第十八話 第一回イベント終了
イベント後・中央広場
「いやー、終わってみたらトッププレイヤーの圧勝だったな。俺なんか接敵した瞬間に秒殺されちまってよ。でも、五キルしたんだぜ!?」
「ああ。おめでとう。丸一日かけてアップデートされるみたいだし、今回のイベントで色々試してたんだろ。実際、一部意味の分からんぶっ壊れスキルもあったし……」
「例えば?」
「炎の竜巻」「光の柱」「罠」「虹の橋。虹の壁」
「だよなー」
皆、うんうん。と頷く。全員モニターを見ていたのだ。目に焼き付けられたあの光景を忘れることはないだろう。そして、その傍を通るトップランカーの陰が。
「……ちょっと嬉しいかも」
結果、カナデの順位は五位だった。途中から変わらなかったようだ。キル数923、デス数0。
上位二十位以内に入っていたため、カードを貰うことができた。これから、イベントの度にこのカードにポイントが貯まっていくのだろうか。
「なるほど。百ポイントで一つのスキルと交換できるのかぁ……」
現時点でポイントは百。ちょうど一つだな。まあ、それは慎重に選ぶとして、今は約束が先だ。
イベント中、リリィさんからの呼び出しを受けた。イベント後に来いと。いや何処にだよ。
「さて、連絡が無ければ何もできないんだが……」
その時、ピロンッ! という音が響いた。フレンドからのメッセージが来た音だ。まあ、このタイミングで来るとしたら……
「あ、やっぱリリィさんか。で、どこに行けばいいんだ?」
示された場所は『世界の風』という店。うん? ってことは、いつも行ってるユカの店に行けばいいのか。あんま緊張はしなくていいな。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「あっ、すみません。お待たせしました!」
「……こっちが連絡するの遅れただけだから。気にしないで」
「あ、それにしても、この店でいいんですか? ここ、店ですよ? 装備品とかの」
「……問題ない。それに、ここの奥の部屋はカフェと同じ機能を持ってる」
「あ、そうでしたね」
そういえばそうだったな、と思い出す。というか、ユカも生産職だから何か料理が作れるのか。故のカフェか。というか、店に入らないのか。立ち話なのか。
「……それで、呼んだ理由だけど」
「ああ、はい。気になってました」
「……一緒にダンジョンに潜ってほしい」
「……はい?」
いや、なぜこの人クラスの人が? と不思議に思っていると、リリィさんは、ぬぅ……みたいな顔をしていた。
「……理由は二つある。一つは、ユニークを手に入れたいから」
「あれ? でも、ユニークって単独攻略かつ初挑戦が必須ですよね? なぜ俺に助力を?」
「……そこのダンジョンだけは違う。初攻略をしさえすればユニークを手に入れられるダンジョン。勿論、人数が増える毎にダンジョンの難易度も上がるけど」
「へえ、そんなとこもあるんですね」
「……うん。二つ目は、そろそろ一人が寂しくなってきたから」
「………………はい?」
この人は何を言っているんだろう、と困惑する。孤高ッ! って感じがかっこいいと思ってると思ったんだけど。というか、トップ四位までは一人でプレイするものだと思ってた。
「……今回のイベント。上位二十位は発表されている。結果を見て」
「あ、はい」
メニューからイベント結果を見る。そこには、四位リリィさんで、五位が俺と載っている。一、二、三も変わらない。
「……一位のアイク。それと、二位のレオナルドは同じパーティーメンバー。現時点で最強のパーティーの二人。三位のリンチミンチも一つのパーティーを組んでいる。しかし、私は組んだことが無い」
「俺と似てますね。俺も一人でしかプレイしたことないんで」
「だから、誘った」
「あ、はい」
つまり、「こいつもぼっちだ! 誘ったらオッケーくれるやろ!」と思ったから誘ったんだ……。ちょっと悲しいな。
にしても、こんだけ強い人なら誰とでも組めそうなもんだけどな。いや、逆か。強すぎて組めないんだ。歩くだけで周囲の敵を撃ち抜くこの人と組める人ってあんまりいないよな。きっと。
「……機動力、攻撃力が高い人が欲しかったから、それも相まって君と組んだ」
「なるほど。分かりました。ところで、店に入らないんですか?」
「……入る。装備を直してもらわなければならない。誰かにダメージを負わされてしまったから、修理をしてもらう」
「……」
なんだこいつ。当てつけやべえよ。たしかに、【王権】で防御スキルを無効化したけど。強引に押し切ったけど。つーか一撃で壊れたりはしねえだろ。メンテナンスじゃねえか。
カランカラン!
