第十五話
寝坊しちゃった♡
あの少女とフレンド登録してから三十分。俺は周囲を確認しながら、ゆっくりと壁から離れていた。
ドドドドドドッ!! ガガッ!!
「チッ! 少しは休ませろ! これバトルロワイヤルだぞこの野郎!」
百人を超えるプレイヤーから撃たれ続けていた。勿論、魔法も飛んでくる。
あれから走り回りながら見つけ次第撃ち抜いていたのだが、それにより目立ち、さらにはたくさんの人のヘイトを買ってしまった。そのため、逃げ回りながらこまめに人を減らしている。
「【災厄伝播】【天災への反抗】【ピンポイントアタック】!」
対集団に長けたスキルを発動し、俺と黒龍のSTRも上昇。次現れたやつ絶対殺すぜ、みたいな状態になった。そして、曲がり角を曲がった瞬間、サブマ使いが乱射しながら登場してきた。流石に避けられず、いくつかに被弾する。あぶねえ、ユカのHP増加ポーション三本飲んどいてよかった。見えた瞬間に撃ち抜いたので、致命傷で済んだ。まだ死んでない。
「いや、ホントにきついって……」
そう言いながら、家の窓からこちらを覗いていた男を即撃ち抜く。距離もあり、【ピンポイントショット】を発動してなかったこともあって、一撃で死ぬことはなかった。そして、その間にも災厄は広がり続ける。
「おい、なんだこの魔法陣……! どんどん広がってるぞ!」
「俺達には何も無いようだが……あいつのバフか? 誰か魔法使い! 解除できないか!」
「もうやってるけど、無理だわ! 私の魔法の権限レベルが低すぎて、対抗できない!」
「はあ!? なんなんだこのスキルは!?」
「……俺にしか効果ないから放っておいてよ……」
まあ確かにSTRが二倍になる魔法陣なんかは消したいよな。うん。
そして、聞こえる声から分かる。今、結構な人数が近くに集まっている。
『暗殺者専用スキル:【任務遂行】を獲得しました』
「何だよそれ……。今入手できるのかよ!」
気配を消しながら説明を読む。まあつまり、HP・MP・STR・DEF・AGI・TECのいずれかのステータスを一時的に10%上昇させられるというものだ。選択式で。
「なるほどなるほど……。ちょうどいい。じゃあ、これだ」
今度はユカが作ったMP増加ポーションを五本、STR増加ポーション三本をがぶ飲みする。そして、【憤怒】発動でSTRとDEFを20増やし、紅いオーラを纏った俺は【任務遂行】にてMPを10%増加させた。
ここまですれば、俺が何するか分かるだろ?
「【業渦災炎】」
途端に俺を中心に炎が渦巻き、天に昇る。前回火山で使ったのとは違い、MPとSTRに大量のバフをかけてある。つまり……
「うわああああああああああああああっ!!!!!」
「キャアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」
「なんだこれえええええええっっっ!!!」
「うおおおおおおお!? あああああああああっっっ!!!」
阿鼻叫喚の地獄絵図。超広範囲かつ高火力の炎の竜巻。そして、それに触れると絶対に『火傷』を付与される。なんて災厄だ。さながら火災旋風だ。
「あっ、すごい。めっちゃ増えてる」
メニューを開き、キル数を確認すると、現在進行形で数字が増えていっていた。とてつもないスピードで。やべえ。マジの魔王だ。楽しい。
「基本的に周囲の奴らはいなくなったかな……。ちょっとこの場を離れよう」
さすがに今のは連発出来ない。ポーションの残量、スキルのクールタイムからして、少し時間が必要だ。三十分。
「またコツコツ倒すかぁ……」
ピロンッ! と、連絡が来る。誰だ。
「っと、コルネか。なになに……」
『さっき君と戦った場所に帰ってきたんだけど、今君何処にいるの? ちょっと一緒に行動したくて。ほら、二人なら有利に戦えるだろうし』
『悪いが、結構そこから離れてるのと、百人単位でヘイト買ってるから来ない方がいいぞ。そもそもパーティー組んでないから、フレンドリーファイアあるだろうし』
『んー、分かった。お互い頑張ろうね!』
『おう。頑張れよ』
「……地味に緊張した。さて、もうちょっと休憩したら動くとするかね」
今度はコルネの時のように撃ち抜かれないように家の奥の方に体を潜め、床に寝転がった。
「少しだけ仮眠をとろう……」
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
ドドドドドドッッ!! バリバリバリィッ!!
「ん!? なんだっ!?」
突如として鳴り響く銃声に驚きながら飛び起きた。勿論、右手に黒龍を構えている。こちらが撃たれたわけではない。すると、どこかで誰かが戦っているということだな。
「外か……。少し見る程度で顔を出すか」
ひょいっと顔を出し、周囲の状況をうかがう。すると、目の前で簡易的な戦争が起きていた。否、蹂躙か。
片や一般プレイヤーの集団三十人ほど、片や白銀の装備を纏うプレイヤー一人だ。
リンチか? リンチか? お? と一人で見守っていると、その白銀のプレイヤーがこちらを向いた。男子の敵みたいな顔してる。すげえ。ぶん殴りてえ。
「君も敵かい?」
「いや、別に見てるだけですね。どうぞお好きに戦ってください」
「そうか。ならば、巻き込まれないようにするといい」
「はーい」
え? この人、俺が後ろから撃つ可能性とかを考えないのか? それとも、俺が撃ってもなお対応できる自信があるのか?
見守っていると、即座に戦闘が終わった。
「……は?」
大群が撃ち放つ弾丸を一人で生み出した障壁にて防ぐと、白い光を放つ。それは、天まで昇ると、白銀の男に強大なバフがかかった。ここまでは分かった。しかし、次の瞬間、男が二丁のサブマシンガンを構えると、目の前の敵が全て薙ぎ払われたのだ。大量のダメージエフェクトを散らしながら、一瞬で消えた。
「うわーお。超速、超火力とかさぁ……やばすぎねぇ?」
「ふぅ……。君もやるかい?」
「えー、ぶっちゃけやめときたいですねー」
「まあ、こちらが襲うんだけどもね」
「なんだよてめえ」
思わず悪態をついてしまう。おっと。いけないいけない。
家のベランダから飛び降り、男と相対する。ちょっと、全力で挑むしかないかな。
「やろうか」
「めっちゃ嫌だわ」
男がサブマシンガンを構える。俺も黒龍を構える。互いに引き金を引いた瞬間が戦闘開始の合図だった。
あ、こいつが勇者です。




