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第四十七話

 扉を吹き飛ばした先、そこは少し広いだけの空間があった。まあ、いつも通りならここでボスが出て来るな。


「どんなのが来ると思うかね? 最近はあんまり生物系のモンスターと戦ってないからそういうの期待するわ」


「……さっき出てきた猪みたいなのも加味すると、なんかこの遺跡に住み着いている生物、みたいなコンセプトのが出てくると思う。だからどんなの、って言うのは分からないんだけど」


「まあ、そうだよな」


 そんな普通に予想し合っていると、突如地面がゴゴゴゴゴゴ……と揺れる。地震か? と思っていると、それが違うことに気付く。


 目の前の壁から、触手が出てきたのだ。ニョキニョキっと。うっわ、気持ち悪い。俺タコとかイカとか苦手なんだけど。


『……』ニュルニュルニュル


 全体が出てきてどんな敵か分かった。タコだ。うん。マジ蛸。


「んー。お前ああいうのいける系? 俺は無理」


「……すぐ殺ろう。さっさと出よう。全部解禁して構わない。さっきの使ってもいいから」


「……どうした?」


 なんかもう見ていられないレベルで震えている。なんだ? 触手に対して嫌な思い出でもあるのか?


「とりあえずこれ使うけど」


 未だ解除していなかった『神龍』を前方に撃ち放つ。【災厄伝播】がこちらの部屋に来なかったので、STRは6000だ。いや十分か。


「一撃で消し飛べやァッ!!」ドッパァァンッ!!


『……』モニュルルンッ! デュルンッ!!


「……!? なにそれ……?」


 なんと目の前のタコが液状化して俺の弾丸をすり抜けたのだ。ただでさえ弾数に制限がかかってんのに。あと一発だぞ。


「迂闊には使えねえな。『黒龍・白龍』」


「……あともう少しで【冥影葬送】が使えるのに。でも、あれは当たらないから意味が無い……?」


「んー……とりあえずあの液状化攻略のカギを探らねえとなァッ!」


 右腕の黒龍で牽制しながら接近する。八本の触手が鞭のようにしなり俺をベッシベシと叩こうとするが、全てギリギリで回避することで難を逃れる。そしてかなり肉薄した俺は、左腕の白龍をタコの触手の付け根に突きつけていた。


「【(つらね)】ッッ!!」


『……!』


「……ん? 今あのタコ……」


 電磁加速した弾丸を受けたタコは、一瞬体を硬直させながらもなんとか液状化で無傷として過ごす。思わず「なんだこいつ」と悪態をついたカナデ。またも動きを止めてしまい、タコの触手をがっつり受けてしまった。バッゴォッ! とおおよそ人間の出してはならない音を鳴らしながら壁に激突するカナデ。


「くっそこのタコが! 俺に【不絶の混沌】が無かったらどうしてくれたんだ! HP2まで落ちたんだぞコラ!」


「……いやタコだけど」


「【邪淵の災呪】! 【任務遂行】! 【怠惰】! 【権能:迎撃】ィッ!!」


「……あんまり聞いたことの無いスキルがちらほら」


 とりあえず対象を呪い、自身のAGIを上げて回復力も上昇。それに加えて貫通攻撃無効のDEF+20という豪華な強化を施しながら、相手の攻撃は自動で迎え撃つ最強の防御を用意。これが俗にいう、“カナデの強化フルコース ~マシマシの殺意を込めて~”だ。【憤怒】はクールタイム中なので使えない。おっと、フルコースじゃなかったな。


 こちらに襲い来る触手は圧倒的火力と弾幕にて撃ち落とす。全てダメージを与えられていないが。この液状化ガチでウザいな。

 とりあえず触手は全て【権能:迎撃】に任せておきながら、『黒龍』と『白龍』は全て胴体を狙う。しかしやはり液状化。この時点でぶちぎれそうになる。


「……カナデ。スイッチ」


「え? すいっち?」


「…………簡単に言えば交代して撃つってこと。ゲーム用語」


「……?? なるほど。ちょっとだけ分かった……かも。起きたらちょっと調べとくわ」


 ひとまず言われた通り下がり、アオイと場所を交代する。すると、アオイがあるスキルを発動させながら数発を撃ち放った。


「……【紫電】【オーバードライブ】」


「え、なにそれ」


 バチバヂィッ!! という音を響かせながら左手から紫色の雷が溢れ出し、一時的にタコの動きを止めた。そのタコに赤く染まった弾丸を浴びせるアオイ。すっげ。今度はちゃんとダメージが入ってる。


