第四十話
前半は奏たちが課題を頑張る様子なので、飛ばしても結構です。
『創メタル』『壊メタル』を入手し街で噂になった後、『世界の風』に来て全ての素材を渡していた。取り出した時点でヴヴヴヴッ! って動くのちょっと怖いからやめて。爆発するかと思った。
「ほい。これでいいんだろ? ユカ」
「うん。バッチリ。こんな見た目だとは思わなかったけど」
「何か他に依頼はあるかね? 欲しいもんは何でも持ってくるが」
「いや、もうない。今日は完全に異世界に籠って作るから、カナデは自由にしといて」
「了解……あ゛っ!? 明日の宿題終わってない!」
明日学校に提出するはずの課題がまだ半分ほど残っている。やっべ。成績のためにも頑張ろ。高校だけど。
「じゃ、今日ログアウトするから! また来るからな!」
「うん。待ってるよ」
そんなわけでログアウトし、現実と向き合うことにした。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「お、現実だ。諦めて課題するかー」
防音加工の施された静かな部屋で、俺は一人机に向かう。最近は帰ってきてからFFOに潜りっぱなしだったから、今まで学校帰りに何をしていたかを覚えていない。課題も学校でしていたような……。あれ? 記憶の破損が見られますが?
「あっ、レポートがあるんだった……」
その時、RINEが鳴った。右手でレポートを書きながら左手で操作していると、差出人は理慧だった。なんだ?
『HELP! 助けて!』
『どうした? 今俺も課題終わってなくて助けてほしいんだけど』
『私も終わってないの! それで助けてほしくて!』
『なんで終わってないやつに助けを求めるんだよw もっとまともなやつはいないのか?』
『優華は今FFOにログインしてるし……もうちょっと言えば、みんな分からないって言ってる』
『そもそも出てる課題が違うんだよ。無理に決まってんだろ』
『問題だけでもいいから読んでよー!』
送られてきた写真を見ると、筆者の心情を答えよ系だった。知らねえしそんなの。
……あれ? この小説読んだことある。確か主人公(筆者)が友達と喧嘩した時のやつだよな。ああ、知ってる知ってる。
『筆者の気持ち? そんなの「もうそろ締め切りだ! 急がないと!」だろ。それ一択だ』
『ちゃんと答えて! そんなメタなこと言わずに!』
『……十八行目の真ん中らへんで言ってることが入る。この時の筆者の感情として正しいのは多分”後悔”だから、そこら辺を上手く書けばいい。ついでに言うと、最後あたりでも同じようなこと言ってるぞ。言葉を変えて』
『えっ!? ありがと! それで答えてみるね!』
こんなことをしている間にも俺の右手は止まらない。さっさと書き上げなければならないのだ。レポートを。明日提出……いや、今日提出じゃねえか。日を跨いじまった。
「こういう日は何かを聴きながらするに限るな」
端末から曲を流し、急いで書き上げる。気分が上がる曲だ。
ようやく終わり、顔を上げる。時計を見ると、三時を回っていた。
はあ、とため息をつきながら風呂に入る。せめてもの抵抗だ。今日はもう寝なくていいか……。人生何回目かの徹夜を決定する。
「じゃあ、FFOにログインするかな? さすがに優華はいないだろうが……」
というわけで再ログイン。心なしか人も昼間より少ない気がする。この時間帯はゲーム内でも夜。そろそろ陽が出るくらいなので、その光景ぐらいは見たいと思った。
そう言えば優華のいないときって『世界の風』は空いてるのか? と思い、言ってみる。そこには、『open』と書かれた看板が立っており、思わず「え……」と呼気が漏れてしまった。
カランカラン!
勢いよく入った俺は、目の前に在った銀色の物質に目を貫かれそうになった。急停止してその物質に触れてみると、だいぶ硬かった。なんだこれ?
「あ、いらっしゃい。なんでここにいるの?」
「なんで、じゃねえよ。お前こそなんで起きてんだ。俺は課題が終わったから徹夜しようと思って入ってるだけだが……」
「私は、さっきハンドガンが完成したから異世界で寝てた。時間の流れが違うから、良く回復できる」
「あー、このゲームにそんな使い方が……天才か? お前」
「もっと褒めて」
まあ、ユカがログインしてる理由は分かった。問題はこの物質。俺の眼が貫かれそうになった物質。何だこれ。
「これ? これは『無量メタル』」
「むりょうめたる?」
「カナデに買ってきてもらった『創メタル』付随の能力。自由にこの半破壊不可物質を生み出す」
「半破壊不可物質とは……?」
「カナデの【王権】みたいに、防御スキル貫通スキルで壊れるけど、他の方法では破壊されないもの。あ、『壊メタル』の権能を除いて」
つまり、この世界に自由にめちゃクソ硬い物質を生み出す能力と、それを自由に壊すことのできる能力を持っていると。とすると、『壊メタル』の能力は『創メタル』の能力で生まれた『無量メタル』を破壊する能力、か? 面倒だな。
「カナデが入って来た時にあったのは、実験としてハンドガンの能力を使ってみただけ。ちょっとクラッとすることを除けば便利な能力だと思う。そこはカナデが使ってみて色々試して」
「分かった。そこのところは上手くする。それよりも、学校に行く準備をしなくちゃなんねえからな。帰ってきてからだ」
「その時はリエも呼ぶ。一応これから最終調整に入るけど、このハンドガン、やばいかもしれない」
「どういう方向で?」
「汎用性。『機械神の心臓』と『ジアルメント蒼晶』のおかげでそもそもマガジンが必要ないから、まだ拡張性もある。それと、新しい素材を使えばまだSTRも上がるかもしれない」
「うわお」
思ったよりもチート武器だった。ってかユニーク装備みたいな性能だな。まあ実際に使ってみないと分からないけど。
それから一、二時間ほど雑談をし、次は『怠惰』に挑んで来た。【権能:迎撃】を使って。
あの弾幕は乗り越えた。ようやく攻略だ、と思っていると、次はベルフェゴールに傷をつけなければならないと来た。で、奴のDEFが、彼の能力の一つである”休息中のDEFが二倍になる”というものだ。それ自体は【災厄伝播】と【憤怒】で乗り越えた。しかし、さらにスキルである【怠惰】を使われ、ダメージを与えることができなかった。
帰ってきて時計を見てみるとリアルで六時になっている。そろそろだな。
「お、今日が始まるぞ。そろそろ起きないとな、ユカ」
「……今日はこのままずっとログインしてたい……」
「だめだろ。最近ユカ、さぼり癖がついてんだし。現実に戻らねえと」
「仕方ない」
こうして一日が始まる。学校で優華と理慧に会い、今日の放課後の予定を立てて帰った。なお、頑張って済ませた課題は提出することができた。
学生たちの学びの時間は終わり、これからはゲーマーの活動時間となる。
さあ、ログインの時間だ。




