第四十一話
はー、ようやく終わった。ハンドガン。
東の樹海
「ここで合ってるよな? 湖の近くの樹海ってここしか無いし」
誰よりも先にログインしたカナデ。集合場所かつ攻略場所に決めていた樹海に集まっていた。少し寂しくなりながら『黒龍』をクルクルしていると、二人が来た。
「そう。ここ。敵の数と種類が多いから、実験しやすいと思って」
「ひっさしぶりに来たなぁ! 最初にここに来た時迷っちゃったんだよねー!」
「あ、カナデ。はい。完成品」
インベントリから白いハンドガンを取り出すユカ。なんて美しいフォルム。完成されたハンドガン。芸術品として鑑賞しても何の問題もないレベルで、造形と配色が綺麗だ。これがユカの本気か……。
「ありがと。最終的な性能は?」
「使ってみて」
まずは右手に持ち、サイズ感を確認する。リロードも確認しようとすると、そもそもマガジンが無いことに気が付いた。
「これ、どうやって撃つんだ?」
「引き金を引けば自動的に装填される。その間の隙は無い」
「へぇ…………え、無い?」
ひとまず現れた鷲を撃ってみると、四発で死んだ。うん。まあ、ここら辺は『黒龍』とそう変わらないか。
……いや、【銃撃進化】でSTRの上がったユニーク装備と同等……? おや?
「カナデって二丁拳銃にするんでしょ? だったら、そのハンドガンを左手で扱えるようにした方がよくない!?」
「まあ、気は進まないが……できた方がいいか……」
『黒龍』を右手に、新たなハンドガンを左手に持つ。左の方が馴染みがある。ユカの作成能力の高さがよく分かる。
「あ、二羽出てきたじゃん! 鷲! 私見とくから、カナデやっちゃって!」
「んー」
右の鷲を『黒龍』で四発。左の鷲を新しいハンドガンで時々外しながらも七発で仕留めた。やっぱ左手のエイム力は低いな。練習くらいはしとくか。
「うん。STRはいい。満足のいく出来。そのまま行こう」
「あ、はい」
「尻に敷かれてるー!」
左手をメインとして使い、初期に出て来る鷲を蹴散らしていく。楽だな。
っと、なんか違うのでてきた。熊じゃん。ちょっと小さい。
「レッサーベアー? なんだよ。劣った熊じゃねえか。可哀そうな名前つけられやがって」
「え、レッサーってそういう意味なの? レッサーパンダとかいるじゃん」
「可愛いよね」
「そもそも世界で最初に見つかったパンダはヒマラヤで見つかったレッサーパンダだ。その後白黒のやつが見つかって、生態とか脚の形とかで白黒のやつもパンダって分かった。そこで区別するために、白黒をジャイアントパンダ、最初に見つかった小さい方がレッサーパンダになったんだ」
「えー! じゃあ、レッサーパンダって立場を追われたってこと!? 可哀そうすぎない!?」
「時代の敗北者じゃけえ」
「まあ、レッサー自体の意味は“より小さい”とか、“下位の”って意味だから。意味の取り方は人による」
そんな雑学を披露している間にも熊は射殺され、俺の経験値が手に入る。あ、そろそろレベル上がるかも。さっき見た時にもう少しだったし。
よく考えたらこのゲーム、ってかこのゲームだけでもないけど、『動物を銃を撃って殺すゲーム』ではあるんだよな……。動物愛護団体に訴えられそう。
「あ! なんか降ってきた!」
「カナデ。頭の中で、銀色の物質を思い浮かべて。ほら、店で見たような」
「イメージした」
「それが私たちの上に現れて自分たちを守るようにイメージして」
ああ、あれを盾みたいに? と考えながらやってみると、自分たちの真上に銀色の物質が現れた。マジで一瞬で展開されるんだな。森の奥から放たれた枝でできた強力な矢を弾く銀色の盾。強い。
「これが『無量メタル』。半破壊不可物質で『創メタル』の能力。壊すときはそれが無い状態をイメージすればいいから……って、カナデ?」
クラリと眩暈がし、そのまま前に倒れそうになる。間一髪右足で踏みこたえたため倒れることは無かったが、だいぶ危なかった。これがデメリットの脳へのダメージか……。
