第四話
現実世界では奏、ゲーム世界ではカナデです。ゲームの中ではリアルの名前を出しません。(本人確認の時は許して……)
掲示板でいろいろ言われていた翌日。奏は、再度ログインしていた。
「いやいや。まさか俺が二日連続でログインすることになるとはな。ちょっと自分でも驚いたわ」
そう呟きながら、まずは、と店へ向かう。弾が尽きたのだ。昨日は散々だった……。と思い出す奏。
昨日は、延々と狼を狩り続けた。銃弾が尽きるまで。まさか、あんなタイプの戦闘になるとは思ってなかった。
一匹の狼が雄叫びを上げ、また増えて、それで増えた狼が雄叫びを上げて……といった感じで、減ることが無かった。結局、弾切れになってからはナイフ一本で逃げてきた。何とノーダメージ。やったね。
「今日は違う店で買ってみるか。生産職の人が店を出してるみたいだし」
この世界では、別に銃を撃つだけではなく、何かを“作る”という生き方もあるみたいだ。確かに、初ログインの時どう生きるも自由って言ってたしな。
そして、生産職はある程度の生産系スキルを保有している。銃の制作はもちろん、ポーション醸造、裁縫、やろうと思えば農業もできる。たしかに、自由な世界だ。
「あっ、こことかよさそう。いい雰囲気の店だな」
すみませーん、と言いながら、静かに入る。はい、少々お待ちください、と、鈴を転がしたような声が聞こえる。どこかで聞いたことがあるな。この声。いや、というか
「お待たせしました……って、奏? もしかして」
「あぁ、お前だったのか―――優華」
奥からは黒髪に青のメッシュが入り混じったロングの少女が出てきた。たしかにこのゲームは髪色とかを変えるのは自由だから、何の違和感もない。
俺をこのゲームに誘った幼馴染の一人、柳 優華。物作りが好きで、成績優秀な少女だ。頭はいいのだが、時折、ポンコツになる。俗にいう、天然というやつだ。現実世界では剣道をやっている。
「結局始めたんだ。なんだかんだ、しないのかと思ってた」
「なんだかんだしちまったよ。そんで、昨日の射撃でハマった」
「単純だね」
「やかましいわ」
「で? 二日目にして何を買いに来たの?」
「んー、基本的に弾薬かな。あとは、新しいハンドガン。ちょっと火力不足が否めなくて。何かあるかね?」
「うーん……これとかは?」
そういい、ショーケースの中の銃を指さす。おっと? これは―――
「【狩人の血鷲】。奏の好きな―――」
「デザートイーグルッ!? そんな手軽に買えるのかよッ!? マジで!? というか【砂漠の鷲】じゃねえのかよ! デザートだぞっ、desertッ!」
「……分かったから。落ち着いて。で、これを勧めたわけだけど、ハンドガンってどれも火力が変わらないから。だから、デザートイーグル……【狩人の血鷲】を勧めた。これはアサルトくらい火力出るし」
「なるほどぉ……いいねいいねぇ! 買うわ。決めた! いくら?」
「うーん、いつもは三十万ゴールドで売ってるんだけど」
そこでメニューを開き、所持金を確認する。二十三万ゴールド。流石に昨日の狩りじゃ足りなかったか。
「足りない……」
「だろうね。だから、二十万で売ってあげる。その代わり、カナデが得た素材を、優先してうちに流してくれるようにしてよ。そしたら割引してあげるから」
「えっ、そんなことでいいのか? じゃあ、交渉成立で」
「了解。運営に報告するからね」
「え、なにそれ」
優香に聞くと、運営に「こういう契約したよー」ということを報告することで、それを仕様として使用することができるそうだ。便利な機能だな。
「じゃあ、二十万ゴールドで【狩人の血鷲】。どうぞ」
「おおおおっ!! ありがとおっ!!」
「それと、私のプレイヤーネームは『ユカ』だから。ちゃんとユカって呼んで。フレンド登録しとく?」
「あ、しとくしとく」
それから互いにフレンド登録し、俺は店を離れた。これは試し撃ちしかないでしょ―――っと待て。
カランカラン!
