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第四十四話

四千PVあざます!

 森の奥地・怠惰の家


「…………スピー、スピー」


「また寝てるのか。流石の怠惰だな。うん」


 この家は、家主が寝ていようが何だろうが、自動で大量の銃器が出て来る。まずはそれを攻略できたらいいだけだ。


 ガチャンガチャンガチャンッ!!!


「……! 出たな! 【権能:迎撃】!」


 こちらも背後にブローニングM2を二門展開。迎え撃つ構えだ。両者用意が整った瞬間、あちらの銃器がズドドドドドッ!! と、圧倒的な数の暴力を降り注がせる。

 しかし、こちらだって神の権能。それを全て叩き落とさんと、猛烈な勢いで対滅させていく。とんでもない戦いだ。しかし、当然撃ち漏らしだって出て来る。今回は、【不絶の混沌】をあんまり使わずに攻略してやるッ!


「オラアアアアアアッ!!!」


 とてつもなく集中し、ブローニングが撃ち漏らしてこちらに襲い掛かって来た弾丸は全て二丁の拳銃にて撃ち落とす。いや、正確には右手の黒龍が主だが。というか、左手の白龍で撃ち落としているのはあんまりないのだが。


「く、っそ! やっぱ、エイ、ムが……つけらんねえ、よ!」


 やはり二丁拳銃は慣れない。しかし、やはりロマンがあるから普通に楽しみたい。


「ってえな……だが、あと数分耐えれば俺の価値だァ!」


 何発も頬や脇腹を掠めるが、強制的に【不絶の混沌】がそれを治す。これガチで俺以外に攻略できるやついねえだろ。『憤怒』はまあクリアできるだろうけど……。いや、無理だわ。【業渦災炎】持てねえんだから。


 その後二分ほど弾丸を撃ち落としていると、遂に向こうの弾が切れた。ようやく『怠惰』に一撃喰らわせられる。


「……お。また攻略したんだね。さあ、試してみようか……。【怠惰】」


 またもやスピー、と寝始めたベルフェゴール。さらに青い光を纏った。さて、DEF400か……。くるくるとハンドガン二つを回しながら見下ろす。堅そうに見えないけど、刃を立てたらカーンッ! と弾き返されるのでやはりゲームは面白い。


「まあ、400程度なら一撃で抜けるだろ。なんせ、かの伝説の生産職、ユカ様が創った最高傑作だからな」


 この時の高揚感はやはり半端ない。圧倒的な力を手にしたと思うようなこの愉悦。【業渦災炎】や【災獄旧海】を発動させる時と感覚が似ている。


「『神龍起動』」


 バチッ! バチバチッ! という音を出しながら二つのハンドガンが分解され、インベントリにあったシリンダーを核として一つへとなる。破壊の権化が顕現する。黒龍と白龍を生贄とし、神の竜が生まれる。


「じゃ、行くぞ」


 ドッパァァンッ!!


 弾丸がベルフェゴールに触れると、刹那の拮抗の後、一方的にこちらの弾丸が喰い破った。背中から大量のダメージエフェクトが散る。DEF400がなんだ? こっちはSTR6000だァ!


「ぐあっ! ゴハッ…………い、いいね。いい攻撃だよ。これなら全部話せる。君は僕の試練を全てクリアしたんだ」


「そいつはどうも。『黒龍・白龍』」


 HPバーを見てみると残り1で止まっていた。イベントのキャラが死ぬことはないから当然か。というか、やっぱりこの火力は反則くさいな。だいぶ。


「えっと……君は、何を知りたいんだっけ?」


「サタンが言ってた、世界の歯車になりたくないっていうのとか、受肉とか」


「いいよ。ほとんど教えてあげる」


 その後椅子に座り、目を見て話した。この世界の真実(笑)を教えてくれた。


「そもそも君が攻略しようとしているクエスト。誰が発注しているか知っているかい?」


「え? 運営」


「……そうだな……君からしたらそうか……。このゲームの中で君にクエストを発注したのは誰だった? 最初に(・・・)『憤怒』を発注した者だ」


「お前これがゲームって知ってんだな……。まあいいや。最初に俺に依頼してきたのはおじいさんだが? なんか憤怒の封印が解けたら世界が滅びの一途を辿る……みたいな」


「そうか、そう言われたのか……。あの腐れ外道が」


 目の前のベルゼビュートから似つかわしくない汚い言葉が吐かれた。初めてこんなこと言ってるのを見たかも。

 チッ、と忌々しそうに顔を歪める。


「そもそもなんでサタンがあそこに封印されていたか知っているかい?」


「いや? 取り敢えず火山の地下にいるって話を聞いただけだしな。というか、ゲームに理由を求める方が馬鹿らしいのでは……?」


「あれはね、僕らの力が強すぎたからだよ」


「おっと。理由があったようだ」


 どうやら、七つの大罪と称される七人の悪魔は神界の首都のような場所から追放された神とのこと。色々とやらかした七人らしいが、特に悪いことはしてこなかった。ただ強大な力を持った神というだけだった。しかし、力の一部を地上に譲渡し、その追放を受け入れた。


