第二十三話
第一章始まり。
翌日、俺と理慧は教室で話していた。それは、中間テストの結果についてだ。
これに、こいつがFFOできるかがかかっている。
「……再開できるよおおおおおっ!!!」
「おー、おめでとー。点数上がったんだ」
「うん! 大体三十点くらい! すごくない!?」
「あーうん。すごいすごい」
「お前ぇ! もっと褒めてくれていいだろうがぁ!」
「うっわぁ! すっごいよぉ! 三十点も上がるなんてぇ! なんてすごいんだあ!」
「……なんかウザい!」
ついに中間テストの結果が上がり、FFO再開を許可されたそうだ。おめでとうおめでとう。
でも、確かに三十点ならよく上がっているな。一教科辺り六点か。……そうでもないか?
「で? 奏は何点だったの?」
「え、それ聞いてもいいのか? 恥ずかしくならないか?」
「一週回って清々しいでしょ」
「四百九十二点」
「……そう」
数学百点。それ以外は二点ずつ落とし、四百九十二点。
担任から微妙な顔をされてしまった。毎度五百に行かないから。ゴメンね。
「てことは、また学年一位なんだ? もー、その脳みそ半分くれない?」
「やらない。というか、お前と俺の授業違うだろ」
「それはそうだけど」
単位制の高校で、二人とも取っている授業が違う。そのため、脳みそを半分あげても役に立たない。って、何を言っているんだ俺は。
「で、今日から二人でプレイできるのか? もう解禁されたんだったら」
「うん! できるけど……まだレベル差があるでしょ? 奏って今どれくらいなの?」
「33レべ。まあ、装備のおかげでステータスは高いけど」
「へえ~! 私より五低いだけじゃん! よく上げたねぇ。ゲームにハマりすぎじゃない?」
「まあ、俺は勉強してなくても学年一位だから」
「……殺すよ?」
「ごめんって」
そんな軽口をたたき合いながらも、今日の放課後ログインすることを約束する。
「そういえば、名前は?」と聞くと、「『リエ』だよ。本名のまんま!」と答えられたので、フレンド登録をすることにする。ちなみに、本人曰く、「めちゃくちゃ真っ当なプレイヤー」らしい。こいつの言うことだから信用できねえけど。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「さて……メンテナンスはどんなんだったんだ?」
ログインしてすぐ、運営からのメールを読む。すると、それには全体的な武器のSTR上昇、貫通攻撃の実装、それに伴ったモンスターの強化、第一回イベント二十一位以下のプレイヤーへの限定スキル贈呈などが書かれていた。あとは、一部スキルの弱体化。俺だと、【業渦災炎】のクールタイムが一時間になったみたいな感じだ。
「あ、このスキルってそれで貰えたやつなんだね。いつの間にかクエストをクリアしてたのかと思った」
「俺は貰えてないからな。パワーバランスの調整にちょうどいいだろ」
「だね~」
………………ん?
