいつ、見えてないってよ」

「やるんだな!? 今……! ここで!」


「……ん? あ、そのセリフ聞いたことある。進○の巨人だっけ」


「行けええええっ!」

「死ねええええっ!」


「……【小規模障壁】」


 ダダダダダダンッ!! と、障壁に弾が着弾する様子が見える。どうやら武器自体のSTRは高く無いようだ。大事なのはやはりナイフか。姿が見えない状態でナイフは本当に暗殺すぎる。

 ただ、先程の一瞬で視えた方向に軽く乱射してみると、「ギャッ!」という悲鳴と紅いダメージエフェクトが見えた。アオイのアサルトライフル、『冥影鷹虚(メイエイオウコ)』(CZ BREN 2)は高威力なため、一発当たっただけでもそこそこのダメージを与えられる。


 追撃も無いし、気配も感じなかったアオイは、ふっ、と息を吐きながら首を振った。


「……見えなくなった……。けど、布石は打った。あとはちょっと待つだけ」


 コキ、コキ、と首を鳴らしたアオイは先ほど自分が通って来た道をちらりと見た後、あるスキルを使った。


「【影結び】」


【影結び】

マークをつけた相手の場所に転移できる。一マークに一つ。クールタイム十分。


 その瞬間、アオイは自分の影に、ぬるん、と引き込まれ、その場から姿を消した。



♢ ♢ ♢ ♢ ♢



「あっぶねえ……なんで初撃で決めねえんだよ、馬鹿野郎!」


「わりぃ……ちょっと焦っちまって。というかあいつ、回避してなかったか?」


「確かになんか飛び退いてたんだよな……。だが、あいつのAGIは高くないっていう噂もあるくらいだし、これで逃げ切れただろ。ちゃんと回復したのか?」


「あ、ああ。つーか、意味わかんねえよ……。何で一発当たっただけでHPの半分を持っていかれるんだ……」


「それが上位勢ってやつだ……。なんか装備も変わってやがったし、強くなってんだろうな。ま、俺たちもユニークを装備してんだし、恐れずに行こうぜ!」


「ああ! そうだな!」


 励まし合う暗殺者二人。自分たちもだいぶ強くなったよな! な! と盛り上がっているところに、影が迫る。


「……お邪魔します」


「「………………ゑ……?」」


 後にその二人は語る。あれは悪魔だ、破壊の権化だ、と。声を上げる間もなく殺された、と。



♢ ♢ ♢ ♢ ♢



「……さて、さっきの場所に戻ろうか。多分周囲に人はいないだろうし……。いや」


 アオイは思わず、「はぁ」と、誰にもばれないように小さくため息をこぼした。なぜなら、足元にトラップを見つけたからだ。一時的に『麻痺』と『凍結』を付与するタイプ。このタイプの罠は第一回イベントで視た。巧妙に隠されていながら、明らかにここ踏むだろうな、という場所に置いてあるクソ罠。踏んだ後は他の罠が起動して爆破なりなんなりするのだろう。


「……リンチミンチ……だったっけ? めんどうなやつ……」


 恐らく本人は近くにいないだろう。そもそもそれならば罠の意味が無いからだ。


「……この辺はあいつのテリトリーか……。すぐに戻ろう」


 地面に注意を向けながら歩いていると、見知った気配が近くにいることに気が付いた。

いや、気配というよりも音。()を描いているような音と、シャインッ! キャインッ! という音だ。


「……本当にツイていない……。まさか、トップランカー二人がここに来るとは……」


 絵を描く音? いやいや。第二位にそんなプレイヤーがいたような? そう! みんな大好き! 芸術家のレオナルド君だよ!

 うん? 何かが光る音がしただって? それはそうだよ! 第一位がいるんだもの! そうだよね! 勇者アイク君だよ!