「……やっぱりそっか……」


「どういうことっすか」


「……多分このタコは電気系統の力で動きを止める。さっきのカナデのスキル【(つらね)】で動きを止めたのはそういうこと」


「ああ、確かに一瞬固まったわ。で、動きが止まってる間は液状化もなくなるのか。へー。よく気付いたな」


「……ふふ。そこまで分かったら、あとは余裕。私が【雷魔法】で動きを止めるから、カナデがラストアタックを持っていって」


「了解」


 簡易的な作戦会議を済ませ、俺たちはタコに相対する。その間、触手は俺のスキルで迎撃されている。そろそろ弾が尽きそうだな。俺のインベントリからブローニングM2用の弾が無くなったらこのスキルは発動できないので、そろそろ準備が必要だ。


「行くぞ」


「……【雷牢】」


『……!』モニュ……


 目の前に張られた黄色の檻に閉じ込められたタコ。そしてその檻は徐々に縮まっていく。やがてタコサイズに縮まると、タコにその檻が触れた。


 バヂヂヂヂヂッ!!


「……今!」


「『神龍起動』ッ! 【ピンポイントアタック】!」


 即座に起動した『神龍』にて、弱点をピンポイントで撃ち抜く。ドッパァァンッ!! という巨大な炸裂音を響かせながら放たれた弾丸は一撃でタコを撃ち抜き、タコは大量の紅いダメージエフェクトを散らしながら消えていった。


「……よし」


「おっしゃぁッ! ナイスー!」


「……ん、ナイス」


 軽くコツン、と拳を突き合わせ、喜びを分かち合う。前を見ると、全体的に黒いが白い文様が入っている箱が一つあった。これが宝だろうか?


「さて……開けるぞ?」


「……うん」


「オープンッ!」


 箱を開いてみると、装備でもスクロールでもなく、白い勾玉が入っていた。


「これは……え? 勾玉?」


「……そうっぽい。アイテムの説明欄は見た?」


「んっと……『未解禁』……だってさ」


「……え? まだ解禁されてないのにアイテムがあるの? 将来使うのかな?」


「じゃねえの? というか、そうじゃなかったらガチで無駄な時間になるから悲しくなるんだけど。うわー。これは、外に戻ったら急いで狩りを始めなきゃなー」


「……こっから上位層に駆け上がるには、一時間に四十キル程度の速度じゃないとダメ。だから―――」


 そこでアオイは俺に作戦(?)を伝える。なるほどな。グッドアイデア(笑)だ。にしても、こいつらしくない派手な作戦だ。現実でこいつと話すのが楽しみになった。


「とりあえず出ようぜ」


「……うん」


 魔法陣に乗りこみ、遺跡の外に出―――っと、ここは遺跡の外じゃない……?

 前回のイベントで俺がいたような建物があり、されど少し発展した……文明が少し進んでように見える地域だ。見たことの無い場所だな。


「……中央?」


「あー。確かに行ったことねえわ。なんでそんなに飛ばされてるか知らねえけど。で、やるのか?」


「……もちろん。『花火』」


 インベントリから打ち上げ花火を取り出したアオイは、床に置く。線香花火じゃねえぞ? 打ち上げ花火だ。でかい筒だ。


「……着火」


「おっ」


 中に打ち込んだ弾により着火した花火は、ヒュルルルルル……と空へ上がり、ドーンッ! といい音を響かせながら爆ぜる。少し曇った程度の空を明るくする花火だった。


「……いいね。これにメッセージを打ち込んで……と」


「へえ。その花火って、打ち込んだメッセージをそのまま表示してくれるんだ」


「……うん。だから、これで誘う。人を」


「そんなに上手くいくもんかね……」


 それから数発花火は撃ちあがった。なんと、


『ここに私たちがいる。全部倒すから、かかって来い』


 と書いてある。こいつマジか。という目でアオイを見てしまった。そういうクレイジーな役は俺だろうよ。というか、実際にそのメッセージで来るやつがいるのか……?


「……! 来た。二時の方向に二人」


「マジかよ。とりあえず七時の方向にいるやつはお前に頼む。二時の方は俺がシバく」


「……? 七時……? 【索敵Ⅱ】には引っ掛かってないけど……」


「だったらそいつは【隠匿Ⅱ】以上を持ってんだろ。大丈夫。絶対いる」


「……間違ってたら殴るから」


 半信半疑で飛び出すアオイを尻目に、俺は俺で右斜め前を向く。この近さなら視認できる。恐らく相手もこっちのことをマップ上で見つけてるだろうな。このくらいの距離なら【索敵】に映る。


「さて……アサルト持ちとマークスマン持ちか……。油断しなかったらいけるかな」


 この戦いで、俺は初めてDEFの暴力というものを味わう。

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