第三十六話
FFO運営・最果ての地
「いやー、にしても考えたなぁ! まさかほとんど使えない結晶を渡すとは! さすがだぜ! 狡賢いなぁ、新宮!」
「だろぉ? お前が勝手にアイテム渡すって言った時は焦ったけど、これならば文句はない! ハズ……」
「まあ、使えないとは言っても使おうと思えば使えるしな。確かに文句は言えないだろう。いくら莫大なエネルギーが必要と言っても、使えなくはないのだからな」
「「「「「だよな~」」」」」
運営一同、一人のファインプレーに盛り上がる。だって嘘はついてないし、ちゃんと強力なアイテムだ。しかし、使いづらい。というか殆ど使えない。
カナデを出し抜いたぜ! いえーい! と盛り上がり、第二回イベントの準備に移る。フィールドは前回と同じ第二フィールド。今回のイベントも結果見えてるけどなー、と呟く運営だったが、『ハジマリ』の奪還が成功したことでそんな些末なことはどうでもよかった。
「『ジアルメント蒼晶』か……まあ、いくらユカといえど上手いこと加工できないはずなんだが……大丈夫だよな?」
「んあ? 大丈夫だろ! アレの加工はできねえって! というより、活かせる素材がねえだろ! はっはっは!」
「だといいんだが……」
一抹の不安を抱きながら、男は画面に向き直った。
全てを解決できるアイテムの存在を忘れて。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「使えない~? どういうことだ?」
「これは素材だけど、他の物質の干渉を経て起動するタイプの物。超大量のエネルギーを用いて、エネルギー体を凝固する特性があるみたい」
「??? 莫大なエネルギー? エネルギーを凝固? なんでそんなこと分かるんだ?」
「エネルギーを凝固する方は【鑑定】で分かった。必要なエネルギーはこのアイテムのシステムコードを覗いたから分かった」
「お前マジか」
普通にチートじゃねえの? と聞いたが、別に弄ってはいないからセーフらしい。眺めているだけだって。どっちかっていうと黒寄りのグレーでは?
「だから、使えない。仮にこれを使えるほどのエネルギーを供給できるんだったら、強力な武器になるけど」
「ちょっとそういうアイテム探してみるか……というか、全体に聞こうぜ。ほら、懸賞金をかけるみたいに」
「ああ、渡してくれたらゴールド上げるみたいな感じ?」
「そうそう。そういうのは?」
「……あり。ちょっと聞いてみる」
「俺は数少ないフレンド全員に聞いてみるわ」
それから俺は、何か大量のエネルギーを生み出す素材は無いかみんなに聞いた。みんな、知らないけど探してみるそうだ。ユカの方は掲示板でプレイヤー全員に呼びかけてみたらしい。そういうアイテムを見つけて持ってきてくれたら5000万ゴールドをあげると。
「え、五千万!? 流石に多すぎねえ!?」
「いや、そんなことない。この店結構稼げてるし。私の所持金見る?」
「見るー」
ユカの所持金を見ると、なんと九桁を行っていた。つまり、億。
「……マ?」
「マ。レア素材を手に入れるときくらいしかお金使わないし、というか前の大量の素材を集めてもらうときに渡せばよかったね。ゴメン」
「いた、それはいいんだけど……すげえな。そんなに金あるんだ……」
「多分トッププレイヤーはみんなこれ以上持ってるよ。あんまり使わないから」
「へえ~」
金の消費タイミングが無くなってきたらトッププレイヤーか。いや、というよりも、消費速度よりも得る速度が早いのか? 今の弾丸費が高いんだよな。いや、ユカの店で買ってるからかもしれんが。
「じゃあ、あとは待つだけかな。とりあえず私は色々試してみるから、カナデも探してきて」
「了解。とりあえず手あたり次第取って来る。ああ、オリハルコンも取って来るわ。今度こそ取って来る」
「ん、分かった。待ってるよ」
前とって来ると言った石二つ、両方取ってこれなかったのだ。片方くらいは今回取って来る、と強く思いながら海へ向かった。
前回海に行った時、謎の球状のアイテムを拾った。アイテムの説明を読んでも、『四神の秘宝』としか書かれていないのだ。やべえ、何も分からんけど、めっちゃかっけえ。というか、何か強そう。
四神とやらの一柱ならば、そこそこ強いアイテム然りスキルをくれるはずだ。というか、敵なのか?
「よし、着いた。潜るかぁ……今回は溺れないだろうし」
ザブーンではなく、ゆっくりと潜っていく。何か見過ごしているものは無いか、と。とりあえず、海岸線には何もないことは分かった。あとは、海底ぐらいだろう。【潜水Ⅹ】の俺がよく探すくらいしか方法がない。いや、そもそも海底にそういう石はあるのか? まあ、満遍なく探すことが大事なのだ。だって困ったらダンジョンに潜ればいいだけだし。周回しまくったらいつかは入手できるんだろ?
「ガボボボボ……(広いな……)」
海底に近づく。色々な魚がいるが、敵対している奴はそれほど多くない。銃は使えないが、ナイフだけで対応できる数だ。
「っと、ここまで来たら喋れるのか。さて、満遍なく探すかな……」
足元をきょろきょろしながら歩き回る。一時間以上潜れるので、余裕をもって探れる。ところどころに白い魚やとことこ歩く蟹がいて、普通に心癒された。
しかし、三十分以上潜ってもなお何も見つからない。よく考えたらこの広大な海を、歩きだと移動速度の落ちる海で歩き回って探すというのが馬鹿だった。そこで俺はある点に絞って探すことにした。
「……最西端」
西の海の中でも最果て。マップの端だ。そこに何かあると踏んだ。というか、そこ以外に、ここ! っていうピンポイントな場所ねえしな。
「行ってみるかぁ~」
俺は今度は泳ぎ出した。