 しかしある日。神界の隅の方で不自由ながらも楽しく過ごしていた七人相手に、神の軍勢が攻め込んで来た。周辺の集落すら滅ぼさんとする勢いでの侵攻に、流石の七人も殲滅は出来なかった。そして地上に降り、神界と地上の間の“扉”は閉ざされ、七人は地上で生きることを余儀なくされたそう。


 うん。すっげえ凝ってんな、設定。


「で、ここまでが前提知識。サタンが封印された理由は、ただの妬みだ」


「……ん? 追放とか侵攻とかいろいろあったくせに、唐突に嫉妬? 誰の?」


「……さすがに全ては言えないが……そうだな。ここまで言ったから言うけど、新しい主神だよ」


「はー、主神」


「簡単に言えばこの世界の中心となる神だね。元来、主神はその時代最強の神がなるものなんだ。まあもちろん投票もあるけれど。使われたことが無いから何とも言えないね」


「使われたことないってことは……」


「うん。そうだ。最強の神と言っても、基本的にそれはずっと変わらなかった。『全能神ヴァグエル』。創世よりずっと主神であり続けた文字通り最強の神だった」


「だった?」


「次は、その子供が主神になったんだよ。悠久の時を過ごしたヴァグエルが飽きたそうでね」


 聞いてみると、その力の殆どを継承した息子の『アグネル』が主神に着いたそうだが、まあ、面倒なことが起こったと。


「頭は悪くない……いや、むしろいい方なんだよ。政治手腕も悪くない。ただね、強者に嫉妬するんだよ」


「ああ、ここで嫉妬ぉ……(それはレヴィアタンの役目では……?)」


「サタンは……いや、サタンだけじゃなくても、ベルゼブブやマモン、それに自分で言うのも何だけど、僕だって強者の類いだ。力をこの世界に流していなければ、合計DEF値は100000を超えるほどにね」


「……ん? DEF十万……!? 頭おかしいんじゃねえの……!?」


「まあ、それが神だから。今は【権能】を放棄しているからただの悪魔なんだけどね。それで、アグネルは僕たちを完全に追放したんだ。神界から丸ごとね」


「世界から追放か……それはまた……大変だったな」


「まあ、ね。そんなこんなで、サタンとベルゼブブは封印されてる。ベルゼブブは色々あって封印ではないけど……。そういうわけで、君が会ったおじいさんはアグネルの配下。いわゆる参謀という奴だ。あいつが強者に僕たちの排除を依頼している。本当に面倒なことを……」


「なるほどな……。とりあえず理解した。まあ、俺はスキルさえ手に入ればいいんだが」


「ああ、スキルならいくらでも継承してあげよう。減るもんじゃないからね。なるほど。ヴァグエルもサタンも、こんな気持ちで継承したのか……」


『スキル:【怠惰】を獲得しました』


「よし。あとは五つだな。いい話、ありがとう。俺は次に行くな」


「ああ。こちらこそありがとう。この事実を知る人間がいるというだけで十分だ。ああ、あとは―――」


『クエスト:『嫉妬』が発生しました』


「次はレヴィアタンに会いに行くといい。君はきっと彼女に好かれるだろうからね」


「え、好かれる? って、どういう……」


「いつでも遊びに来ていいからね。サタンも、自分が継承した男が自由に生きているというだけで嬉しいだろう」


「そっか……本当にありがとうございました! また来ます!」


「うん。またね」


 そのまま部屋を出るカナデ。その顔は何かを考えていた。


 これ、本当にプログラムなんだよな? と。

世界観の設定からしてファンタジーと科学の融合世界。そんな世界に急に神とかいう概念を放り込んできても……いや、悪魔がいる時点で今更か? だがしかし……。


「結局“器”とかのことは聞いてないし、サタンがあそこで急に自殺を選んだことが分からないんだよな……。クエストを進めていけば分かるのか?」


 少しもやもやしながらも、ようやく『怠惰』がクリアできたんだから、と『世界の風』に帰ることにした。

 ミニ祝勝会のようなものをした。

この、“強者への嫉妬”云々のせいで数多の神が処刑され、神界のパワーバランスが崩れました。そこら辺の話は七十話辺りで出てきます。

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