「あ、おかえり。何か?」
「弾買ってなかった」
「あ、そうだね。いくつ買う?」
「ひとまず二箱。マグナム弾な」
「分かった。百ゴールドね」
「たっか」
これでも割引喰らってるはずなんだがな。ま、いいか。生産職は元からゲームに置かれてるNPCじゃなくて、プレイヤーなんだから、金も必要だよな。
「はい。二箱」
「ありがとー。じゃ、行ってくるわ」
「あ、ちょっと待って。そういえば、STRどれくらい?」
「え? 初期から弄ってないから……5のまんまだな」
「私が作ったデザートイーグルの反動を完全に抑えるには10くらい必要だから、使うなら上げといてね」
「分かった。サンキュー」
そうか。確かにデザートイーグルの反動は強いしな。それを抑えるためのSTRも多く必要になるに決まってるか。にしても、私の? 一般のやつはもっと必要なのかもな。
「あぁ、あとこれ。私が素材を取りに行く山とかは、結構状態異常の魔法使ってくる敵って多いから、持ってて悪いことは無いと思うよ。カナデがどこに行くかは知らないけど」
「へぇ~、いいのか? 貰えるもんは貰っとくけど」
「私たちが誘って始めたゲームだから。初心者へのサポートは大事。挫けて辞められたら立つ瀬がない」
「もしかして、これレア?」
「私オリジナル。完成度Ⅸの自信作。世界で十本しかないうちの五本を授けよう」
「えっ、マジかよ。ありがたく頂戴いたす」
「感謝しなさい」
状態異常無効のポーション。それを五本も貰った。状態異常耐性はよく聞くが、無効とは。世界に十本だけというのもうなずける。ありがたいな。インベントリにしまい、店から出た。
「―――またのお越しをお待ちしております」
メニューを開き、現在のレベルやステータスを確認する。
カナデ
Lv8 ステータスポイント残り:16
HP 10/10
MP 15/15
【STR 5】
【DEF 0〈+3〉】
【AGI 15〈+2〉】
【TEC 5】
装備
頭 『空欄』
体 『初期用装備:体』
右手 『初期用装備:手袋』
左手 『初期用装備:手袋』
靴 『初期用装備:靴』
装飾品 『空欄』
『空欄』
メイン武器 『狩人の血鷲 STR 25』スキル【バーストアタック】【空欄】
サブ武器 『初期用ナイフ STR 200』
スキル
【無し】
【バーストアタック】
イメージすることで、ハンドガンの連射速度、STRが一部上がる。パッシブスキル。
ふむふむ。なるほど。初期用ハンドガンより18も高いSTR。さすがだね、デザートイーグル。
で、これの反動を抑えるためにはSTRが10必要か……。残りのステータスポイントは16。これのうち5をSTRに振り、後の11はまた必要になったら、とした。というか、この【バーストアタック】とやらはユカが作ったから付いたのだろうか? いつか聞いてみるか……。
「にしても、昨日の狼は随分と美味い経験値だったな。普通こんなに急にレベルが上がるとは思えないんだが」
確かに結構な量の狼を殺したが、それでも五つ上がるとはな。まあ、レベルが高くて困ることは無いし、いいか。
「今日は山にでも行ってみるかな~。ユカが素材取りに行くって言ってた山に」
特に行きたいところもない。だから、先程の会話で出てきた場所に行くのだ。
さっ、ハイキングハイキング!
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「ここかぁ。うん。めっちゃリアルだな。いかにもな山」
めちゃくちゃ軽装で登山を始める俺。今のところ誰ともすれ違っていないが、誰か登頂した人はいるのだろうか。
まあ、特に急いでるわけでもないし、ゆっくり登るとしよう。
あっ、ちょっと大きめの鳥がいる。
パァンッ! パァンッ! パァンッ! パァンッ!
「あー、初期用のハンドガンよりも音はデカいのか。まあ、この程度なら別にいいや」
その後も襲い来る鳥たちを淡々と撃ち抜く。やべえ。気持ちいい。
照準をめちゃくちゃ丁寧にしなければ当たらない! というわけではないので、すごくやりやすい。
にしても、きちんと疲れを感じるんだな……。いや、疲労ッ! ってわけじゃないんだけど、なんかうわぁ……って感じの疲れがある。分かるか? 分かれ。
そして、ようやく中腹まで来た。ふぅ、と近場の岩に腰を下ろす。あぁ、疲れた。
「って、うん? こっちは……」
疲れているというのに、脇道を見つけて遊びに行ってしまう。どちらかといえば獣道か?
「ッ! しっかり敵も配備しやがって……」
パァァンッ! パァンッ!
「地味に焦ったな……。耐久力も上がってるし……」
さすがにここまでくると、敵も強くなってくる。一撃で死ぬのは変わらないが、数で襲ってきたり、広範囲の攻撃をしてきたりする。初心者相手にひどいや。
ギリギリで回避するが、これはいつか速度で負けて殺されるかもしれんな……あ、そうだ。
「ステータスポイントをAGIに振ればいいんだ」
残っていた11のステータスポイントを全てAGIに振る。これでかなりの速度になった。
回避も余裕をもってできるだろう。
っと、うん?
「これは……なんだ?」
獣道を行った先には、蔦によって覆い隠された扉があった。
ハンドガンでなければ余裕です。ただ、ユカの作ったデザートイーグルなので、強いです。後に解説が出てきます。