「いらっしゃい。ちょっと待ってて。すぐ終わる」
見ると、ユカがカウンターの奥の部屋でラーメンを食べている。そこ作業部屋じゃねえのか。
「……ユカ。修理依頼をしに来た」
「! リリィ?」
「……うん。今日はフレンドと一緒に来た」
「……ん? あれ? お前らって知り合いだったの? なんだ、じゃあ全員知り合いじゃん」
「カナデじゃん。イベントで一気に有名人になったね。おめでとう」
「あ、そりゃどうも……って、そうじゃなくて」
聞きたいのはこいつらの関係だ。いや、常連だったらそれだけなんだけど。なんとなく距離感的に違う感じがして。
「私が素材採集に行ったとき、ゴリラみたいなモンスターに襲われちゃって。そこをリリィに助けてもらってから仲良くなった」
「……ん、ユカの造る装備はいつも質が高いから。お世話になってる」
「ふふふ。それはどうも」
「……で、逆にユカと君とはどういう関係?」
「「幼馴染(です)」」
「……あ、そうなんだ」
たったの一言で関係が分かる素晴らしい関係性。なんて簡単なんだ。
そして、奥のスペースを使わせてもらうことになった。ユカも交えて三人で。なんで?
「……で、そのダンジョンって言うのが、期間限定。そして、あるかも怪しい不確かなダンジョン」
「えっ? そんな場所あるんですか? 普通に怪しい」
「こら、リリィを疑うんじゃない」「すんません」
「……私だけが知ってる隠しダンジョン。ただ、今回の期間は丸一日あるから多分入れる」
「ん? 丸一日?」「どこかで聞いた」
「……そう、メンテナンスとかアップデート中にしか発現しないダンジョン。だから、通常ありえない方法で入らないといけない」
「想定の斜め上のダンジョン来た」「そもそも、入れるの?」
「……特定の場所に行って特定のアイテムを使うと、アップデート中にもFFOにログインできる。そのアイテムはもう持ってる。三つ」
「へえ、三つ……え、三つ?」「この流れは……もしや」
「……ユカにも来てもらう」
「「なんで!?」」
だって、生産職じゃん。戦闘能力皆無じゃん。なのに、どうやってダンジョンで生き延びろと?
「……敵に、相手の装備を問答無用で破壊する奴がいる。だから、それの対抗策としてユカが必要」
「ん? あ、じゃあ俺がその攻撃受けますよ。この装備【破壊進化】ついてるんで」
「……???」
「えっと、カナデのユニーク装備『魔王シリーズ』は全部に破壊進化が付いてるの。だから、壊れてもより強くなって返って来るだけ」
「…………そう」
なお、黒龍は書かれていないが破壊不可だ。【銃撃進化】内に破壊不可も備わっているのだ……と思う。そのため、装備破壊は逆に待ってました! というところだ。
「女子の私たちが装備破壊をされるわけにはいかないしね」
「……ん」
「え? 破壊されたら初期装備になるんじゃねえの?」
「……違う」「殺すよ?」
「いやゴメンて」
そういうところは現実らしく、服が破壊されたら肉体が露わになる。これは常識のようだ。ただ、救済措置として破壊された瞬間に初期装備に変更するスキルもあるようだ。これはスキルショップで買える。買ったスキルを装備品にセットすると、その装備が壊れた瞬間に初期装備にしてくれるのだとか。
「あ、そんなとこまで……無駄に凝ってるんだな、このゲーム」
「けど、私たちはどっちもそのスキルを持ってない。というか、私は戦う機会が無いから、いいかなと思って」
「……そのために装備のスキル枠を埋めるのが勿体なくて」
「なるほどぉ……。あ、ユニークが欲しい理由ってそれもあります?」
「…………ある」
「じゃあ取りに行くしかないな」
そんなクソみたいな要素があるとは思わなかった。そこはゲームらしくしとけよ。なんだよ。装備壊れたらそのまま裸になりますって。ふざけてんのか。
「じゃあ、今日のメンテナンスが始まる頃に集合すればいいんですか?」
「……そう。夜の十一時三十分ごろに、『夕闇の湖』に来て。そこでアイテムを渡すから」
「了解です。あ、あと、俺のことはカナデって呼んでもらって大丈夫ですよ」
「……じゃあ、私もリリィでいい。それと、タメ口もしていい」
「あ、じゃあそうするわ。俺も慣れない敬語は使いたくないしな」
「……切り替えが早い……」
こうして、第一回イベントという一大行事を乗り切った後に一つのダンジョンに潜ることになってしまったのだった。
リリィとの約束のせいで終わりがまだなんじゃ。すまんのう。




