第二十二話
ガチャガチャガチャンッ!!
「あるぇ? マトリョーシカの中身からとんでもない量の兵器が出て来たぞォ?」
「……【小規模障壁】」
「あ、待ってそういうスキル俺も欲しい」
その瞬間、ドドドドドドッ!! ギュイイインッ!! ズゴゴゴゴゴッ!! という炸裂音を鳴らしながら、数多の弾丸が撃ち出された。
「普通にやばぁいっ! 死ぬううっ!」
「……頑張って」
「うわー、頑張ってる。あ、リリィ。スキルの効果を上げるペンダント。これをつけてれば障壁も壊れなくなるよ」
「……ん、ありがとう」
「ちょっ、ユカァ! 俺にも何かアイテムプリーズッ!」
「え、カナデって防御系スキルって持ってたっけ?」
「持ってないけどっ!」
銃口を一瞬たりともこっちに向かせない! と言わんばかりの速度で駆ける俺。だってやばいもん。
数発、身に当たる寸前の弾丸を、黒龍にて相殺する。ヤバイ。普通に神業ができるようになってしまった。しかし、これもどうせ二、三発しかできない。
「じゃあ、これあげるよ。DEF上昇とHP上昇のポーション。あ、AGI上昇のポーションも。完成度Ⅸの神作だよ」
「やったね。ありがと!」
爆速でユカのもとまで走り、ポーションを受け取る。そして、一瞬でがぶ飲みした。一本目のDEF上昇から気が付いたが、このポーション……なんて上昇率なんだ!? ステータス表記で言うならば、一本当たり大体20ほど増えているだろうか。
「っ、これは……!? やばすぎねえ!?」
「……完成度Ⅸのポーションを三本ずつ? いや、普通はそんなもの作れないって……」
「フフフ。私の才能を仰ぎ見よ」
ガアンッ!! ドドドドドドッッ!! ガチャッ! ドォンッ!!
弾幕が俺めがけて放たれる。右腕で軽く受け止め、ツッコむ。ところどころノックバックなどが入っており時々後退させられるが、それでも一歩一歩進む。一切の回避はしない。
想定外の上昇率により、特に逃げ回らなくてもよくなってしまった。
高いDEFによりそもそもダメージが通りにくく、通ったダメージも【不絶の混沌】により無限に再生する。増えた大量のHPがその数字を減らさない。
「……弾幕は正面から受け止めるものじゃない」
「まあな。じゃ、今の無敵状態を活かして壊すかな!」
超接近して、頑張って俺を狙い撃つキューブを無視しながら、オラオラオラオラァッ!! と殴りつける。現時点で俺のSTRは50×2で100だ。この距離で死なないのならば殴りつける方がダメージが多い。
「そういえば、これもあるな」
腰に装備していた【終ノ刃】を左手に装備し、拳とナイフで攻撃しまくる。右腕はSTR100、左手のナイフはSTR400の圧倒的暴力。
「……これ、私達は耐えてるだけでいい?」
「いいでしょ。このゲームで殴り合いは想定されてないんだし、それをしてるアイツが悪い」
「……そうだね」
HPバーが半分に来て形態変化が挟まる―――という瞬間にさらに四分の一まで削り切ったので形態変化がキャンセル。次の形態変化が―――というときに完全に削り切って、何の抵抗も出来ずに壊れた。
「銃器を使う最前線の世界とは思えないんだけど」
「……魔王か……」
「ヴィクトリーーーーーーッ!!!」
光が消えて地に落ちるキューブ。そして、それは光と共に消えていった。
「っはー。これで、ダンジョン攻略だろう?」
「……うん。ありがとう」
「大変だった。だって私がしたことって、ポーション渡すか装備直すか装備破壊されるかだったから」
「それはそれでお疲れ様」
はー疲れたー、と言っていると、奥に箱が出てきた。それも三つ。ちゃんとプレイヤー分あるんだな。
「開けるよ?」
「……うん」
「オープンッ!」
そこにあったのはやはりユニークシリーズ。しかし、三人とも同じシリーズではなかった。
「……私のは、『シャドウシリーズ』
「私は『エンジニアシリーズ』
「んー、俺は『アサシンシリーズ』だ」
全員違う。そして、二人とも衣装がかっこいい。惚れ惚れしちゃう。
それぞれのスキル欄を見ると、「確かにユニークだわ」と呟いてしまった。アオイとユカがとんでもねえ進化しちまう。
「『シャドウシリーズ』は今のお前の力を違う方面で強化してくれるようだな。そして、即死のついてるアサルトライフル。うん。化物か?」
「……ユカの『エンジニアシリーズ』は生産系のスキル全般の底上げ。それと、新しいスキルの……【神業】と【生贄】。いや、違うベクトルで化け物……。というか、ユカのスナイパー、ユニークだけど使わない気がするんだけど」
「んー、ぶっちゃけカナデって『アサシンシリーズ』いる? 魔王シリーズさえあれば別に……」
「まあ、確かに全部AGI強化はビビったけど、ちょっとした通り魔したいんだったらこれでもいいんじゃないか? 使うことはないと思うが……」
全員が感想を共有し、外に出ることになった。俺以外の二人はその場で装備を代えた。やべえ、めっちゃ似合う。
「……ん、ちょっと髪型変えようかな……」
「あ、紫ロング変えるのか。どんなのに変えるつもり?」
「……シルバーのショート」
「すごい心変わりだね。紫ロングから変わるのって、すごくない?」
「……この装備に合うように……。シルバーのショートに黒いフードって合うと思うから……」
「合うんじゃないか? 俺、そういうやつ結構好きだし、男ウケもいいだろ」
「……別に男がどう思おうと構わない」
「ごめん」
じゃ、そういうことでーと言って魔法陣に入り、ダンジョンから出て行った。当然だが、強制ログアウト付きで。
すると、視界は黒くなり、突如として文字が浮かび上がってきた。『Fantasy Front Online』と。ああ、こんな風になるんだ。ログインしようとしても『メンテナンス中……』と書かれていて、ログインすることはできない。
ヘルメットを取ると、そのままバタンと布団に倒れこんだ。額は少し汗をかいている。
「……はー疲れた。なんで俺こんなにゲーム頑張ってんだろ」
ああいう熱い戦闘を終えた後は急に虚無がやって来る。ただ、その虚無は無駄なことをした、というものではない。熱くなりすぎた心を冷やすための虚無だ。
「風呂入って寝よ」
深夜一時に風呂を入るが、許してくれ。まあ、一人暮らしだからいいんだけど。
さっさとシャワーを浴びてベットにダイブする。最近よくここ使ってるな。
「そろそろアイツもこのゲームを再開できる……のか? まあ、勉強を頑張ってんだったらいけるだろ。俺も何だかんだハマりすぎてたし、そろそろ勉強も頑張んねーとな」
そのまま脳の疲れを癒すようにキュゥと意識を失った。




