第三話
あ、今日は三時まで七話投稿します。初日だからです。
街で弾薬を買った後、またも森に出ていた。今度は少し奥に。
あの後、ステータス欄を見てみたが……。なるほど。俺の拳のSTRが5で、初期用ハンドガンが7か。+扱いではなく、ハンドガンそのものが7。ゲームの都合上仕方ないとはいえ、俺が二回殴るより弱いのか……。
それと、ナイフ。これ、STR200らしい。まあ、銃で戦うゲームでナイフを使うんだから、そりゃあ即死クラスじゃないとな。
「あ、こんなやつもいるんだな。ま、そりゃそうか」
今相対しているのは、通常サイズの猪。えーっと? ワイルドボアか。ワイルドボアか……。
「“野性的な猪”ねぇ……。もうちょっと名前はどうにかならんかったのか?」
いくら猪といえど、所詮は生物。銃弾を何発か撃ち込んだら死ぬだろ。と、思っていたのだが……。
パンパンッ! パンパンパンッ!! パンパンパンッ!!
『ブモォッ!!』
「……あれぇ? 死なねえぞォ……?」
八発撃ち込んでもなお体力バーは半分……いや、七割ほど残っている。これは……。
「DEFとHPが高いのか。グロックのSTRは7だから、合計ダメージは56? いや、相手のDEFから計算して……もっと低いな。これのダメージ計算が分からん。一回システムを覗いてみることも考えとくか……」
『ブモォッ!!』
「あっ、ごめん。ちょっと待っててね~」
攻撃が終わってしまい、猪が解放。そして、こちらへ突進してくる。
「ちょっと待ってって言ってんだろ!」
ローリングをすることで突進を回避。迂闊にしてると死ぬかもしれん。
インベントリから取り出したマガジンをハンドガンに入れる。ガチャッ! という小気味いい音と共に、再装填が完了した。
パンパンパンパンパンパンパンパンッッ!!!
再度八発撃ち込み、さらにもう一度八発撃ち込むことで、ようやく消えた。いや、辛いな。流石に一匹に二十四発は効率が悪すぎる……。ワンマガジンで倒しきれないし、連戦も相まって弾が足りなくなったらどうするんだ。
回収したゴールドは二十。いやガチで効率悪いな。これならスライム周回してる方が効率いいじゃん。
しかしそれでも森の奥に進んだ。今度は狼が出迎えてくれる。ヴァイオレントウルフだ。凶暴なんだね。
「猪よかDEFもHPも少なそうだが……。試してみないことにはな」
パンパンッ! と二発撃つ。しかし、それは狼の機敏な動きに回避されてしまった。こいつは……。
「AGIが高いな。それに、攻撃的……っ!」
『ワオオオオオンッ!!!』
犬と狼の違いが今一つ分からない俺は、その雄叫びを聞いて犬の遠吠えみたいだと思った。そして、こいつも突進。しかし、こいつはジグザグと動き、俺の射線から外れる。そして、急接近すると、その鋭利な爪を俺に向けてきた。
『ワオッ!』
「っぶねえな! そんなもの人に向けちゃダメだろ!」
とか言いつつ、こちらも銃で応戦する。立ち上がって、両手で支えて……って。これ、ゲームなんだし、片手でも撃てるのでは?
「反動の有無はSTR次第だし、音もあんまりうるさくないし……」
というわけで右手でグロックを構え、片膝をついたまま狼を撃ち抜く。
『ギャンッ!?』
「お、いいね。こっちの方が狙いがつけやすいわ」
その後も駆ける狼に四発打ち込んだ。そして、狼は光となって消える。入手ゴールド数は三十。ああ、こっちの方が断然効率いいわ。
スライム十匹、十発の弾丸で三十ゴールドか、狼一匹、五発で三十ゴールド。外さないならば、後者の方が稼げる。
ここらへんで狩るかぁ……。一匹一匹ならあっさり済みそうだし。
と思ったら、計った様なタイミングで十匹程の狼が。おっと? これはさすがに聞いてないぞ?
こいつらは……。
「さっきの狼の雄叫びは、こいつらを呼ぶやつだったのか。いやそういうの止めてよ。マジで」
はぁ~、とため息をつき、インベントリを開く。リロードも済ませた。
「仕方ないな」
左手にナイフを構え、右手のグロックで狼たちに照準をつける。
「かかって来いよ」
俺と狼の戦いの火蓋が切って落とされた。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
パンッ!!
「……ん? 今、こっちに撃たれたか?」
「え? 私には当たってませんけど……。二人は?」
「俺は違うっすね~」
「私も違う」
「じゃあ、近くで戦ってる誰かの流れ弾か? ったく、誰がこっちに撃ってんだか……」
そこそこ長い間FFOをプレイしているパーティ。前衛二人、後衛二人という安定したパーティーだ。
レベリングをするために森の奥地へ来たのだが、最近追加されたはずの経験値をいっぱい持っている狼が見つからない。レアモンスターとはいえ、そこまで出現率は低くないはずなんだが……と考えているリーダーの男。
その時、『ワオオオンッ!!』という遠吠えが響く。
「! これだ! どっちから聞こえた!?」
「森の少し奥ですかね。ですが、あそこまではまだ行ったことも無いのでは……」
「まあ、こっちの方面は結局久しぶりなんだ。俺たちも強くなってるし、大丈夫だろ。そら、武器を構えろ。アメーバは阻害魔法の準備」
「「「了解!!」」」
前衛でリーダーの男はショットガン使い。近距離ならば即殺す! と言わんばかりのスキル構成でもある。そして、そのサポートをするのが後衛二人。撃ち漏らしを倒すのがもう一人の前衛、サブマシンガン使い、という安定したパーティーだ。
ガサガサと森の中を突き進むベテラン一行。そして、その現場まで来た。
パンパンッ! ズシャッ! パンッ! ドンッ!
「「「「………………は?」」」」
そこは、右手のハンドガンで近寄る狼を撃ち抜き、至近距離の狼を左手のナイフで切り裂く少年がいるという、異常極まりない光景が広がっていた。
「いや、ここパーティープレイ前提の場所のはず……。しかも、あの狼レアモンスターじゃ?」
「というか、ハンドガンを使っている人、初めて見ました……」
「いや、なんで左右の狼を同時に捌けるの? 意味分かんないんだけど……」
「……これ、誰かに共有しません……?」
「「「賛成」」」
……そのパーティーは、狩りをすることも無く街に帰ったそうだ。
「あっ、お前! また雄叫びしてんじゃねえ! また増えるだろうが!」
それからもカナデは、延々と狩りを続けたらしい。
それが噂になって、ちょっとした有名人になってしまったことは、カナデ自身、まだ知らない。
運営から通達された、今日のみ発生する経験値が多い狼です。