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第三十話

ご都合展開とか言わないでね。

 俺は壁をがっしり掴みながらコルネを抱きかかえていた。この壁がつるっつるだったら詰みだったな。目の前の黒い球を見ながら俺はそう考えていた。


「で、どうやって攻略するつもりなのー? このままだったら吸われちゃうよ」


「いや、ブラックホールだったら……特異点がある……? そこまで再現されてるとは思えないけど……」


「ちょっとー? どういうこと?」


「ちょっと待ってくれ」


 目の前のブラックホールが現実と同等の性能をしているのなら俺たちは既に吸われている。そして、世界丸ごと飲み込まれているだろう。しかし、そうではない。吸引力はダイ○ンの掃除機ほどだ。ゴメン嘘。

ということは、まだ破壊のしようはあるかもしれない。普通に破壊不可物質かもしれないけど。


「ブラックホールの寿命ってのは、太陽サイズで千年程。じゃあ、このブラックホールの寿命はどんくらいかーってことなんだが……知らねえんだよな。流石に」


「んー、でも、寿命が来るまで何年も待つことはできないよね? 破壊する方法は?」


「理論上は……ある」


「理論上?」


 ブラックホールの中には、『特異点』という物理法則が意味をなさない場所がある。そして事象の地平線という……まあ、ブラックホールの限界みたいな場所のみを破壊して特異点を露わにするには、回転数の多い物体を大量に投下する必要がある。どのサイズとかは特に知らず、あくまでそれは本で読んだだけだ。詳しいことは知らん。


「回転数が多くて、いっぱいあるもの……? んー、それって、弾丸じゃない?」


「……? ……あー」


「ライフルリングのおかげで弾丸は回転してるし、やろうと思えば大量に入れれるでしょ?」


「確かに。そうだな……だが、失敗したら終わりだぞ?」


「為さなかったらなにも成せないんだよ!」


「……そうだな! いいこと言うじゃんか」


 というわけで、俺とコルネはただひたすらにブラックホールに弾丸を撃ち続けることになった。俺の両手は壁とコルネによって塞がれているが、【憤怒】を用いて右手で両方を支えるという暴挙に出た。

 そして左手で連射し、ブラックホールの引力と左手の操作でリロード。だいぶ神業をしている気がするが、今はだいぶ必死だ。


 成功するかも分からないし、何なら失敗の方が確率が高い。それでも俺たちはやるのだ。


「チッ……頭が……」


「私も支える!」


 コルネは撃つのを一時中断し、俺の体を必死に支える。


 一時間後、俺はマガジンを二百程消費し、コルネもだいぶ撃ったのち、それは起きた。


「っ! あいつ……膨張してるッ!」


「カナデくん、大丈夫!? 辛くない!?」


「辛いッ!」


 さすがに右腕のみで支えられなくなったので、両手を使って壁を掴みコルネを支える。腕が辛い。

コルネが壁を掴みなおし、俺も体勢を整えようとすると、流石に限界が来たのか右腕が壁を放してしまった。


「―――ぁっ」


「カナデ君!?」


 当然とてつもない勢いでブラックホールに吸い込まれる俺。ブラックホールは崩壊を始めており、黒い物質が溢れ出ていた。掴んでみると、それは『ダークマター』。うっは、マジかよ。大量じゃん。喜んでいようと、死は免れない。


『スキル:【夢幻】を獲得しました』


 いや、今手に入れたところで、だろ。効果を見る暇もなく、背中からヒューと吸い込まれていく。

そして、ブラックホールの最深部にたどり着いた瞬間、俺は白い何かを見つけた。


「なんっ―――」


 そして、即死す―――


「…………ん? 生きてる?」


 これはアレか? 死ぬ直前でブラックホールの効果が切れた感じか? と思い、周囲を見渡す、空が見えたので、ブラックホールの引力自体は無くなっているのだろう。いや、それだけじゃないな……。


 スキルの欄を見てみると、さっき獲得した【夢幻】が原因のようだった。


【夢幻】

死亡時、HPの30%で蘇生する。一日に一回。


「……くはは。そんなにピンポイントで欲しいスキルが来ちまうなんてな……このゲーム最高かよ」


 はーあ、と溜息をついて寝転ぶと、先程の白い光が見えた。あっそうだ、これこれ。

取ってみると、『ハジマリ』というアイテムのようだった。説明欄には何も書かれていないし、何か周辺の空間が歪んでいるように感じる。まさか、特異点か? いや無い無い。


「カナデくーん! 生きてるー!?」


「生きてるー。スキルと崩壊のおかげで生き残った」


「自力でここまで来れるぅ―?」


「行けたら行くー」


 ググッとしゃがみ込み、大きく跳び上がる。しかし、ギリギリ高度が足りず、出ることは出来なかった。しかし、その手をガシッと掴む手があった。コルネだ。


「よーいーしょっ!」


「うわっ」


 コルネに引き上げられ、俺はようやくブラックホールから出ることができた。あんなとこ二度と居たくないね。

ってか、最後はマジでラッキーだったな。死んでもおかしくなかった。


「大変だったねー。でも、本当に攻略できると思わなかった! すごいね! カナデ君!」


「いや……褒めるべきはさっきのを作ったプログラマーだろ。ちゃんと攻略できるように調整しておきながら、ほぼ不可能っていうさ、クソ難易度。すげえよ」


「確かにねー。あっ、扉が出てきた。行こー?」


「ちょっと休憩させて……」


 さすがに一時間以上壁にぶら下がっておくのは精神的に死ぬ。ゲームだから大丈夫だと思ったが、心が疲れるんだな。

 十五分ほど休憩と雑談を重ねた後、俺たちは扉の先に行くことにした。出てきたのは通路。またかよチクショウ。だが、さっきみたいなボスが出てこないことを祈る。


 そして、彼らを見守る影があることにカナデたちは未だ気が付いていなかった。

本来ブラックホールは『一発も撃たずに一時間耐久する』が攻略条件です。しかし、なぜか撃って攻略できてしまいました。理由は次話で明かされます。


【夢幻】の取得条件は、『即死を継続的に受ける』です。ブラックホールの崩壊が同時だったので、『即死しきれない即死』状態でした。

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