「コールネェッ!!??」
「コルネね。コールネじゃないよ」
「いや、そうじゃなくて。いつの間に?」
「君がログインした時に真後ろにいたから」
「そうですか……」
めちゃくちゃビビった。心臓止まったじゃねえか。というか、こいつは二十位以内に入ってないからスキルを貰えたのか。羨まし。
「なんか~、一部のプレイヤーがDEFを上げまくってるせいでダメージが通らないケースがあったらしくて。それで、全体的な武器のSTR上昇と、貫通攻撃の実装がされたらしいよ」
「なるほど。まあ、ステータス上俺のDEF0だから、死にやすくなっただけだな。うん」
「……まあ、防御スキルも増えたらしいし、取ってみたらいいんじゃない? なんなら、今から行く?」
「あー、先約があってな。リア友と遊ぼうって約束してんだ。ごめんな」
「うーん。分かった! またいつかね」
「おー。じゃあな」
そのままコルネと分かれ、俺は『世界の風』に行く。待ち合わせ場所だし。
カランカラン! と店に入って、ユカと少し話す。中間テストについて、メンテナンスについてだ。
「今回の運営の処置どう思うよ? これってさ、一部の奴のためだけに実装されただろ? 俺とか一撃で殺されそうなんだけど」
「うん。でも、ユニーク装備は対象外らしいよ。だから、カナデの『黒龍』とか、アイクの『聖王ノ剣』は対象外みたい」
「……うん? 聖王の剣?」
「え、知らないの? 現時点最強プレイヤーアイク。彼が使う二丁のサブマシンガンは『聖王ノ剣』って言うの」
「うっわ……俺討伐されそう」
「されてしまえ」
「なんて酷い」
だが、ユニーク装備は対象外か……せっかくSTRを34までしてアサルトクラスにまで上げたのに、普通のハンドガンと同じじゃねえかよ。もう。
「そういえば、今日はリエとやるんだっけ? どこに行くつもりなの?」
「いや? 特に決めてないけど。おすすめとかはあるか?」
「いやこのゲームってデートするゲームじゃないからそういうの知らないんだけど……」
「デートするつもりは毛頭ねえよ」
だが、本当にすることが無い。というか、あいつがどれくらいプレイしてたのかも知らないし。
そんなことを考えていると、入口からカランカラン! という音が響き、リエが入ってきた。金髪のポニテだ。ポニテは変わらねえんだな。
「おっまたせー! ついにFFOできるぞー!」
「おめでとー。それで? 今日はどうするつもりなんだ? 俺は当然何も決めてないぞ」
「んー、そうだね……ここ行かない? ここ」
指さされた場所を見ると、『夕闇の湖』とある。つまり、メンテの時に俺たちが潜っていたダンジョンだ。いや、本来は違うのか。
「いいよ。あ、ところで、お前の装備は? 戦い方を知りたくて」
「ふっふっふ~! 聞いて驚くことなかれ!」
すると、初期装備からフリフリの衣装……装備へと変更した。白に金色の装飾の混じった装備はいかにも聖女のよう。持っている者は杖。これは……
「私のクラスは魔術師。つまり、基本的に魔法を使って戦うの! 魔法少女だよ!? 可愛くない!?」
「あーうん。可愛い可愛い。というか、飛びまわるな。ミニスカが不安すぎる」
「おやー? 恥ずかしがってるのぉ~? お? おお?」
「……ログアウトしていい?」
「いやゴメンって~!」
というわけで夕闇の湖へ向かうことに。ここで俺は走ろうと思ったのだが、リエが止めてきた。
「いや、私ってクラスが魔術師で、魔法しか使えないからさ。基本的にMPとTEC、それとSTRが高いだけで、AGIとDEFは高くないんだよ~。どうにかして~」
「え~。俺AGI合計91あるんだけど。合わせてくれない?」
「無理に決まってるっしょ。おぶってよー。それとも、お姫様抱っこにするかい!?」
「……………………しゃーねえ。おんぶな」
「いやったー!!」
ちょうど試したいことがあったんだ、と装備を代え、アサシンになる。いや、クラス暗殺者だからあながち間違っては無いんだけど。
このアサシンシリーズの特異な点は、全ての強化がAGIにある点。
魔王シリーズは、AGI、DEF、STRの三つを強化する。しかし、まさかのアサシンシリーズは頭、体、右手、左手、靴。どれもAGI+15なので、俺のAGIは合計126だ。
「うわー、なんかそれっぽいね。装備が。黒いし。黒いし。あと黒いし」
「黒いだけかよ。まあ、これの持つスキル結構やべえんだがな」
【瞬影】。これがこの装備一式の持つ唯一のスキルだ。あ、靴装備の『夕闇ノ影』に【瞬影】はついてるぞ。
使うときになったらその時に解説しよう。
「さ、行くか」
「うん! ……あ、ちょ、待っ―――」
背中にリエの重みを感じるや否や、俺は駆け出した。
今ならばアイクの速さに追いつけるかもな。




