第二十七話
高校のための準備をしていました。一日中家に居なかったんだ。
「えーっと、二丁拳銃にするというと……左手にもハンドガンを持てと?」
「うん」
「二丁拳銃って、扱いが難しいんじゃないの? ほら、照準とかの問題で」
「そのはずだ。いくら俺だって、ロマンを求めて弱体化とかシャレにならんし。というか、人間って普通一つの方向にしか照準を合わせられない生物なんですが?」
「そこは努力次第」
「ええ……」
まさかの二丁拳銃の提案。俺だって一回は考えたさ! 装弾数少ないし、連射も疲れるしと思ってたから! けど! エイムがクソになるじゃん! と思って止めたんだよ!
「……もし二丁拳銃にすると言ったら、TTI コンバットマスターの見た目で作ってあげ―――」
「任せろ。俺がリアルな二丁拳銃使いだ」
「なにその変わり身!?」
あまり銃に詳しくないリエが驚くのも無理はないが、これは別に強い銃というわけではない。だって軍に採用されているわけでもないし、そもそもそういうものじゃないから。
『JOH○WICK ○ARABELLUM』という映画の主人公が使用していたハンドガンで、めっちゃカッコいい。あとは、コルトガバメントの進化系という点からも推して知るべし。
というわけで、そんな銃がめちゃくちゃ欲しかったので俺はあっさり飲んでしまった。彼女自身、作りたかったのかもしれない。
「というか、作れるのか? あれって結構緻密に計算されたものだろ?」
「……見た目だけなら余裕だけど……それじゃつまらない」
柄にもなくニヤッと笑うユカ。これからすべきことが楽しそうでヤバイ、といった顔だ。
「どうせなら、素材から品質まで全てこだわった、最強のハンドガンを作る。ちょっと、二人も協力してくれる?」
「「イエス! マァム!」」
見た目はTTI コンバットマスター、されど性能は別物、という物を作るのだろうか。だけど、プレイヤーが作るものだ。流石に限界はあるはず。確かにユカの作るものは市販の質をとっくに超えている。されど、ユニークには届かない。
「まずは、素材集めから。これから私が言うところに素材を取ってきてほしい」
「「イエスッ! マァム!」」
あれ? これって俺が『怠惰』を攻略するために俺が依頼したんだよな? なんかいつの間にか立場が逆転してない?
「ふ、ふふ……。ここで命を使い切ってでも最高の物を作る……」
「まあ、楽しそうだからいっか」
なんだかいつもよりも楽しそうなユカさん。さて、どんなことを注文されるのだろうと身構えていると、想像の135°斜め上の注文が来た。
「じゃあ、まずは私の【錬成】スキルを上げることから始める。そのために、ガラクタをたくさん買ってきてたくさん銃を作らなきゃ」
「え、そっから? というか、お前のスキルレベルって高いんじゃ……」
「私は作成系のスキルを全て入手してる。そしたらその時に全てが混ざって【ビルド】という一つのスキルになった。そのスキルの中にいろんなスキルが保管されている感じ。あくまで【ビルド】はスキルをまとめた名前で、【ビルド】を発動させても何も起きない」
「うーん、うーん。まあ、ギリ分かった。それで、ビルドの中に保管されてる【錬成】スキルのレベルを上げたいのか。いやでも、お前って現時点でトップクラスなんだろ?」
「【錬成Ⅶ】これが私のレベル。ただ、これは銃をバーンと作るのであって、ねじとかハンマー、リボルバーだったらシリンダーとか、それぞれの部品を作れるわけじゃない。それができるのはスキルレベルがⅨになってから」
「つまりお前は、部品から高品質のものを作って、それらをさらにお前クオリティで銃の形に仕上げたい……と言っているのか?」
「そういうこと」
「ようやく私にも理解できたあ! じゃあ、買ってくるよ! ねじとか、鉄板とか!」
「俺は坑道で狩って来る。何かいい感じのアイテムが拾えるかもしれんし」
「うん。二人とも任せた。『世界の風』は一時休業する」
まさかの宣言に驚く俺とリエ。このプロジェクト、やべえ。めっちゃ壮大だ。そう感じていた。
ひとまず俺は鉱山の中腹にある『廃れた坑道』というダンジョンに入ることにした。ここは鉄塊というアイテムを落とす敵が多かったり、レアドロップで生産職が喜ぶ系のアイテムが落とす、というのを前にユカに聞いたからだ。
なお、リエはその間パシリに専念している。幸いゴールドは大量に持っているようなので、店一つ分買い占めているとのこと。それだけ買っても財産の半分も減らないほどには稼いでいるらしい。なんでそんなに持ってんだよ。
「ま、俺も俺で頑張るかなー」
ここの奴らみんな硬いんだよなーと一人ごちる。すると、目の前に、体が鉄でできたスライムが現れた。
「お前倒したらいかにも鉄くれんじゃーん。ラッキィ!」
素早く黒龍を連射する。しかし、何発かは入ったものの、幾つかはカーンッ! という音と共に弾かれてしまった。流石鉄。鉛玉では勝てませんでした。いやでも、少しはめり込めよ。
「まあでも、所詮モンスター、所詮スライム。その硬度には驚いたが―――」
スライムが反応できないような速度で地を駆ける。そして、すれ違いざまナイフで切り裂いた。流れるような通り魔。素晴らしい。
「経験値も美味いし、落とした鉄塊はいつの間にか拾われるし、金は自動的に貯まるしで最高だな。ここは何週もしよう」
その日掲示板に、『やばいwww美女がネジ屋のねじ全部買い占めとるwwww』というスレや、『今日西の鉱山に行った奴いる? 魔王が周回してたぞ』というスレなど、様々なスレが乱立していた。
どうしようか。どっからか一日一話投稿にしたい。




