第二十九話
新しい災厄だお。
「あ、お待たせ―。ごめんね、私から誘ったのに遅れて」
「いや? 別に遅れてねえし、なんなら五分前だ。俺が来たのが早すぎたんだよ」
「ふふ。ありがとう」
窒息しかけてからすぐに、待ち合わせ場所の『果ての闇』の前に行った。どうやら、あるNPCに話しかけたら連れて行ってくれるようだ。ありがたい。
俺は溺死を免れた瞬間にあるスキルを手に入れた。名を【災獄旧海】という。これの説明の意味が分からず、一人で、うん? と首を捻っていた。
【災獄旧海】
旧き世界の記憶(波)(海)を再現する。範囲は使用者の最大MP量に比例する。クールタイム三十分。
入手条件:【潜水Ⅹ】保持状態で海で溺死し、生き永らえる。
まず、入手条件。死にながら生きている意味が分からない。逆に俺は何故ゲットできたんだ。
後に分かるが、これには『仮死の剣』という死にながら生きるというレアアイテムを使う必要があるようだ。仮死状態は対幽霊戦などで使うようだが、今回はこのアイテムが必要だろう。
次に効果。なんだよ。旧き世界の記憶を再現するって。【業渦災炎】を見習えよ。案だけ丁寧に説明を―――って、うん?
「お前も変わってんのかよ!?」
「え? どうしたの?」
「いや、さっき新しいスキルを手に入れたんだが……他のもいろいろ変わっててさ」
どうやら、災厄シリーズは一つにまとまり、【災厄の記憶】という名前になっているようだ。そして、お手本だったはずの【業渦災炎】の説明はこう変わっていた。
【業渦災炎】
旧き世界の記憶(火災旋風)を生成。範囲は使用者の最大MP量に比例する。威力は使用者の現在STR値に比例する。強制『火傷』付与。クールタイム三十分。
「お前も旧き世界かよ! 丁寧な説明を返せや!」
泣いちゃう。何も分からなくなった。まあ、こいつの効果とか扱い方は分かってるからいいんだけど、【災獄旧海】とかなんも分からん。波と海の二種類から選べるのか。
「へー、すごいね。無効化スキルをこんなに持ってるのはあんまり見ないよ。それに、私も見たことないスキルばっかだし」
「だろう? ……って言っても、基本的なスキルをあんま持ってないから、弾丸何発か喰らったら死ぬんだけどな」
「じゃあ、丁度いいじゃん! このダンジョンをクリアしたら、ダメージ軽減スキルをゲットできるし! ……多分!」
「マジか。俺はそれに重ねて素材集めがあるからな……一石二鳥じゃねえか」
「じゃ、攻略しちゃおっか!」
「おー!」
『果ての闇』という、場所自体がダンジョンというこの異質な場所。光がほぼ無くて方向感覚が分からなくなるが、コルネがインベントリから取り出した青い炎に付いて行く。何だこれ。
「これはね、『幽玄の明かり』っていうアイテムだよ。いくつかの道がある時に、ゴールに向かって真っすぐ進んでくれるの。ダンジョン内でしか使えないんだけどね。便利だよ」
「そんなのあるんだな。レアだろ。絶対」
「レアだよ? でも、せっかく君を誘ったんだもん。レアだろうと使わないとね! というか、これが無いと道に迷っちゃうし~。あ、一個だけ上げるね」
「それはそれは。ありがたいな」
青い炎にのみ従って進む。時折蝙蝠のようなモンスターや、黒いスライムのようなモンスターが出るが、見づらいだけでそこにいると分かったら撃ち抜けるので問題ない。そして、こいつを倒したら時々……いや、稀にダークマターを落とす。
「ん? もしかしてだけど、『ダークマター』って採掘する系じゃなくて、ドロップ系なのか?」
「うん、そうだよ。私は使うことが無いけど、時々ここに潜った時に集まるから、必要ならあげるよ?」
「え、いいのか? めっちゃ助かるわ。頂戴?」
「ここ攻略し終わったらいいよ。っと、ここここ」
ここ、と聞いて前を向くと、そこには魔法陣があった。いつも通りの転移のやつだな。多分。
「前言ったように、ここで攻略が止まってるの。いっっっっつも負けてね」
「この魔法陣に乗ったら転移するのか?」
「うん。この先にいる黒い球状の物があるんだけど、それがちょっと倒せなくて……」
「分かった。じゃあ、行くか」
「えっ、いや、せつめ―――」
俺が魔法陣に乗った瞬間、二人はどこかへ転送された。あまり足場は無く、壁のみだ。そして、何よりも異質なのは、その空間自体。
「っ! 無重力か!」
「そうなの! それで、ここの中ボスはあれ!」
指の差された方向へ目を向けると、そこには空間の歪んだ黒い球があった。周囲の物を吸い込んでいるようだ。俺たちも引っ張られるが、壁を掴み強引に耐える。というかこれ、黒い球というより……
「うーん……ブラックホールじゃないか?」
「あっ確かに! じゃあここ、宇宙ってコト!?」
「だな……いや、どう考えても攻撃通らねえじゃん。だるそぉ~」
「銃弾は全部吸収されるよ! 多分魔法も! 攻略方法は分からない!」
「いやマジかよ! せめて何か攻撃方法あるのかと思ったわ!」
「何も無いよ! どうにかして!」
そんなことを言い合っている間に、ブラックホールは吸引力を上げた。あっ、という声と共に壁から手を放すコルネ何やってんだ!
「やっばいっ!」
「ッ!」
壁を強引に蹴り、コルネを攫う。そして、ブラックホールに吸収されるよりも速く壁に張り付く。ああ、だからSTR不足で、って言ってたのか。なるほどな。確かに、一定のSTRが無いとこれは耐えられないな。吸収される。
「あ、ありがと……。あれ、吸われたら一撃で死ぬから」
「じゃあ簡単に手を離すなよ。まあ、俺が支えとくからあいつに一発撃ってみてくれ。どうなるのか見てみたい」
「分かった!」
M24E1 ESRを取り出したコルネは素早く狙いを定め、ブラックホールの中心を寸分の違いなく撃ち込んだ。
グオンッ! という空間が歪む音がすると共に、弾丸が消える。思わずうわぁ……と呟いてしまった。
「……無理じゃね?」
「やればできるってー」
この次の話から消滅したので、大至急書き上げました。内容で違和感があったら言ってね。