「……(あと八分……。それまで隠れさえすれば―――)」


コツ、コツ、コツ、コツ……


 来た。アオイは表情を強張らせる。


「おや? このあたりから匂いがするね。かわいい子の匂いだ」


「そんな気持ちの悪いことを言うもんじゃありませんよ、アイク。人がそれを聞いては、あなたを変態だと思うでしょう」


「冗談さ。それに、そういう意味の匂いではないよ。気配、という意味だ」


「ほっほっほ。それは失敬」


「にしても、本当にいるね……こっちかな? 【範囲攻撃】」


「っ!?」


 アオイは急いでその場から離脱する。なぜなら、アイクの武器『聖王ノ剣』、そのうちの右手のサブマシンガンがこちらに向いたからだ。重ねて、【範囲攻撃】。自分の得意技だというのに、こいつは、「それが通常技だよ?」といった風に撃って来る。ムカつく。


「んん? 今、音がしましたねぇ。アイク。あなたは前方を大きく見ていてください。私が捕縛します」


「ああ、任せるよ」


「では、行きますよ? 【世界芸術】」


 【世界芸術】。それは、世界をキャンバスとして見立て、その世界にあらゆるものを書き込み、具象化させると言ったスキルだ。カナデの【神々の権能】で生み出される『量メタル』と似たようなものだ。違うとすれば、『量メタル』の方が具現化の速度が圧倒的に早く、硬度があるということくらいだ。しかし、【世界芸術】の利点は別にある。その汎用性と範囲の広さだ。


「……!(周囲一帯に巨大な輪っかが……)」


「アイク。この輪は十秒後に閉じ切ります。そうすれば、否が応でも分かるでしょう。それに備えておいてください」


「分かった。ありがとう」


 あ、これマズイ。アオイはすぐさまカナデにメッセージを送った。次に自身のスキルを使い、状況を打開しようとする。


「……【範囲攻撃】【パワーアタック】【破壊の一射】【爆裂の一撃】【対物理特攻】【雷牢】」


「……! 出て来たね、リリィ。待っていたよ」

「これはこれは。面と向かってはやりたくないですねぇ。『竜巻』さんとは」


「……【会心必至】」


 持ちうるスキルを惜しげもなく使い、ある一つ(・・・・)のスキルを除いて攻撃をした。狙いはアイクとレオナルド。放たれた破壊の権化ともいえる一撃は、レオナルドが目の前に出した銀色の絵の具に阻まれた。


「いい攻撃だ……が、レオナルドの【世界芸術】を破るには至らないようだね」


「ほっほ。流石に焦りましたがねぇ。耐久値が残り10ではありませんか」


「だが、これで万策尽きたようだね。これで捕縛を完了す―――」


「……【冥府葬送】っ!」


 再度発動したスキル。まだ隠していたのか、とアイクは首を振る。無駄なことを、と。しかし、その認識は甘かった。


 ドドドドドドッ!! と放たれた弾丸はアイクとレオナルドに当たった。そして、そのHPを一瞬で消し飛ばしたのだ。二人が一度の死亡を許すスキルを持っていなければ、今のでどちらも死んでいた。


「!!!???」


「な、何が!?」


「……即死」


 二人は慌てて障壁を張る。対応術が分からない以上、こうやって身を守るしかないからだ。

その隙に離脱を―――と振り返ったアオイだが、その瞬間ぎゅっ、と、何かに抱き着かれたような感覚があった。腕と腰のあたりを見ると、虹色の輪っかだった。


「ふぅ。一時はどうなるかと思いましたが、捕縛は成功しましたねぇ。それにはスキル封印のスキルと、ステータス低下20%がかかっているので、逃げられないと思いますが」


「本当に……君は厄介なプレイヤーだったよ。だけど、ここまで来たら大丈夫だろう。文字通り万全を期した。これなら安全に殺せる」


「……ちっ。(カナデみたいに【捕縛無効】取っておけばよかった……。こんなところで……)」


 捕まった状態だが反抗的な目を向けるアオイに、アイクは「気に入った」と笑い、耳を疑うようなことを言う。


「いや、ただ殺すだけじゃ面白くないな。君ほどの美女だ。手に入れたくなるというのが男の性だろう」


「おっと? アイク。それは先ほどの会話に戻りますよ? 変態になりたいのですか?」


「さあね。まあ、なんにせよ―――」


 頑張って距離を取っていたアオイに、アイクの右手が近寄る。


「君はもう、俺のモ―――」






「なァに言ってんだこのクソ変態野郎ッ!!!!!」

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