エピローグ
イベント中、数多のプレイヤーとの戦闘を終えたカナデは、少し休もうと森に隠れることにした。家は意外と見つかるので、たとえ見つかっても隠れやすい森に隠れることにしたのだ。
「それに、誰か近付いてきたら分かりやすいしな。音で」
その時、バキバキッ! という枝を踏みつぶしているような音がした。うわ、マジで誰かいるじゃん。
『黒龍』を構え、すぐそこにいるであろう敵を探す。するとそこには、二人のプレイヤーがいた。男女だぁ……。
「……うん? 誰かいないか?」
「え? 私は分からなかったけど……まあ、あなたがそういうのなら居るんでしょうね。【火炎弾】」
「え゛」
男性から誰かいるかも、と聞いた女性は、何の躊躇いもなくこの森に火をつけた。え、マジで言ってる?
普通に燃やされかねないので飛び退くが、普通に見つかって男に撃たれてしまう。ショットガンだが、ちょっとエイム悪くてよかった。二発しか当たってない。あまり看過できないスピードでHPバーが減っていくが、【不絶の混沌】により回復していく。俺、このスキルに依存してるわ。
「チッ、おい綾! そっちから囲い込んで飽和攻撃しろ! 俺が食い止める!」
「分かったわ!」
「全部俺に筒抜けなんだけど」
と言い、回り込もうとする綾とかいう人に牽制をする俺。普通に障壁張られて防がれた。
だが、こんだけ安直かつ単純な作戦。スペックに差があれば有効な作戦だが、果たしてどうだか……。
パァァァンッ! ドッパァッ!
「お前……DEF高いな。ダメージ量が想定より小さいわ」
「タンカーだからな! DEFとHPに大量に振ってるんだぜ! 耐久力一点突出型だァ!」
「面倒だな……」
すると、背後から炎の弾が飛んでくる。さっきの女か。綾ァ……。
「っぶな! ってか、燃え広がってんじゃねえか! 森林火災はダメ絶対!」
「ゲームの中だからこそできることだよなァ! はっはっはっはっは!」
「なんっだこいつら!」
森を燃やすことにプライドを持ってやがる! なんて面倒な奴らだ!
先に綾とかいう奴を処してしまおうと思い、男性を見向きもせず綾さんに向かって走り出した。
「お、おい! 待てよ!」
「ヤダ」
「えっ!? ちょ、こっちに来ないでよ! 【火炎弾】!」
「しっかり狙わなきゃ当たんないのは銃も魔法も変わんねえな……」
当たり判定を見極めてギリギリで回避していく。ちょっと触れた時はガチで焦った。ちょっと燃えた。
回り込んで蹴りを受けから叩き込んで地に沈めると、『黒龍』を連射して確実に殺す。悲鳴が聞こえたが俺は何も気にしない。
「さ、男の方を……いっだぁっ!?」
さっきの男性の方に向かって走り出そうとすると、足元にあった木の根に引っ掛かって転んでしまう。痛かった。地面硬いな……うん?
「なんか埋まってね……?」
とりあえずマップ上に印をつけ、男のところへ向かうことにした。それに気が付いた男は慌ててショットガンを撃つが、それが仇となった。一度目は回避し、十五メートルほどになった時点で喰らった。
ドッパァッ!
「【空蝉】ッ!」
ダメージを負う瞬間に【空蝉】を発動し、十メートル先へ転移する。突如目の前に現れた俺に動揺を隠せない男だが、DEFの高さとHPの多さに高を括ったか冷静にショットガンを構え直す。だが、それは意味が無い。
「【極刑】」
「なぁっ……ガハッ」
男が光となって消える。即死ならばダメージエフェクトは出てこない。
「……終わったか」
冷静に、ふー、と息を吐きながらさっき印をつけた場所に戻る。あ、ここら辺だ。
まずは手で掘ってみようとする。しかし、手袋がその地面を掴むことは出来ず、ガリガリと引っかくこともできない。
「……あれ? こっちは出来るじゃん」
背後の地面は出来るのか? とガリガリしてみると、土が抉れ、集めることができた。やっぱりここだけ異常だな。
「『終ノ刃』くらい使ってみるかな」
地面にナイフを勢いよく突き立てる。ガァンッ! というおおよそ土が鳴らしてはならない音が出た。マジで何ここ。
「ジャガイモ戦法するかぁ~」
さっき掘れた場所を徹底的に掘り、硬い場所に何があるかを見つけ出すのだ。
手で全力で掘ること十五分。森の近くの家にあったシャベルを使うこと十五分。ようやく三メートルほど掘れた。
「はー、はー……マジで何なんだここ……削れないんだが!?」
自分で穴に入ってみて、さっきの硬い場所をぶん殴る。しかし、ゴンッ! と硬い音がするだけで終わってしまった。マジで何だここ!?
よく見てみると、土が硬いのではなく、その手前の透明なバリアが硬い、ということが分かった。
「これも通用しねえのかな……【極刑】」
ガンッ! と刃を突き立てる。すると、その硬かった透明なバリアに、ピシッと傷が入った。え? マジで?
先に行っておくと、このバリアは破壊不可のブロックではなく、ダメージ不可の生物が大量に固まっている状態である。簡単に言えば、無敵状態の微生物が幾億幾兆幾京と連なっている状態だ。そのため、生物に対して特攻ともいえる『完全即死』はこのバリアに効くのだった。
運営としても破壊不可のブロックを作るのは色々な理由から面倒なので、こうするしかなかったのだ。
「傷が開いたんなら……行けるよなァ?」
その傷にナイフをねじ込み、グリグリと回転させる。すると、ガリッ、ガリッと透明なバリアが削れていくのが見えた。っし、内側からは脆いみたいだ。
そこからまた十分ほど掘り続け、ようやく俺が入れるくらいの穴が作れた。はー、疲れた。
中で穴を掘ってみると、謎の宝箱があった。強引に取り出してみると、少々バチッ! バヂバヂィッ! という音を鳴らしている。あ、なんかヤバい気がする。
しかしそれを気にせず開いてみると、中からは一枚の紙きれが出てきた。よく見てみるとこのマップの地図のようだ。北部にバツ印が付いているので、宝の地図の類いだろうと推測する。ほーん。
別に今から行ってもいいが、流石に時間が掛かりすぎる。そして、ゲーム慣れしていない俺が迂闊に行動しすぎると疲れが大きいからな。止めておこう。
「第二回イベントの時も同じフィールドなんだったら……そん時に行けばいいか」
宝の地図をインベントリに入れながら、背後にハンドガンを向け、十発ほど連射した。すると、そこに隠れていた男を撃ち抜くことができた。
この後、自分の位置がマップに示されるということを、まだカナデは知らない。
ここで運営が面倒な理由は第二章で明らかになるよ。