「ん……時空間の大きさに比例してダメージが大きくなる……? だとしたら、これの効率化は考えないとダメだね……」
「ちょっと! カナデ、大丈夫なの!? リ、リエ! 救急車!」
「……ばっか……ここはゲームだぞ……? 救急車が来るかよ。ってか、もう大丈夫だ。もう辛くない」
「ほ、ホントに大丈夫なの……?」
「そんな顔すんなよ。お前らしくもない」
はぁーと息を吐きながら立ち上がり、首を鳴らす。しれーっと襲い掛かって来た猪を左手のハンドガンで処理し、背後から襲い掛かって来た死神? みたいなやつを後ろ回し蹴りで吹き飛ばした。一週回って洗練されたかも。脳みそさん。
「とりあえず、『無量メタル』の利便性と硬さはよく分かった。使い方とタイミングは上手くする。狭い範囲で短時間出せばいいだけだし。弾丸を防ぐだけならそれで充分だろ?」
「まあ、確かに。究極弾丸一発を防ぐだけならその部分、その一瞬だけ出せばいいし」
「無理はしないでねー! さーこのまま行こう!」
「「おー」」
運営・最果ての地
カナデが学校の課題に追われている頃、ユカは運営に報告をしていた。
「おいX(X班のこと)~新しいスキルとして登録してほしいってやつ来たからよろしくな~」
「またかよw。どうせそんな夢が叶うことは無いんだから見なくていいじゃねえかよー」
「私たちの仕事、増やさないで貰えます? スキルの管轄をウチとY班に任せてるからこうなるんですよ。もっと仕事を分割してください」
「って言われてもよォ……俺達だってイベントの準備があるし」
「ったく仕方ねえなぁ……メッセージ送れ」
FFO運営X&Y班。このゲームのスキルに関してを総括している部門だが、時折、新たなスキルとして追加してほしい、という報告が来るのだ。大体意味の分からないチートスキルを願われるのだが、今回の案件は違った。
「ほぉ……『『創メタル』と『壊メタル』によって構成されたハンドガンのスキルとして、『無量メタル』を自由に展開することのできるスキルを追加してほしい』か……。報告者も考えやがったな。誰だ?」
メッセージを受け取った担当者が見てみると、“from:ユカ”と書いてあった。それをみた担当者は、「あいつガチでなんてもん作ってんだ」と悪態を吐いてしまった。
「ん……? ハンドガン……? 素材として『ジアルメント蒼晶』を使ったのか?」
そこで思い当たる。最近、カナデに渡した素材と、その素材がどこに行き渡ったのかを。
運営全員あの素材はユカの元に渡り、使われないままに終わるだろうと思っていた。しかし、もしかしたら……。
「班長! あの神殿! 機械神のいる神殿にあった【権能:迎撃】はまだありますか!?」
「あ? んだよ。ちっと待て。…………おっ、ここか。確かベータの権能だろ? 俺たちの干渉できない神の権能だ……が……ふむ。もう取られているな」
「…………そうですか。了解です。ちょっと新宮と話してきます」
「? ああ。すぐ帰って来いよ」
担当者は思い至った。機械神のいた神殿に置いてあったスキルがとられたということは、と。
「P班! 新宮はいるか!? いや、新宮じゃなくてもいい! 機械神のいた神殿にあった『機械神の心臓』はまだあるのか!?」
「ちょっと待ってて、確認する。……あ、もう取られてるみたいよ。どうしたの?」
「……そうか。やっぱ新宮と話して来る……」
新宮にあった担当者は、『ジアルメント蒼晶』についてを聞いた。あれは、無限のエネルギーさえあれば大量のエネルギーを固形に出来るのか、と。そして、『機械神の心臓』でそれができるのではないのか、と。
「ああ、確かに理論上は出来るが……ボートを持っていないあいつが最西端まで行くか? 大丈夫な気がするんだよな」
「…………分かった。ありがとな」
ユカから送られてきた報告を、【神々の権能】として許可を出すことにした。俺は今、とんでもない武器の作成を協力したのではないか、と思いながら。
時代の敗北者じゃけえ→ワンピース




